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アニメ&ゲーム系専門学校が公務員試験対策を導入 英会話やスポーツも「プロゲーマーになるため」

6/24(土) 10:00配信

AbemaTIMES

 2018年を境に日本における18歳の人口が減少に転じる。高卒者を対象とした教育ビジネスの現場では、さまざまな対策が行われ始めているという。

 大学受験予備校や一部の私立大学はこの“2018年問題”に対し、校舎の閉鎖や学科の削減といった経営のスリム化を図っているが、一方アニメ・ゲーム系専門学校はあえて攻勢に出ようとしている。

 業界の労働環境がSNSなどで赤裸々にされることもあるためか、これまで人気を博していたゲーム制作系コースやアニメーターコースの入学者は激減。唯一入学者が増加傾向にある声優コースをモデルに、声優と同様アニメファンやゲームファンが憧れるプロゲーマーやゲーム実況者、YouTuberを育成するコースを開講することで生き残ろうとしているようだ。これらアニメ・ゲーム系専門学校の新コースの実態について、講師を担当している舞台俳優が匿名で答えてくれた。

「私が講師をしている学校では、今のところプロゲーマーコースやYouTuberコースはありませんが、学校スタッフの間では常にこれらのコースを設置することが検討されています。

 私自身もスタッフからコース設置に関してアドバイスを求められたことをきっかけに、そういったコースの設置に向けて動き始めている学校で講師をしている友人にいろいろと話をきいてみました。生徒からの需要はかなりあるようです」

――ネット上ではプロゲーマーやYouTuberのコースに懐疑的な声も多いようだが、実際にそこまで需要があるのでしょうか?

 「プロゲーマーやYouTuberを生業にするのは難しいので、批判の声が上がるのはわかります。しかし、それは声優も同じです。声優に憧れる人が多いのと同様にプロゲーマーやYouTuberに憧れる人も多いので、ネットで批判的な声を目にしても『自分は絶対にプロゲーマー(YouTuber)になるんだ』という気持ちで専門学校に入学してくると思います。

 小学生のなりたい職業にYouTuberがランクインする時代ですからね。今後、彼らが高校を卒業する頃には、声優コースよりもゲーム実況コースやYouTuberコースが人気を集めている可能性は十分にあると思いますよ」

――そういったコースに入学した人たちは、どんなことを学ぶことになるのでしょうか?

 「どこの学校もそういったコースを“看板コース”にするために、かなり真剣にカリキュラムを作っているようです。例えばプロゲーマーを育成するコースなら、あらゆるジャンルのプロゲーマーを特別講師に迎え、まずは学生の適正を判断。学生自身が様々なゲームに触れることで自身の適正を自覚し、自分にあったジャンルで腕を磨いていくといった感じですね。

 ゲームの腕を上げるために必要な反射神経や手先の器用さを向上させるためにスポーツを取り入れようとしていたり、海外でプロゲーマーやYouTuberとして活躍するために英会話を導入したりしている学校もあるようです」

――スポーツや英会話まで取り入れていることは驚きだが、プロゲーマーという仕事で生活することは実際に可能なのだろうか?

 「プロゲーマーコースは、すでに設置している学校もありますが、それもここ数年のことですし、多くの学校はこれから設置しようとしている段階。卒業生で有名なプロゲーマーとして活躍できる人が現れるかどうかは、正直言ってまだわかりません。  
 私もかつてゲームセンターの対戦格闘ゲームをよく遊んでいましたが、それなりに練習しても、店舗の大会で初戦を突破することもできませんでした(笑)。最近、プロゲーマーの試合をあらためて観てみたのですが、トップはオリンピックに出場するようなスポーツ選手と変わらず、毎日、何時間もゲームを練習した上で、さらに才能が開花した人のみがたどり着ける領域だと思います。講師をしている私がこんなことを言ってしまうと問題があるかもしれませんが、声優もプロゲーマーも『才能』というものは確実に存在しますからね」

――やはり、プロゲーマーとして活躍することは簡単ではなさそうだが、学校に通ってもプロゲーマーになれなかった学生は、どうなってしまうのでしょうか?

 「今は専門学校もネットの声をとても気にしています。在校生や卒業生が学校に不満を持ち、SNSなどで学校の悪口を書くことを恐れているんです。SNSの声はダイレクトに入学営業に響きますからね。なので、例えプロゲーマーになれなくても大きな不満を持たれないように、あらゆる可能性を提示できるようになっています。

 例えば、私のような声優コースの講師が発声やフリートークの講義を担当し、ゲームの腕のみに左右されないゲーム実況者を育成したり、ゲーム制作のタスクやビジネスマナーを教えて、ゲーム業界に広報として就職するためのサポートをしたりします。前述しましたように英会話を教える学校もあるようなので、英語力を生かしてゲーム会社の海外事業部に就職を目指すこともできるでしょう」

――例えプロゲーマーになれなくても、コースで学んだ内容を元に、何かしらの形でゲーム業界に就職できる可能性は残るんですね。では、ゲーム実況者やYouTuberコースの実態はどのようになっているのでしょう?

 「基本的にはプロゲーマーのコースと同じです。ゲーム実況者やYouTuberのコースも設置が始まったばかりで今後、設置を検討している学校が複数あるといった状況ですね。有名な実況者やYouTuberを特別講師に招いてノウハウを語ってもらったり、実際に彼らの指導を受けながら動画を作ったり……。

 プロゲーマーコースと同様に、学校もレギュラー講師で有名人を呼ぶのは予算的に厳しいので特別授業扱いにはなりますが、すでに有名な実況者やYouTuberにそれなりの予算を提示して講義を依頼しているとも言っています。

 このあたりは声優コースと似ていますね。声優コースでは、新人時代にそれなりの成功を収め、ギャラの高騰とともに仕事が減少した中堅声優がレギュラー講師を担当することが多いです。ゲーム実況者やYouTuberのコースもレギュラーの講師は、その界隈で誰もが知っている有名人ではないにしろ、そこそこの実績を持っている人が担当するはず」

――卒業後の進路もさまざまな可能性が提示されるんですね。

 「どこの学校もゲーム実況者やYouTuberになるために必須のパソコンやビデオカメラ、映像編集に必要なスキルを修得させるためのカリキュラムを組んでいます。

 映像配信や映像制作のスキルがあれば、自社で動画番組を作ることが多くなってきたゲーム会社に映像の専門家として入社できる可能性もありますし、動画の配信や制作を行う映像制作会社への就職も見えてきます」

――映像制作業界への就職は、確かにもうひとつの道なのかもしれませんね。でも、映像制作業界は労働環境の厳しさでも有名ですよね……?

 「そうですね……。特にテレビ関係の映像制作会社は未だに体育会系のノリが強いので、そういったノリとはほど遠いゲーム実況者やYouTuberを目指している人とは相性が悪いかもしれません。先のことは分かりませんが、ゲーム実況者やYouTuberのコースから映像制作会社に行っても長続きしないのかもしれません。

 しかし、コースの売りとして映像業界への『就職』を打ち出すことで、お金を工面する親御さんを安心させることが出来ます。入学を迷っている人に『いきなり有名になってそれだけで稼げなくても、学校で学んだスキルを使い、就職することで、安定した収入を得ながら実況者やYouTuberを続けられる』といったような営業トークも可能になりますからね」

 ビジネス戦略的な話になると若干顔が曇ったものの、こう話を続ける。

 「私が教えている声優コースもそうですが、プロゲーマーにしろゲーム実況者にしろYouTuberにしろ、多くの人が憧れる職業に就くことは難しいんです。それでも、そういった職業に就きたいと思うなら独学では決して出会うことが出来ない第一線で活躍するプロから話が聴けたり、個人では揃えることができない機材が揃っている専門学校はチャンスを広げる場として最適だと思います。

 こういったコースの需要が増して行く中、専門学校を卒業しても目指していた職業に就くことができない人も増え続けていくと思いますが、その分、学校もさまざまな可能性を提示して卒業後の進路をサポートしてくれようとしています。

 友人から聞いた話ですと、最近は専門学校の声優コースのカリキュラムに公務員試験を受けるための講義が導入されたり、声優コースで学べる声のスキルを生かして結婚式の司会者やテレホンオペレーターになるための講義を導入しようとしたりしている学校もあるそうです。

 プロゲーマーやYouTuberのコースも、例え目指す仕事に就けなくても、学んだスキルを生かして仕事をすることはできるはずです。そういったコースに入学するかどうか迷っている方は、いろいろな学校を見比べつつ、他の道を目指せるかどうかも検討材料にしながら自分に合った学校を選んでいただければと思います」

 2018年問題を攻めの姿勢で乗り切ろうとするアニメやゲーム系の専門学校。プロゲーマーやゲーム実況者、YouTuberといった新たなコースは、はたして、アニメ・ゲーム系専門学校の新たな看板になり得るのだろうか。

最終更新:6/24(土) 10:00
AbemaTIMES