ここから本文です

「NHKのど自慢」主役20組はどのように選ばれるか…予選会の裏側に密着

6/25(日) 11:03配信

スポーツ報知

 話題のテレビ番組の裏側を探る連載「潜入Ho!道」。今回は「NHKのど自慢」(日曜・後0時15分)。戦後間もない1946年にラジオ番組「のど自慢素人音楽会」でスタートして72年目、今も最長寿のテレビ音楽番組として愛されている。放送前日の土曜日に行われる予選会では、250組のエントリーから番組の主役となる20組が選ばれる。そこで、今月10日に千葉県流山市のキッコーマンアリーナで開催された予選会に密着、20組選出の舞台裏に迫った。(江畑 康二郎)

 日曜の昼下がりに何気なく見て楽しんでいた「のど自慢」出場者は、最大60倍超の壁を突破した20組だった。

 予選会は、毎回250組がエントリー。今回の流山市大会のハガキによる応募者は847人。予選会に選出される倍率は平均4~5倍という。本選と同じ会場の舞台セットで、生バンドの演奏をバックに行われるが、番組のシンボルともいえる鐘は鳴らない。

 正午の開始前、会場の1100ほどの座席はほぼ埋まり、熱気が充満。出場者は持ち時間わずか40~50秒の中で、ありったけのパフォーマンスを繰り広げた。金ぴかのバンダナを巻き、少年隊の「仮面舞踏会」で踊る中年男性3人組。アロハシャツ姿で、石井優子とチャゲの「ふたりの愛ランド」をノリノリで歌うカップル。制服姿の中学生から今大会最年長の100歳の女性まで、自慢の美声を高らかに響かせた。

 想像以上にハイレベルな熱戦は午後4時頃終了。別室のモニターで全出場者をチェックした地元・千葉放送局放送部長を審査委員長とする番組スタッフ6人の約1時間の合議を経て、本選出場者が発表された。

 1946年にラジオ番組「のど自慢素人音楽会」として始まり、53年3月からテレビ放送がスタート。46年に9歳の美空ひばりが、53年に北島三郎(80)が出場した。その後も島倉千代子、Kiroroの玉城千春(40)、ジェロ(35)、テツandトモのトモ(47)ら、そうそうたる面々が合格の鐘を目指し挑んできた。

 音楽番組で最も歴史ある「のど自慢」は、単なる歌のコンテストではない。記者が「うまい」と感心した出場者で“落選”した人も少なくなかった。審査員の一人の代田一貴チーフプロデューサー(45)は番組のコンセプトについて、「歌番組ではあるが、最終的にショートストーリーの人間ドラマ」と説明する。

 時に笑い、時に涙を誘う「のど自慢」。応募ハガキから選出する時点で、曲に対する思いを記した「選曲理由」が重視される。「出演者は歌で何かを伝えたいとか、自分の人生を歌に重ねる方。歌を通じて人と触れ合いたいという思いを持つ方が多い」と代田氏。予選会に番組司会の小田切千アナウンサー(47)も参加し、歌い終えた全出場者に舞台下で「なんで応募したの」「何でこの曲を選んだの」などと質問。同アナの意見も審査の検討材料になる。

 今回の予選会で、最も多く歌われたのが本選のゲスト歌手の五木ひろし(69)と島津亜矢(46)の曲。エントリーした250組中、五木、島津の曲を15組ずつ計30組が選んだ。これまで本選で、ほぼ確実に選出されるゲストの曲について、「枠として決めていないが、ゲスト歌手との関わりという演出上、選出することが多い」(代田氏)。だが選出の上で倍率も高く、有利とも言えないようだ。

 歌番組という性格上、審査基準の中で、歌のうまさが高い比重を占めるが、年齢、表現力、歌唱形態、人柄なども勘案された上で、バラエティ豊かな20組が本選の舞台に立つ。もちろん、NHKの受信料の支払いの有無は選出に関係ない。

 結果発表後、本選出場を逃したほとんどの参加者が20組を祝福した。4万円で購入したという白スーツを着て矢沢永吉の「I LOVE YOU、OK」を熱唱した流山市のトラック運転手の逆戸美喜夫さん(56)は「他にうまい人がたくさんいた。盛り上げられただけでうれしい」と敗退にも納得の笑顔。100歳の記念で出場し、自身の人生に重ねた美空ひばりの「愛燦燦」を歌った流山市の小宮山春江さんも「刺激になった。体のことを考えたらここで落ちて良かったかも」と満足げに会場を後にした。

 翌日の番組終了後、20組は別室に集まり感想を語り合う。代田氏は言う。「予選会では赤の他人だった者同士が、『同窓会やりましょうよ』と家族のように盛り上がる。そういった姿を見ると、開催して良かったなと思えるのです」

最終更新:6/25(日) 15:13
スポーツ報知