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患者家族の嫌みと看護師のストレス、理不尽なパラドックスはなぜ生まれる?

6/25(日) 9:33配信

ニュースイッチ

一般の人には「7:1」が何を意味するかさえ浸透していない

 血相を変えた看護師が私に、「看護師を呼んでもなかなか来てくれないと、嫌みを言われました」とこぼします。たたみかけるように「7:1看護体制とここは違うのよ、院長わかってますよね」と言いました。愚痴とはわかっていても反論に苦しみます。なぜなら一般の方々には「7:1」が何を意味するかさえ浸透していないからです。

 一般病床には、患者さん7人に看護師1人が対応する「7:1」から、15人に1人の「15:1」まで、4タイプの看護体制が存在します。

 単純計算で7:1に比べて15:1の看護師は約半数になります。そのため入院基本料に差がついており、1日あたり前者は1万5910円、後者は9600円と定められています。

 仮に20日入院すると差は約12万円ですが、実際に患者さんが支払い額に差が出ないという奇妙なことが起こります。高額療養費制度を利用すると、例えば70歳以上の方が支払う費用は、どちらも月額4万4400円と差がありません。

 家族にすれば、同じ額を払うのだから同じことをしてもらって当然、となります。看護師のストレスも、患者家族の言い分ももっともです。こうした理不尽なパラドックスの存在を、どのように多くの人に理解してもらえば良いのか、悩みは尽きません。

 「圧迫骨折と言われたのに入院を断られた」というのはよく聞く話です。「動けないのに、なぜ入院できないのですか」と聞かれますが、看護体制7:1は平均入院期間が18日以内と制限されており、長期入院となる患者さんは断らなければならない傾向にあります。

 また、特別養護老人ホームに入居していた方が、誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返すため退去を求められ、療養病床を探しましたが「医療区分1だから受け入れは難しい」と断られたことがありました。

 「理不尽だ、医療区分1って何だ」と質問されて説明に苦慮したことがあります。医療区分は1~3があり、医療必要度が高ければ数字は高くなります。

 さらに、療養病床には医療区分2~3の患者さんを一定割合以上入院させないといけない規則があります。医療区分の種類は説明できますが、それにより入院できる人数が定まっている実情は説明しづらいものです。

 現場の矛盾は患者さんや家族のニーズが変化し、加えて医療制度が急速に変化していることに起因します。このはざまで説明時間を費やせず現場がもがいています。医療人たちは、どうしたら皆に理解してもらえるのか、と苦悩の日々を送っているのです。

東海林豊(城東桐和会東京さくら病院院長)

最終更新:6/25(日) 9:33
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