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【漢字トリビア】「佐」の成り立ち物語

6/25(日) 11:30配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は、日本最多を誇る名字「佐藤」さんの「佐」です。

にんべんに「左」と書く「佐」というこの漢字。
「左」はカタカナの「ナ」のような字に、「工具」の「工」と書きます。
「ナ」は左手の形を表し、「工」は神に仕える人が祈りの際に持つ道具を意味します。
そこから「左」という漢字は、左手に祈りの道具を持ち、神の居るところを尋ねて助けを求めることを示すようになりました。
その「左」という文字に、人間の動作を表す部首・にんべんを添えて、「たすける」という意味をもつ漢字「佐」が生まれたといいます。
人のそばにつき、手を添えて助けること、「補佐」という熟語にも使われる漢字です。

「佐藤」さんの名字のルーツは、日本最大の系譜を築いた藤原氏。
「近藤」「斉藤」「加藤」「遠藤」などもその一派ですが、「佐藤」姓の祖となるのは、政権を離れて地方へ下った武家の藤原氏でした。
最も名を成した祖先は平将門を討ち、関東一帯を支配した藤原秀郷。
彼は下野国佐野庄、現在の栃木県佐野の出身だったため、「佐野」の「佐」と「藤原」の「藤」で「佐藤」姓が誕生しました。
また、秀郷の子孫が左衛門尉という役職についていたため、「左衛門」の「左」ににんべんをつけて「佐藤」にしたという説もあります。
「佐藤」の一族一門は大いに栄え、分流は東北へと移住。
神に仕える人が祈る様子を示す吉祥漢字「佐」を使うということもあり、ゆかりのある人々はこぞって「佐藤」姓を名乗るようになりました。
その結果、「佐藤」さんは現在、全国で一八九万人ほど居るといわれています。

ではここで、もう一度「佐」という字を感じてみてください。

友人知人を見渡せば必ず見つかる「佐藤」さん。
名字に宿ったその力の影響で、困った人を見たら声をかけずに居られない性格かも知れません。
名字や名前の由緒を知ることは、自分の存在にまつわる謎解きのひとつ。
迷い道から救い出してくれたり、あなたはあなたのままでいい、と肯定してくれたり。
華々しい活躍をした英雄が見つからなかったとしても、ご先祖さまは願いをこめて、私たちを今、この世に送り出してくれたはずなのですから。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『日本人の常識 地名と苗字の謎』(丹羽基二/著 幻冬舎)
『解明!由来がわかる姓氏苗字事典 家系・家紋』(丸山浩一/著 金園社)

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2017年6月24日放送より)

最終更新:6/25(日) 11:30
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