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アメリカの人工肉業界に穏やかならぬ雰囲気? 非難するのはまだ早い

6/25(日) 20:10配信

ギズモード・ジャパン

肉の生産が動物にも環境にも良くないことは分かってる…でもやっぱりベジタリアンにもビーガンにもなれない…なんて、肩を落とす前に。

【画像】アメリカの人工肉業界に穏やかならぬ雰囲気? 非難するのはまだ早い

動物を殺すことなく、環境にもベター。さらにジューシーで美味しく、健康的な肉を…そんな理想を掲げて研究が進む人工肉の世界。植物性食品のみを材料とするハンバーガーや、幹細胞から動物組織を培養する研究室育ちの肉まで、アメリカを中心にさまざまなスタートアップ企業があります。

先日、そんな業界をどよめかせる意見を放ったのは、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコにレストランを展開するImpossible Foods(インポッシブル・フーズ)のCEO、Pat Brown氏。TechCrunchのインタビューで、植物由来の材料でつくったインポッシブル・バーガーを扱う同社に「なぜ動物の細胞を使用した研究室育ちの人工肉はやらないのか」という質問を投げかけたところ、次のような回答がありました。

単純に馬鹿げたアイデアだと思うからだよ。まず、それがマシだと思ったら間違いだ。いくら良さそうに思えてやってみたとしても、牛が抱えるのと同じ限界はやってくるんだから。経済的に完全に拡大しないね。

無理ないコストで幹細胞から動物細胞の有用な組織のレプリカを育てられるとしたら、医療革命だ。でも見てごらんよ、革命は起きてないだろう。

もちろん、幹細胞を医療目的で使用するのと食用のタンパク源として使用するのとでは明らかに異なるのですが、そんなことは本人も承知のはず。なんといってもBrown氏はスタンフォード大学の生物化学教授であり、科学雑誌Public Library of Scienceを出版するPLoS Oneの共同創立者でもあるのですから。

そんなBrown氏にとって、同じ業界にありながら異なるアプローチで人工肉を培養する競合は、日々研究開発に取り組む若いスタートアップ企業たち。2013年に初めて人工肉バーガーを生産したMosa Meat(モサ・ミート)や、今年初めて人工家禽肉を生産したMemphis Meats(メンフィス・ミーツ)などがあります。

2011年の創業以来、Brown氏のインポッシブル・フーズが2億ドルの資金調達に成功して植物性由来の人工肉をレストランに提供するのに対して、メンフィス・ミーツは2015年の創業から300万ドルの資金を集め、4年後の2021年までに一般販売を目標としています。また人工皮革を生産するModern Meadow(モダン・メドウ)は、人工肉の生産を計画し5,300万ドルの投資を受けていました。競合よりも一足早くレストラン展開するBrown氏にとって、非難するのは簡単なことだったのかもしれません。

そんな同氏への反論をブログに投稿した投資家のSeth Bannon氏は、メンフィス・ミーツ社の製品は拡大可能で、牛と同じ制限はないとの考えを綴りました。効率性についていえば、牛の飼育に数年かかるのに対し、人工肉の生産は数週間で済みます。環境への影響に関しては2011年のオックスフォード大学の研究を引用し、人工の牛肉や豚肉は家畜で育てるより少ないエネルギーで済むこと、また鶏肉に関しては家畜と比べてわずかに多くのエネルギーを要するものの、必要な土地は少ないことを指摘。また同氏は人工肉の生産コストが下がっていることについても言及。人工肉バーガーは2013年当初、1パウンド(454g)につき105万6千ドルでしたが、2017年には9千ドルという額まで落ち着いてました。

人工肉が産業としてどれほど拡大可能で、環境にどれほどメリットがあるのか、いまのところ白黒はっきりしたセオリーは示されていません。Environmental Science and Technologyで公開された研究によると、人工肉は牛を育てるよりも明らかに少ない土地で済む一方で、同じ量の肉を生産するのにより多くのエネルギーを要する可能性を明らかにしました。またこうした推量は、現段階で不確実性が高いとも述べられています。

研究室育ちの人工肉については、その生産プロセスにも謎が残っているのです。たとえば細胞の培養において、ウシの胎児の血液から作られた「ウシ胎児血清」とよばれるプロセスを必要としますが、メンフィス・ミーツはプレスイベントの試食会で、一連のプロセスからこれを除いたと主張しています。代わりに何と置き換えたのか、その手法について詳細が語られることはありませんでした。

環境や動物へのメリット、生産プロセス、コスト、味、健康に良いのかなど、人工肉について気になることは山ほどあります。現時点で明確に言えることがあるとすれば、開発段階にある研究室育ちの人工肉についてジャッジするのは時期尚早であるということ。健康面、倫理面、さまざまな理由から肉を食べない選択をするベジタリアンやビーガンの人々と、文化的に肉を食べずにはいられないという人々、いずれの立場でも人工肉を消費する将来に向けて、道のりは始まったばかりかもしれません。

image: Kondor83 / Shutterstock.com
reference: Pat Brown`s Lab, Seth Bannon,University of Oxford, ACS Publications

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US [原文]

(Rina Fukazu)