ここから本文です

IoTの波がエネルギー分野にも 注目高まる「アグリゲーション・ビジネス」

6/26(月) 6:10配信

ZUU online

IoT(Internet of Things)の波がエネルギー分野にも押し寄せている。電力自由化によって電力以外の多くの企業や事業者が電力ビジネスに参入する一方、IoTによって、電力のコントロールが容易になったためだ。そうした背景から登場した新しいビジネスとして、アグリゲーション・ビジネスが注目されている。

■一つの発電所のように運用

アグリゲーションは、直訳すれば、「集荷する。束ねる」という意味である。エネルギー、電力分野でこの言葉が使われる場合、「いくつもの需要家側の電力リソース(電源)を束ね、あたかも一つの発電所のように運用するビジネス」をアグリゲーション・ビジネスと呼ばれる。

アグリゲーション・ビジネスが登場した背景には、2016年4月から始まった電力全面自由化によって、日本のエネルギー供給構造が大きく変わったことを見逃せない。日本の電力供給体制は、従来、地域独占体制による国内10社による発電から送電、販売までの一貫体制によって維持されてきた。発電所も、大規模集中電源方式といわれるように、特定地域に集中した大規模な原子力発電、火力発電によって、大都市などの遠隔地に送電される方式がとられてきた。

電力自由化はそうした体制に風穴をあけ、さまざまな事業者が発電、販売分野に進出することを可能にした。自由化による競争促進によって、高止まりしている日本の電気料金の引き下げと、電力発電コストの低減が最大のねらいである。

■分散型電源の広がりが背景

それと同時に、2011年3月の東日本大震災による原子力発電所事故を契機として、国内電力需給が大幅にひっ迫したことを見逃すわけにはいかない。津波や地震などの天災によって、被害を受ければ、大規模集中型電源はたちどころに供給をストップし、その影響は極めて広範囲に及ぶことが浮き彫りになった。

その教訓から、政府は、震災以降、太陽光発電などのいわゆる分散型再エネ電力の導入を積極的に支援した。分散型電源は、再エネに限らず、コージェネレーション(熱電併給システム)、エネファーム(家庭用燃料電池給湯器)、蓄電池、業務用燃料電池、さらにはBEMS・FEMS(ビル・工場エネルギーマネジメントシステム)など、近年は、多様な広がりを見せている。

分散型電源は、それぞれの需要家にとどまっている段階では、導入した需要家にメリットがあるとしても、全体の電力コストや電力需給の安定化などには、メリットを生かすことができない。しかし、それぞれの需要家側の電源をネットワークとして束ね、一つの発電所のように運用することによって、電力コストの低減や需給の安定化に役立てることができるのである。アグリゲーション・ビジネスはそうしたエネルギーの必要性から登場したビジネスである。

■ネガワット取引やDRなどの具体例

アグリゲーション・ビジネスの具体例として、最近は、ネガワット取引が挙げられる。ネガワットは、ポジワット(発電電力)に対する言葉で、節電電力と訳されている。節電電力は、発電電力と同等の価値を持っており、各需要家の節電電力を集め、電力会社に販売することで、電力会社から対価を得ることができる。その対価の一部を需要家に還元することによって、ビジネスが成立する。

同様なビジネスとして、デマンドリスポンス(DR:需要家への節電要請)がある。電力需要のピークが予想される場合、電力会社の要請でアグリゲーターが需要家に節電を要請する。節電に協力してくれた需要家には、電力会社からの対価の一部を還元するという方法である。

アグリゲーターはこのように、電力会社と需要家の間に介在し、電力需給を調整したり、需要家側のエネルギーリソースを最適遠隔制御したりすることで、ネットワーク全体の電源をコントロールできるのである。そうした制御によって、火力発電などの既存の高コスト発電所を代替することが可能となる。それは、IoTによって、各需要家のリソースやシステムをインターネットを通じてネットワーク化することができるようになったためである。

需要家側のリソースを束ねて一つの発電所のように運用することから、アグリゲーターによるリソースのコントロールは、仮想発電所(Virtual Power Plant:VPP)とも呼ばれる。大規模集中電源を補完する新しい発電所のイメージである。

■VPPで火力発電所38基分のコスト削減

経産省はVPPによって、どの程度の既存発電所を代替できるかという試算をまとめている。試算によると、エネルギーリソースのうち、創エネ設備とされる住宅用太陽光発電設備は2030年に900万kWの規模が見込まれる。また、エネファームは371万kW、コージェネレーションは1120万kWが見込まれる。これらの創エネ設備で2030年には計2591万kWと想定されている。この規模は大規模火力発電所約25基分に相当する。

創エネ設備以外では、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)、EV (電気自動車)等のリソースがある。これらの設備は、DR・蓄エネ設備とされ、2030年には合計1億3200万kWの導入が見込まれている。仮に、10%を調整可能と仮定すると、1320万kWすなわち大規模火力発電所約13基分の設備に相当する。VPPの運用によって、大規模火力発電所計38基分の発電コストを削減できるわけである。その分は、電力料金の低減効果につながるとみられる。

アグリゲーターは、電力小売り事業者をはじめ、さまざまなエネルギーサービス会社がその役割を担うことになる。現に、そうしたアグリゲーターも何社か登場している。電力、さらにガスの全面自由化などを踏まえ、今後、さまざまなエネルギーサービス事業者が市場に参入するとみられる。エネルギー・アグリゲーション・ビジネスは、新たな成長ビジネスとしてその将来性を期待されている。(西条誠、エネルギー・経済ジャーナリスト)

ZUU online

最終更新:6/26(月) 6:10
ZUU online