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【2017年後半の為替展望】円高の流れを継続、メインシナリオは1ドル=105円も

6/26(月) 6:40配信

ZUU online

昨年12月、ウォール街の市場関係者の多くは2017年のドル円について、「トランプラリーの継続と米利上げ」によりドル高(円安)を見込んでいた。ところが、フタを開けてみると今年前半は予想とは逆の展開となっている。一体何が起きているのだろうか。2017年の上半期を振り返りつつ、年後半のドル円相場を展望してみよう。

■米株高、FRB利上げでも「ドル高にならない」理由

今年前半を振り返ると、米株式市場では最高値の更新が相次ぎ、FRB(連邦準備制度理事会)による利上げも2回実施された。通常、株高と金利上昇はともにドル高要因と考えられるが、予想に反してドルは上昇しなかった。

想定外だったのは長期金利の動きだ。通常は株価と逆に動く債券価格も上昇(利回りは低下)し、利上げに逆行する展開となった。今年前半のドル円の下落を主導したは、この「米長期金利の低下」であった。

米10年債利回りがドル円と連動していることは統計的な数字でも確認できる。たとえば、過去1年の日次ベースでの米10年債利回りの変化とドル円レートの変化率との相関係数は0.59と正の相関を示している。6月16日までの1カ月に限ると、相関係数は0.68となり連動性を強めていることが分かる。

年初からの数字を見ても、米10年債利回りが2.4%台から2.1%台へと低下するなかで、ドル円も117円台から110円台へと低下した。

したがって、年後半を展望するうえで、まず考慮しなければならないのが「米長期金利の行方」である。日米の金融政策はともに重要であるが、特に米金融政策の動きに警戒が必要であろう。

■なぜ、米長期金利が低下しているのか?

昨年12月以降、FRBは3カ月に一度のペースで利上げを実施している。しかし、年内の追加利上げは難しくなっている模様だ。

6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が唯一反対に回ったが、その理由は「インフレ率の鈍化」だった。同総裁は、FRBがインフレが加速していると「誤って」判断し、低インフレを長期化させる過ちを犯した可能性があると述べている。

イエレンFRB議長は、インフレ率の低下は一時的であり、その理由として労働市場の堅調さを挙げ、目標である2.0%への回帰を見込んでいる。一方、カシュカリ総裁は「残念ながら、データはこの見方を裏付けていない」と反論している。また、6月のFOMCで賛成票を投じたダラス連銀のカプラン総裁も「追加利上げにはインフレの改善が必要」としており、年内の追加利上げにはインフレ率が2.0%へ向けて再浮上する必要がある。

現実問題として、「5年先5年物期待インフレ率(※5年後をスタートとした5年間の平均インフレ率の予想)」は3月FOMC時には2.2%前後を推移していたが、6月16日現在は1.7%台と6月の利上げにもかかわらず、低下基調にある。また、消費者の期待インフレ率も5月は統計開始以来の低水準となっており、市場参加者のみならず米国民の総意として「インフレ懸念は後退している」と見ても差し支えない状況だ。

このように、FRBの利上げにもかからず、長期金利が低下している背景には「インフレ見通しの低下」を指摘できる。それが、FRBの今後の追加利上げを難しくしていると考えられる。

■FRBの「タカ派色」が一層強まる?

先のFOMCでカリカシュ総裁は「インフレ率の低下が一時的かどうかを見極めるため、(インフレ率が)再浮上するのを待つべきだ」と主張していたが、FRBがそうしなかったのはなぜだろうか。この点について、ウォール街の関係者からは「別の理由で利上げを急いでいたのだろう」との指摘もある。

FRBは現在、3名の理事が空席となっている。共和党は現行の裁量的な金融政策には懐疑的でルールベースの導入を望んでおり、量的緩和にも否定的だ。つまり、FRBとしては、新しい理事が決まる前に「バランスシートの縮小を開始したい」との思惑が働いたのかも知れない。

3名の理事の指名には共和党の意向が反映される見通しで、FRBのタカ派色が一層強まると見られており、そうなると為替には「ドル高要因」として作用する可能性がある。

なお、FRB理事の候補としては、ブッシュ政権(息子)で財務次官を務めたランダル・クォールズ氏とカーネギー・メロン大学のマービン・グッドフレンド教授の名前が挙がっているが、両氏はともにルールベースの金融政策を支持していることを付け加えておきたい。

■日銀は隠れテーパリング中、気になる「出口戦略」

ところで、日銀は年間80兆円を目途に国債を購入してきたが、昨年9月に目標を「量」から「金利」へと変更して以降は60兆円程度にペースが落ちている。日銀の保有は発行残高の4割を超えており、購入ペースは今後とも鈍化する見通しだ。

こうした動きは「隠れ」テーパリング(量的緩和の縮小)と受け止められており、円高要因となっている。不評であるマイナス金利の解除など、「出口戦略」が意識されるようだと「一段と円高が進む公算」もあり警戒が必要となっている。

■メインシナリオは円高基調、FRB議長交代のリスクも

最近のドル円は1ドル=111円前後を推移しており、当面のコアレンジは105~115円となる。インフレ率が低下し、FRBの利上げ観測が後退していることを踏まえると、「メインシナリオは105円を目指す展開」となりそうだ。

とはいえ、期待インフレ率も既に1.7%台、米10年債利回りも2.1%台まで低下していることから、ドルの下げ余地も限られてこよう。105円からさらに円高が進むためにはサプライズが必要となりそうで、候補としては「日銀で出口戦略の議論」が進むことが挙げられる。そのような状況となれば、議論の内容次第で「100円割れ」があったとしても不思議ではない。

一方、ドル高要因としてはFRBのバランスシート縮小や新理事の就任がある。さらに、FRB議長の交代がゲームチェンジャーにつながる可能性にも留意が必要だろう。トランプ大統領はイエレン議長の再任を保留中で、共和党議会からの圧力を考えると交代の可能性は否めない。交代となれば、タカ派色が強まるとの見方がドル高を後押しして、120円を目指しても不思議ではない。

以上の通り、2017年後半におけるドル円のメインシナリオは「105円を目指しての円高」であり、場合によっては100円割れも視野に入ってくると考える。一方、次期FRB人事によっては流れが一変し、「120円を目指す展開」もサブシナリオとして想定しておきたい。円高、円安の両シナリオを考慮すると、想定レンジは95~125円となるが、メインの円高シナリオなら95~115円、サブの円安シナリオなら105~125円を見ている。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

最終更新:6/26(月) 6:40
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