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『V!勇者のくせになまいきだR』の音楽は、フルオーケストラでありながら“しょうもない”? 作曲家・坂本英城氏インタビュー

6/26(月) 11:02配信

ファミ通.com

文・取材:編集部 ロマンシング★嵯峨

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 ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアより、2017年秋発売予定のプレイステーション VR用ソフト『V!勇者のくせになまいきだR』。同作は、プレイヤーが破壊神となり、魔王たちとともにセカイ征服を目指すゲーム。これまでの『勇者のくせになまいきだ』シリーズのテイストはそのままに、リアルタイムストラテジーという、シリーズ初のジャンルに挑戦している。

 遡ること数ヵ月前、まだまだ寒さの厳しいころ、都内某所にて、本作の楽曲のレコーディングが行われた。本記事では、収録現場の模様と、過去作に引き続き楽曲を担当した坂本英城氏(ノイジークローク)のインタビューをお届けする。

――今回、『勇なま』がVRになったわけですが、最初にVR化のお話を聞いたとき、どんな感想を抱かれましたか?
坂本 いやぁ~もう、夢を見ているのかと(笑)。そんなことができるのか!? って。だって、2Dがコンセプトのゲームですよね? 3Dを飛び越えてVRと言われたときは、戸惑いがありました(笑)。音楽も含めて、どうなるんだろう、って。

――では、音楽を作るうえで、どのようなアプローチから始めていったのですか?
坂本 『勇なま』って、ふつうの常識が何も通用しない作品でして。魔王が主役で、勇者と戦うじゃないですか。ですので、勝利したときの曲は、気持ちいい曲ではなく、気持ち悪いけど気持ちいい……みたいな曲を作らなきゃいけないんですね。曲を作るときの常識が(ほかの作品と)いちから違う。

――確かに、勇者を倒した後に、爽やかで晴れやかな曲が流れるのは、ちょっと違いますよね。
坂本 そうなんです。頭をリセットするところから始めないといけないんですよ。

――常識をリセットした後は、どんな曲作りを?
坂本 『V!勇者のくせになまいきだR』について言えば、コンセプトははっきりしていました。“不可思議”、“奇妙な感じ”というのをベースにした曲というリクエストがあって。映画で言うと『ホーム・アローン』や『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のようなイメージとのことで、すんなり理解できました。ただ、いざ作るとなったときに、哲学的な思考に陥って……。人は何を聴くと、奇妙だと感じるのかな? とか。それを自分なり考えて、“こういう和声やメロディーの運びかただと、人はほどよく不安になるようだ”という分析を経て、着手しましたね。

――今回の楽曲はオーケストラによって演奏されていますが、オーケストラにすることは最初から決めていたのですか?
坂本 そうですね。初代『勇なま』のときは小学生が演奏できる楽器を使うと決めていて、『勇者のくせになまいきだ:3D』では、そこに弦楽器が入ったんです。大人と子どものコラボレーションということで。その流れで、つぎはVRとなれば、音楽もパワーアップしないと! と思い、自然と決まりました。といっても、『勇なま』の雰囲気は壊すつもりはないので、ピアニカやリコーダーというおなじみの楽器も入っていますよ。いや~、ピアニカとリコーダーの破壊力はすごいですよ。オーケストラ曲を書いても、あのふたつの楽器が入ると、急にこう、しょうもない音楽になるというか(笑)。

――しょうもない、って(笑)。
坂本 あんなにちっちゃい楽器なのに、(曲を)まとめていく力があるんですよね。ちなみに今回は、リコーダーとピアニカの音は打ち込みです。以前は“ヘタウマ”の音楽を目指していたので、ノイジークロークのスタッフが演奏していましたが、今回はそうそうたる演奏家の皆さんを呼んでオーケストラを収録したので、そこだけヘタなのはおかしいなと。ですので、今回の曲を聴くと、「勇なま、ちゃんとしたじゃん!」と思っていただけると思います。


――ちなみに、曲の中に、VRであることを意識した要素はありますか?
坂本 それは意識していないですね。強いて言えば、この後、音楽をミックスするときに、ちょっとリバーブを強くするかもしれません。空間を感じるエフェクトを意識しながらやるかもしれませんね。

――ラスボス曲の作曲についてお聞きします。作曲中は、開発中のゲーム画面を見て、イメージを膨らませたのでしょうか。
坂本 今回はあえて見ていないです。絵素材を見たほうがいい場合と、見ないほうがいい場合というのが、僕の中にあって。見たほうがいいのは、たとえばアクションゲームでボス曲を作る場合。ボスの動きがわからないと曲を作れないんですね。素早く動くのか、空を飛ぶのか、ものすごく遅いけど一撃が強いとか。そういった特徴を把握して、曲調を考えます。『勇なま』の場合は、絵に合わせることよりは、それまでに作った曲とどう変えるかというほうが重要です。どういう勇者が出てくるかどうかは、あえて考えませんね。

――ほかに、曲を作る際に考慮する要素はありますか?
坂本 僕たち、TEKARUというバンドをやっているんですが……3作目のラスボスの曲で、「ファイナル・ギャザリング!」という5拍子の曲があるんですが、TEKARUメンバーの加藤くん(ノイジークローク加藤浩義氏)は、その曲を弾くのにとても苦労していたんですよ。もともと4つ打ちのダンスミュージックの人なので。ただ、最近ようやくちょっと弾けるようになってきたので、じゃあつぎのステップを目指そうということで、今回のラスボス曲は11拍子にしてみました。どうでもいい理由ですよね(笑)。

――加藤さんに新たな試練が(笑)。それでは最後に、『V!勇者のくせになまいきだR』を楽しみにしている皆さんに、ひと言お願いします。
坂本 VRで『勇なま』を出そうという発想自体がクレイジーだなと思っておりまして、SIEさんの寛大さに驚くと言いますか……ハンコを押した人がいるわけですよね? それがすごいなと。僕も、それに呼応する音楽を作らなければいけないという気持ちでやってきました。『勇なま』らしい魅力を残しつつ、新しい音楽を作れたという自負があるので、ぜひ音楽を聴きつつ、ゲームを楽しんでいただければと思います。

最終更新:6/26(月) 11:02
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