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県内ベンチャー企業 進む認知症予防研究

6/26(月) 8:00配信

茨城新聞クロスアイ

認知症を予防するため、認知機能の低下を早期発見する研究開発が活発化している。県内でもベンチャー企業が認知症の予備軍とされる「軽度認知障害(MCI)」を早期発見する血液検査や、認知機能レベルを判定する検査機器など画期的な研究開発に取り組む。認知症患者は国内に460万人以上いるとされ、高齢化社会の進展でさらに増加が見込まれる。特効薬がない中、発症前の段階で、適切な治療予防を行う“先制医療”の重要性は一層高まりそうだ。 (報道部・松崎亘)


「認知症への進行を防ぐためには、MCIの段階での早期発見が大切。適切な対処をすれば発症を予防できる」。筑波大准教授で、同大発バイオベンチャーMCBIの内田和彦社長は強調する。

同社は、血液中のタンパク質を解析し、MCIの兆候を早期発見する「MCIスクリーニング検査」を開発した。脳内に蓄積されるアルツハイマー病の原因物質を排除する機能を持った三つのタンパク質の血中量を調べることで、MCIのリスクを判断する。少量の採血で、判定が可能だ。

2015年4月に実用化し、これまでに全国の1500以上の医療機関と連携し、1万人を超える検査実績を積んできた。健康な人とMCIの判別精度は約80%。検査は保険適用外で2万円程度かかるが、検査申し込みは後を絶たない。

内田社長は「MCIは日常生活に支障はないが、放置すると約5年で半数以上が認知症に進行するとされている。発症後の治療ではなく、発症前の予防が重要になる」と力を込める。

■「ゲーム感覚」
「ゲーム感覚で楽しく自分の認知機能レベルを知ることができる」。筑波大との産学連携により、簡単に認知機能を測定できる検査訓練機器を開発したシロク(つくば市)の小川保二社長は、実演を交えて説明する。

ランダムに表示された数字や仮名の順番にペグを差し込み、完了までにかかった時間を計測。同大が千人を対象に行った臨床試験データを基に、認知機能を5段階評価する。1回当たりの検査時間は1~2分程度で、結果は即時、電子データ化される。

小川社長は「MCIの段階で機能低下を発見できれば、有酸素運動や脳トレ、など発症予防に向けた手だてを講じることができ、健康づくりに生かせる」と早期発見の重要性を訴えた。

■5人に1人発症
厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者のうち、462万人が認知症患者とされる。団塊世代が75歳以上となる25年には、700万人にまで増加するとされ、5人に1人が発症する試算になる。健康な人と認知症患者の中間に位置するMCIも現在、約400万人いるとされ、認知症患者と同数程度にまで増加が予測されている。

認知症の中でも最も多いアルツハイマー病は、発症の約20年前から脳内に原因物質がたまり始め、記憶や学習に関わる海馬の神経細胞が徐々に壊死(えし)し、脳の機能が失われる。自分自身の変化にいかに早く気付き、対処するかが、老後の明暗を分けそうだ。

内田社長は「認知症は今や誰もが関わる可能性のある身近な病気。特効薬は開発されていないが、発症する前に先手を打って予防治療に取り組むことで、健康寿命を延ばし、高齢化社会でも生産性の高い生活を送ることにつながる」と話す。

茨城新聞社