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若い女性の惨殺事件からムスリムへの差別を描く「ナイト・オブ・キリング」評<全1シーズン>【厳選!ハマる海外ドラマ】

6/26(月) 21:34配信

シネマトゥデイ

 世界各地で頻発するソフトターゲットを狙ったテロ。それに報復する形での反イスラムテロも起こるなど、日々世界はどうなってしまうのかと不安は増すばかり。近年、アメリカのドラマでは「24-TWENTY FOUR-」系の派手なアクションではなく、日常にはびこる根深い「偏見」や「差別」にフォーカスして人間を描いた、より社会派の要素が強い作品に秀作が多い。映画『シンドラーのリスト』(1993)でオスカー(脚色賞)を受賞した脚本家として知られるスティーヴン・ザイリアンが、原案・製作総指揮・脚本・監督を手がける入魂の一作「ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」(原作は英ドラマ「Criminal Justice」)は、その筆頭。テロ報道などからは伝わってこない「現実に何が起きているのか」を描いて、今期の数々の賞レースに名乗りを上げているクライムサスペンスの傑作だ。

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 ニューヨークのアッパー・ウエストサイドで起きた若い女性の残忍な殺人事件。容疑者として逮捕されたのは、被害者と”その夜”を共にしていたイスラム教徒のパキスタン系アメリカ人の優秀な大学生ナシール(通称ナズ)・カーン。留置所で困惑しうなだれるナズの姿を見かけた、冴えない弁護士ジョンが弁護を引き受けるが、状況はナズに不利なものばかり。ドラマは、無法地帯と化している刑務所に収監されたナズのサバイバルと、ジョンや刑事らの外の世界での捜査が平行して描き、やがて法廷での裁判へとなだれ込んでいく。

 第1話は80分近くあり、色調を抑えた映像(撮影監督は映画『ブルーベルベット』(1986)、HBOの秀作ドラマ『オリーヴ・キタリッジ』(2014)のフレデリック・エルムズほか)に、みっちりと濃密な物語の世界は、殺人事件の残忍さ、事件の発端の意外性も衝撃的でスリリング。この1話だけでも一本の映画を観るかのような満足感があるのだが、本作は全8話で完結するミニ・シリーズ。ここからが作り手の腕の見せどころとなるのだが、ほぼ全てを一手に担うザイリアンの手腕は驚くほど玄人好みで鮮やか! ザイリアンのベストワークの一つと言えるし、現在のアメリカのドラマがどれほど高いレベルに達しているのかを証明する作品でもあるだろう。

 ミステリーとしては、最後まで犯人は誰なのか、動機は何なのかといった王道路線で視聴者を引っ張る。一方で、第2話~第5話にかけては本筋がなかなか進まない印象があるのだが、本作は数々の秀作を輩出している放送局HBO(有料チャンネル)らしいスロースターターで、後半ぐぐっとテンポをあげていくスタイル。丹念にキャラクター描写を積み重ねていくことによって生まれる説得力、リアリズムにこそ、映画の尺では描き切れないドラマの醍醐味がある。

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最終更新:6/26(月) 21:34
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