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種子法は本当に廃止すべきなのか?

6/26(月) 16:00配信

ニュースソクラ

拙速だった種子法廃止

 たいしたことはない、と思っていたのに、後になって大変なことだと気づくことがままある。種子法の廃止がそれだ。拙速だった廃止が後の祭りにならなければいいが。

 正式には「主要農産物種子法」という。米、麦、大豆を主要農産物と定め、優良な種子の生産や普及を都道府県に義務付けていた。戦後の食糧増産を目的として1952(昭和27)年に制定されたが、「民間事業者の参入を阻害している」(農林水産省)として、廃止法案が国会に提出され、4月14日に成立した。来年4月1日から廃止される。

 米や麦、大豆は日本人に欠かせない重要な穀物なので、国や都道府県の農業試験場など公的機関が、気候など地域の特性に合う品種を開発し、奨励品種として普及させてきた。当初は多収品種が、近年では食味のいい米の開発を競っている。山形県の「つや姫」や北海道の「ゆめぴりか」など、食味ランキングで最高ランクの「特A」を獲得した良質米は、みな農業試験場が開発した。

 ちゃんと機能しているのに、なぜ種子法を廃止してしまうのか。米の奨励品種は現在444種もあるが、民間の開発した種子は1つも選ばれていない。農水省によれば「種子法が民間会社を差別する根拠になっている」というのだ。野菜や花などの園芸作物では、タキイ種苗(本社・京都市)やサカタのタネ(本社・横浜市)など日本の民間企業が世界的に知られているが、米、麦などの穀物では公的研究機関の独壇場である。

 廃止法案が国会に提出された3月になってから、「反対」の声が大きくなった。反対論の論拠はこうだ。そもそも、外部の経済界からの規制緩和要求の一環だったことが気にくわない。国会審議では野党からこんな懸念が出た。「民間企業の参入を促すというが、実際は外資の参入に道を開いてしまわないか」。たとえば、種子ビジネスで世界を牛耳っている米国のモンサント社が遺伝子組み換えの米の種子を開発、日本に売り込む可能性だってある。

 わが国は遺伝子組み換え作物の栽培を認めていないから、取り越し苦労かもしれない。いきなり廃止法案が出されるから、あらぬ疑いを招くことになる。

 数は少ないが、民間企業の開発した米の育成品種はある。その一つが「みつひかり」で、三井化学アグロ(本社・東京)が開発した。多収品種なのに食味がよく、どんぶりなどの外食産業や、弁当やおにぎりなどの中食産業に好評である。牛丼チェーン店の吉野家が生産者と直接契約で栽培してもらっている。

 さまざまな機能性を持った米の新品種の開発競争も始まっている。野菜の種子では世界的な企業に育っている日本企業のことだから、米についても民間の活力を生かす余地はある。でも、これまで成果を上げてきた農業試験場が、種子法の廃止で存続できなくなっては元も子もない。種子法を見直す必要はあったとしても、廃止まですることはなかったのではないか。戦略物資である主食の種子は、国が安価で安定的に供給する仕組みを残したい。

村田泰夫 (ジャーナリスト)

最終更新:6/26(月) 16:00
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