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東大卒女性医師が海外移住を考えるとき ー 先の見えたキャリアと子どもの教育

6/26(月) 20:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

子ども時代の私にとって、教育とは学歴そのものを意味していた。スポーツや芸術は得意ではなかったが、勉強は好きだったし、結果が数字でフェアに評価されるのが面白かった。医学部を目指して大学受験に没頭し、晴れて医師になってからは、実力が大事だと考えるようになった。

【画像】高いレベルを求めて「教育移住」を希望する人が増えているシンガポール。

初期研修を終えて大学に戻ることも考えたが、見学に行くと、5年目になってもベテラン医師の手伝いをしている先輩がいた。中堅の男性医師には子育てとの両立もできると言われたが、「鵜呑みにしないほうがいい。実際は『やっとのことでできる』という感じ」と実情を教えてくれた医師もいた。結局私は、少しでも多くの経験を積むため、市中病院への就職を選んだ。早く一人前に仕事ができるようになって、社会的・経済的に自立するのが目標だった。

これが私が本当にしたかったことなのだろうか?

しかし、ある程度仕事ができるようになった時、ふと気付くと先の目標が見えなくなっていた。どんなに頑張っても、一定の年数が経たなければ専門医試験は受けられない。いくら技術や知識があっても、後進の教育に熱心であっても、必ずしも評価されるわけではない。

一方で、産休育休を取れば当然のようにキャリアは遅れる。常勤の勤務医であれば当直やオンコール(急患時の対応役としての待機)は避けられず、それができなければマイナス評価だ。そもそも保険診療では、誰が診療しても診療報酬は同じだ。個人ではなく、医師という資格が評価されているに過ぎない。病院にとっては、安く長時間働いてくれる若い男性医師が最も使い勝手がよいのだ。

このまま研修を続けていれば、いずれ専門医にはなれる。どこかの病院勤務を続けて、運が良ければ管理職になれるかもしれない。でも、それは本当に私がしたかったことなのだろうか? もっと実力が認められて、多くの人の役に立ち、自由に働き方を選べるような仕事がしたい。

次世代の教育投資が十分でない日本

そんな時、私は子どもを授かり、子どもにどんな教育を受けさせるかを真剣に考えるようになった。それと同時に、先が見えてしまった自分のキャリアを変える最後のチャンスだとも思った。

子どもたちが大人になる20年後、日本はどんな国になっているだろうか。医療費の多くは高齢者に使われているが、その4割は税金でまかなわれ、年々増大している。一方で、保育園に入れない子どもが大勢いたり、国立大学の学費が上昇したりするなど、次世代の教育への投資は十分でない。移民を受け入れない日本では、マーケットは縮小する一方だ。十分な教育投資がなければ、一人ひとりの生産性を高めるのは困難であり、高齢化によって日本の財源が尽き果てるのを待つチキンレースになるかもしれない。

最も危機感を持っているのは中高生だ。この10年ほどで、海外大学への進学は急に身近になってきた。ベネッセや早稲田アカデミー、駿台など大手予備校も海外進学専門コースをスタートさせている。開成高校では、2012年には0人だった海外大学合格者が、2017年には20人になった。灘高校でも今年6人が海外大学に合格している。国内だけではなく、世界中の選択肢の中から自分の行きたい大学を探す時代になったのだ。

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最終更新:6/26(月) 20:10
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