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社説[改憲案「年内に提出」]危うい首相の前のめり

6/26(月) 7:25配信

沖縄タイムス

 安倍晋三首相は24日、神戸市で講演し、憲法改正について「臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会に自民党案を提出したい」と述べた。

 自民党案の提出時期を明言したのは初めてである。

 5月3日の憲法記念日に掲載された読売新聞社のインタビューで、首相は、戦争放棄と戦力不保持を定めた9条1、2項を維持した上で、自衛隊の存在を明記するという新たな案を示し、「2020年の施行をめざす」考えを明らかにした。

 今回はさらに踏み込んで、事実上、スケジュールを前倒しする姿勢を示した。

 首相の進め方に対しては、野党の反発だけでなく、党内の一部からも異論が出ている。なぜ、これほど憲法改正作業を急ぐのか。

 国会の憲法審査会には中山太郎氏(元衆院憲法調査会長)らが築き上げた憲法論議のルールがあるという。少数会派を尊重し、熟議による合意形成を図る、という運営方針である。

 なのになぜ、安倍首相は期限を明示してまで党内論議をせかすのか。安倍首相は自民党総裁ではあるが、何よりも憲法尊重義務を負っている内閣総理大臣である。

 憲法改正に関する言動は慎重であるべきなのに、「任期中に何としても憲法改正をやり遂げたい」と、自身の政治信条の実現に前のめりになってしまっては、熟議による合意形成は望むべくもない。

 もう一つ気になるのは、首相の発言に「加計隠し」とも受け取られかねない局面打開の意図が感じられることだ。

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 安倍官邸は「加計学園」問題をめぐる対応で国民の強い批判を浴び、メディア各社の支持率が軒並み、大幅にダウンした。野党4党は憲法53条に基づく臨時国会の召集を求めているが、与党は応じる気配がない。

 官邸は説明責任を果たさず、野党の追及をただ否定するだけ。与党は官邸を援護するだけ。国会審議の形骸化と、行政権の肥大化をチェックすることのできない国会の機能低下は、深刻だ。

 「改憲ラッパ」を吹き鳴らすことで、憲法改正に積極的な保守層の期待を高めると同時に、党内慎重派を封じ込め、求心力を回復し、局面転換を図る-そんな狙いが透けて見える。このような「自己都合」で憲法改正問題を扱っていいのか。

 今、優先して取り組むべき課題は、早急に臨時議会を開いて「加計学園」問題を集中審議し、真相究明と信頼回復に取り組むことだ。

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 安倍首相や自民党執行部の念頭にあるのは、18年夏ごろ、憲法改正を発議し、早ければ18年中に国民投票を実施するスケジュールだという。

 9条改正がそんなに簡単に実現できるとは思えないし、そうすべきでもない。

 憲法は「われらとわれらの子孫のために」あるのであって、少数意見を無視して論議を進めたり、憲法審査会で強行採決まがいのことが行われてはならない。

 安倍首相の前のめり姿勢には憲法論議をゆがめかねない危うさがある。

最終更新:6/26(月) 7:25
沖縄タイムス