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『OK コンピューター』誕生の年、1997年の特別さを示す傑作アルバム10枚!

6/26(月) 21:15配信

rockinon.com

レディオヘッド史上、そして90年代のUKロック史上の歴史的傑作として名高い『OK コンピューター』の20周年記念リイシュー、『OK コンピューター OKNOTOK 1997 - 2017』がついにリリースされた。リマスターされたこのリイシュー盤は、間違っても1997年の名盤の「復刻」ではない。順に聴いていくと20年前の記憶が蘇ると同時に、もちろん新たな発見もあり、さらには記憶が修正&上書きされる感覚もあれば、逆に記憶が鮮やかに色づけされる感覚もあるという、過去と現在が複雑に入り組み、揺らぎ、押し寄せてくる、圧巻のリスニング体験を呼び起こす作品なのだ。

そもそも『OK コンピューター』はレディオヘッドのキャリアにおいて非常に特殊な一作だ。前作『ザ・ベンズ』のような古典的なギター・ロックの名作ではないし、次のアルバム『キッドA』のような完璧な新時代を告げたエポックメイキングな一作でもない。当時まさに大きく変貌しつつあった彼らの音楽と詩世界が、そのスピードとカオスの中で過去と未来のギリギリのせめぎ合いを繰り返し、吐き出された歪な傑作が『OK コンピューター』なのだ。

今回のリイシューのタイトルが「OK」と「NOT OK」のダブルミーニングなのも、「1997-2017」とハイフンで繋がれて、それが20年間「続いていた(終わっていなかった)」プロジェクトだったことを示しているのも、『OK コンピューター』がレディオヘッドの過渡期の命題であった証左だ。そしてそれは、あのアルバムがリリースされた1997年という時代性そのものも期せずして象徴していた。

RADIOHEAD / OK コンピューター


それにしても、1997年のUKシーンは本当に面白かった。ブリットポップのバブルが弾け、その後の長きにわたるギター・ミュージックの停滞を呼んだ終わりの年としてのネガティブな評価の一方で、画一性が打ち壊され、新しいアイディアやイノベーションがいくつも生まれた始まりの年としてのポジティブな評価もある。ネガとポジ、終わりと始まりが交錯した年、まさに『OK コンピューター』的な過渡期、端境期の1年間だったのだ。

Radiohead - Karma Police

ここではそんな『OKコンピューター』を含む、1997年のUKシーンを象徴する傑作アルバムを10枚選んでみた。


BLUR / ブラー


1997年のUKロックは、デーモン・アルバーンの「ブリットポップは死んだ」発言と共に、ブリットポップの誰よりも当事者であったブラーが、いち早く、そして明確にその終わりを告げた『ブラー』と共に幕を開けた。
カラフルなメロディとシニカルな歌詞、つまり極めて英国的なマナーを廃し、グレアムのギターはぐっとノイジー&ラフになった本作は、ペイヴメントやベックといった当時のUSオルタナからの影響を多大に感じさせる一作となっているが、何よりも彼らがここで『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』から3枚にわたり築いてきた定型を脱ぎ捨て、まるで二度目のデビュー・アルバムのように瑞々しいギターを走らせ始めた様は鮮烈だった。そう、このアルバムも『OK コンピューター』に匹敵する「終わりと始まりの交差点」だったのだ。

Blur – Song 2


CHEMICAL BROTHERS / ディグ・ユア・オウン・ホール


ブラーやオアシスがそれぞれにブリットポップの幕引きを模索する一方で、そのギター・ミュージックの混乱とはあまりに対照的なブレイクスルーを見せたのがケミカル・ブラザーズであり、プロディジーだった。彼らが1997年にリリースした2枚のアルバムは当時ビッグ・ビート、さらにはデジタル・ロックなんて呼ばれていたが、要するにそれは売れ線の「ポップ」にとらわれ硬直化するロックを尻目に、エレクトロミュージックが肉体性も、ライブの強度も、さらにはポップ・ミュージックとしての精度までも奪い去っていった、あまりにも鮮やかなメインストリームの形勢逆転だった。

The Chemical Brothers – Setting Sun


PRODIGY / ザ・ファット・オブ・ザ・ランド


プロディジーの『ザ・ファット・オブ・ザ・ランド』は、英国内における80年代末からのロックとダンス・ミュージックの相互作用のサイクルすらも突き破り、全英全米ダブル1位という快挙を達成。オアシスの『モーニング・グローリー』ですら成しえなかった、圧倒的な成功だった。
“Firestarter”を聴けば一発で理解できるのは、これはビッグ・ビートやテクノ以前に、何よりもパンクだったということだ。本来ギター・ロックが鳴らすべきだったパンクのカタルシスを、いかに当時のUKロックが忘れ去っていたか、ということだ。
余談だが90年代末、ノエル・ギャラガーが「オアシスでもプロディジーのようなサウンドをやってみるのはどうか」と提案したところ、リアムに「プロディジーって頭にレタスくっつけたやつ?」と言われて諦めた、というエピソードも。

The Prodigy - Firestarter


MOGWAI / モグワイ・ヤング・チーム


1997年のUKシーンで特筆すべき傾向として挙げられるのが、「地方の逆襲」とでも呼ぶべきローカル・バンドの躍進が目立ったことだ。それは大手レーベルが牛耳るロンドン中央集権型のブリットポップへの反逆であり、DIYな姿勢であり、アンチ・イングランドの気運でもあった。
その象徴的な一枚が、モグワイのデビュー・アルバムである本作だ。寄せては返す大波のような轟音と静寂のコントラストで生み出される彼らのポスト・ロックは、ブリットポップとあまりにも対照的だった。ちなみに1997年には同じくグラスゴーからこちらもエポックな一作、ベル・アンド・セバスチャンの『天使のため息』もリリースされている。

Mogwai - Like Herod | Live in Sydney | Moshcam


SUPER FURRY ANIMALS / ラジエイター


そんなグラスゴーのスコットランド勢に対して、ウェールズからの進撃となったのがスーパー・ファーリー・アニマルズのこのセカンド・アルバム。
デビュー・アルバム『ファジー・ロジック』(1996)の頃は「オアシスに続くクリエイションの大型新人」という触れ込みもあり、ブリットポップの枝葉的な捉え方もされていた彼らだが、プログレやサイケデリック、バロックにソフト・ロックと一気にごった煮な多様性と柔軟性を持ち合わせた本作は、彼らがまったく別の幹から伸びた枝であったことを証明した。ブリットポップが失った革新としての「ポップ」は、新たにここで花開いたのだ。


Super Furry Animals - Demons (Live 2009)


THE VERVE / アーバン・ヒムズ


ザ・ヴァーヴの本作は、いくつかの意味で「ズレた」傑作だった。ブリットポップ最盛期の1995年に解散し、ブリットポップ終焉の年に奇跡の大復活を遂げるという時代との逆行も凄いが、かつては破滅的ダーク・サイケの深淵で身投げしかかっていた彼らが、復活と同時にストリングスやピアノを大胆にフィーチャーして作り上げてしまったのが、ザ・ヴァーヴ史上最も、そして唯一のメロディ・オリエンテッドなポップ・アルバムである本作なのだ。
傍若無人に他人を突き飛ばしながらリチャード・アシュクロフトが独りズンズン歩く“Bitter Sweet Symphony”のMVも、回りのギター・バンドがバタバタ倒れる荒野でいきなり鳴った凱歌として完璧だった。

The Verve - Bitter Sweet Symphony


SPIRITUALIZED / 宇宙遊泳


もしスピリチュアライズドのこのアルバムが1995年にリリースされていたら、ここまで商業的にも批評的にも成功した作品にはならなかっただろう。祭りの後の喪失感と厭世感が漂い、そこに世紀末の影がじわじわ迫り始めていた1997年だからこそ生まれ、時代とマッチしたアルバムであり、その点で『OK コンピューター』に近い役割を果たした一作だと言える。
ドラッグとアルコールに頭の先まで浸かりきった狂人時代のジェイソン・ピアースが、失った愛を宇宙の彼方のサイケデリックと足下で歪み滲み出すブルース、そしてロックンロールに託し昇華した、まさに彼自身とUKシーンの終末期が生んだ最高傑作だ。

Spiritualized - Come Together


PORTISHEAD / ポーティスヘッド


ポーティスヘッドやマッシヴ・アタックによるトリップホップは、1994年に最初のピークを迎えている。つまりそれはブリットポップと平行していたムーヴメントということで、たとえばカサビアンのサージが「俺はブリットポップで育った」と言うのも、オアシスとポーティスヘッドが共存していた刺激的な数年間としてブリットポップを捉えているからだ。
そしてトリップホップは1997年の本作によってさらに濃く、暗く深化し、極限の精神状態にあったという当時のベス・ギボンズの身を切るような声の切迫感が、トリッピーなムードの柔さを打ち消す肉体とリアリティを与えている。トリップホップが現在のポスト・ダブステップ、ベース・ミュージックまで脈々と受け継がれるエッセンスとなったのは、本作があってこそだ。

Portishead – Only You


SQUAREPUSHER / ハード・ノーマル・ダディ


最後に選んだスクエアプッシャーの本作は、上記の9枚のアルバムとは意味も、実際の聞こえ方もまったく異なる作品だ。ワープ移籍第一作、現在に至る彼の出発点と言ってもいい『ハード・ノーマル・ダディ』には、20年後の今聴いても「1997年」という時代性がどこにも見当たらない、まるでオーパーツのような「発見された未来」のアルバムだ。
ジャズとブレイクビーツを二本柱に、アナログの限界とデジタルの先入観に挑み続けるトーマス・ジェンキンソンの本作の方法論は、今も、いや今こそ、そこかしこで試されるスタンダードとなっている。でも、本作が1997年にリリースされていたからこそ、3年後に『キッドA』は生まれたのだ。

Squarepusher - Beep Street

(粉川しの)

rockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

最終更新:6/26(月) 21:15
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