ここから本文です

「はま寿司」が急成長! 「かっぱ寿司」を追い越せた理由

6/27(火) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 回転すしチェーン「はま寿司」の成長が目覚ましい。現在の店舗数は472店で、競合の「スシロー」466店、「くら寿司」417店、「かっぱ寿司」341店を抜いて、回転すし業界でトップに立っている。

【はま寿司では“肉寿司”が充実している(左からローストビーフ、炭火焼き牛カルビ、ハンバーグ)】

 つい数年前までは、かっぱ寿司がトップブランドであり、スシロー、くら寿司とともに大手3大チェーンと呼ばれていたが、2002年に開業したはま寿司が加わり今は4大チェーンと並び称されている。

 はま寿司の大きな特徴は、1皿平日90円(税別、以下同)の価格設定。他の大手チェーンが基本1皿100円で提供しているのに対して、10円安い。従って顧客単価は安く、平日なら1000円あればおなかいっぱいになる(土曜、日曜、祝日は1皿100円)。

 また、月に必ず2回のフェアを開催。直近では、6月15日~25日に、「大とろ祭り」を開催し、大とろを1皿平日90円、休日100円で提供した。来店した顧客は漏れなく注文するほどの人気ぶりで、満足度の高さがうかがえた。

 16年度の年間売上高を見てみよう。はま寿司は非上場だが、15年実績で1010億円と発表しており、その後1年間で32店増えていることから、16年は1080~90億円には達していると推測できる。1位はスシローの1460億円、2位はくら寿司の1136億円なので、売り上げで2位のくら寿司を追い抜く勢いだ。

●脱落する王者「かっぱ寿司」

 他のチェーンが好調に売り上げを伸ばし、はま寿司が台頭する一方で、かっぱ寿司は794億円。かつての王者が脱落しつつある。

 17年3月期決算で赤字となって“1人負け”したかっぱ寿司が、食べ放題(平日午後2~5時限定)を一部の店で1カ月間、実験的に始めて起死回生を狙っていることが大々的に報道された。

 しかし、平日にはま寿司へ来れば、1皿90円と毎日お買い得であり、どの時間帯でもかっぱ寿司の食べ放題より安く食事ができる(大食いの人は別として)。

 かっぱ寿司は別料金でビール、ハイボール、レモンサワーといったアルコール飲み放題をうたっており、メインで売りたいネタを厳選した「三陸産生銀鮭」などのフェア商品も別途料金に設定。つまり、今だけお得な価格で赤字覚悟の集客をして、アルコール、フェア商品のような別料金のモノもついでに買わせて利益を出そうとしている。ところが、あまりにも味より量を求める大食い客が集まり過ぎて狙い通りにはいっていないようだ。

●ゼンショーグループのスケールメリットを生かす

 はま寿司は牛丼チェーン「すき家」を核とするゼンショーホールディングスのチェーンだ。平日1皿90円で顧客が納得する寿司が出せるのは、ゼンショーグループのスケールメリットを生かした仕入れと物流網で、コストを下げられるからでもある。

 グループ内には、「華屋与兵衛」という和食のチェーンがあり、鮮度の高い魚の仕入れで連携を取っている。すき家で鉄火丼などを出しているのも、まぐろの仕入れに有利に働いている。

 また、はま寿司のグランドメニューで特筆できるのは、“肉寿司”の充実である。ゼンショーグループは、すき家の他にも、同じ牛丼チェーンの「なか卯」やハンバーグレストラン「ビッグボーイ」といった肉に通じた専門家を持つチェーンを有しており、それらの知見が生かされている。

 ローストビーフ、合鴨、炭火焼牛カルビなどといった、本来200円以上取ってもいいほどの原価率の高いネタでも90円。ハンバーグも肉のうまみとシャリのバランスが取れたすしに仕上がっている。生ハム寿司やから揚げ軍艦もあり、バリエーションも豊富だ。

 ローストビーフに関しては、なか卯で以前にローストビーフ丼を提供していたことがあり、商品開発での意見交換によってできた商品だ。炭火焼牛カルビの甘辛いしょうゆベースの味付けは、すき家で培った牛肉の調理技術に支えられている。

 かっぱ寿司を買収したコロワイドグループにも、「牛角」や「ステーキ宮」のような優れた肉の専門チェーンがあるのだが、食べ放題メニューの片隅に牛カルビ、蒸し鶏、ハンバーグの3品があるだけだ。はま寿司に見られるような顧客を呼べる肉寿司の打ち出しが行われず、ナレッジの持ち腐れとなっている。

●かっぱ寿司とスシローの筆頭株主になった時期も

 はま寿司に来れば誰もが驚くのが、卓上に常備されているしょうゆの種類の多さだ。なんと5種類も用意している。一番多く消費されるのが「はま寿司特製だし醤油」で、あとは「関東風濃口醤油」、「北海道日高昆布醤油」、「九州甘口さしみ醤油」、「まろやかぽんず」のラインアップとなっている。

 その他にも回転レーンに「甘だれ」が回っている。タッチパネルから注文すれば「減塩醤油」も使える。ゼンショーグループは、老舗醤油メーカーのサンビシを傘下に収めており、サンビシの技術によって、はま寿司ならではのしょうゆやタレの開発を実現している。

 「弊社は牛丼でもいろんなトッピングの楽しさを提案しましたが、狙いは選べる楽しさですね。全国展開のチェーンですので、地域によって味の好みが違うことを考慮しました」(ゼンショーホールディングス・広報)とのこと。

 実はゼンショーグループは、07年にかっぱ寿司とスシローの筆頭株主に相次いでなったものの、企業文化の違いなどから短い間にグループから離脱している。当時両チェーンはすでに年商600億円の規模となっていて、02年に設立したばかりのはま寿司は大差を付けられていた。

 そこでゼンショーグループは、はま寿司を育てるよりもM&Aで回転寿司の主導権を握ろうとしたが失敗。一転して、グループの食材や調理の知見を結集していった。09年に平日一皿90円を始めたころは、安いだけが取り柄と言われていたが、次第に商品が充実し、今日の発展に至っている。

 すしの安売りだけでは勝てない。グループ各社に散らばる資源を生かす経営で、はま寿司は躍進しているのだ。


(長浜淳之介)