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磁気ストレージが変わる?原子1個に磁気を記録する技術誕生

6/27(火) 12:10配信

ZUU online

IT技術の更なる活用に欠かせないインフラとして、大規模なデータを高速に分析し、新たな知見を生み出すビッグデータの手法や、技術的な基盤の整備が進んできた。

パソコンやスマートフォンの普及により、取り扱われるデータの量は急激に増加している。企業ではもちろん、個人でも写真や音楽のデータをパソコンやスマートフォンに保存している人がほとんどだろう。それに伴い、データを保存しておく「ストレージ」にも進化が求められている。

現在、ストレージのなかでも原子1個ずつにデータを記録することのできる技術に注目が集まっている。

■磁気ディスクからフラッシュメモリに進化してきた「ストレージ」

そもそも身近なシーンで、どんなストレージが活躍してきたのかまずはみてみよう。最たる例は、かつては大部分のパソコンで採用されていたハードディスクドライブ(HDD)だろう。

HDDは円盤に磁気を記録することでデータを保存する。ディスク上には、磁気を記録できる微細な粒子が大量に並んでおり、その磁化方向を切り替えてデータを記録するテクノロジーが基礎になっている。

他方で、最近ではフラッシュメモリを応用したソリッドステートドライブ(SSD)と呼ばれるストレージも広まってきており、ノートパソコンの薄型化にも貢献してきた。もしかすると、HDDよりも身近なストレージといえるかもしれない。

フラッシュメモリにデータを記録する方法は、HDDディスクへの磁気の書き込みと読み出しとは異なり、フラッシュメモリの最小の記録単位となる「セル」を利用して、データを保存する仕組みになっている。そのセルは電子を保持することができ、セルに貯まった電子によってデータや情報を記録している。

ちなみに、HDDからSSDに進化することで、ストレージ内部の構造も大きく変わってきた経緯がある。HDDは内側に磁気を記録できる円盤を備えていた一方で、SSDでは電子回路に複数のチップが実装された形状をしている。

■次のストレージ技術は原子1個への磁気記録

ストレージの技術そのものは、さらに大きな進化を遂げそうな勢いをみせている。その「究極」の形ともいえるのが、原子にデータを記録する方法だ。

実際、磁気を記録する素子を微細化する研究がかねてから進展してきており、1993年にはすでに単一の分子の磁気を操作可能にする研究成果が公表されていた。さらにIBMが2012年に12個の原子に1ビットのデータを記録する技術を開発したことを明らかにしたことで、磁気データを記録する技術の高度化、微細化が深化してきていた。

その究極形ともいえるのが、単一原子への磁気の記録で、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のFabian D. Natterer氏の研究チームが2017年3月にこの単一原子への情報の記録を実現したことを公表した。

Natterer氏らの発表によれば、ホルミウム(元素記号:Ho)を酸化マグネシウム上に配置した状態で、磁気を記録したりそれを読みだしたりできるという。つまり、磁気を記録する物質の大きさを原子1個の規模にまで極小化させられるという現実的な可能性が示されたことになる。

ただし、ホルミウム原子1個に磁気を記録する技術的な成果がすぐさま、単一原子からなる記録媒体を実現するわけではない。この技術には課題ももちろん多いのだ。

Natterer氏らの研究ではあくまで、真空状態のような極限ともいえる状態での実験だったことに加えて、磁気を記録できたのはごく限られた時間に留まっており、日常的なデータの保存方法として利用するには条件が整っていない。

現時点では、長期間にわたってデータを保存し続ける用途にはまだまだ応用できない。磁気を使ってデータを保存するという点で、フロッピーディスクやVHSビデオなどの磁気テープのように保存するためには、今後のさらなる研究の推進と技術開発が必要となるだろう。(提供:MUFG Innovation Hub)

最終更新:6/27(火) 12:10
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