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『リーグ・オブ・レジェンド』その熱意が実況界を変えると確信! “LeagueU実況解説ブートキャンプ”の現場をリポート

6/27(火) 22:02配信

ファミ通.com

文・取材:ライター カイゼルちくわ

●まずは予習! 学生支援プログラム“LeagueU”とは?
 2017年6月24日、25日の2日間にわたって、ライアットゲームズはPC用オンライン対戦ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、LoL)の学生支援プロジェクト“LeagueU”の一環として、“LeagueU実況解説ブートキャンプ”を開催した。

 これは、大会での実況・解説者を目指す学生『LoL』プレイヤーを招き、プロからノウハウを学ぶセミナー企画。交通費、宿泊費などもすべてライアットゲームズが支援し、学生実況者&解説者に心ゆくまで学んでもらおうというイベントだ。

 もうご存じの方も多いかも知れないが、ライアットゲームズが進める“LeagueU”支援プログラムについておさらいしておこう。

 “LeagueU”は大学、大学院、専門学校、高等専門学校の学生を対象とした『LoL』の一大コミュニティーだ。大学対抗戦などの大会開催や『LoL』仲間を見つけるなどのコミュニティー機能に留まらず、サークル活動開始のための準備やイベント開催への支援も積極的に行なうなど、不慣れな学生の背中を押すシステムが充実している。

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 今回のブートキャンプは、どうしても自己流や模倣に留まりがちな実況・解説のノウハウについて、ライアットゲームズが学習支援として企画したもの。ベテランから直接学び、さらに同じ学生実況・解説者同士の生の交流ができる。社会人になってもなかなか実現できない貴重な場を用意してくれたわけだ。いい時代になったものである。

 ブートキャンプの一日目は、まず見知らぬ出会ったばかりの実況・解説者の各4名をシャッフルし、ふたり一組のチームを結成するところからスタート。

 こうしたレクリエーションを経て、いよいよブートキャンプ本編に突入。1日目は現役ストリーマー・Rainbrain氏が講師として登場した。

 参加者はRainbrain氏のプレイ動画集を、本人を前にして実況・解説。それらを踏まえつつ、実況・解説の心構えをRainbrain氏へ質問を投げかけて学ぶ。

 夕方からは、公式リーグ“League of Legends Japan League”(以下、LJL)の試合をリアルタイムで観戦しつつ、生の試合を教材として各種ポイントを学ぶことができた。

●目からウロコ! ベテランが伝えたい5つのポイント
 1日目から非常に実戦的な内容満載だったブートキャンプ。緊張もほぐれてきたところで迎えた2日目はなんと、いきなり試合の実況・解説を収録してみることに。練習時間はわずか30分。なかなかスパルタなスタートを切った。

 収録終了後、お昼休憩を挟んで午後の講義へ。2日目の講師として実況者のeyes氏と解説者のRevol氏が登場した。LJLやLeagueU大学対抗戦の大会など、『LoL』主要大会の実況・解説を多く担当するベテランだ。

 講義の初めに、講師のふたりが用意したのは5つの“伝えたいこと”。LJLからの提案ではなく、この講義に当たっておふたりがそれぞれの方針に沿って用意した、実況・解説者の“生の声”とも言うべき項目だ。

 ポイントを5つ挙げているとはいえ、時流や環境の変化で大切な要素は移りゆくもの。この5つをベースにして、自分なりに考え抜いてほしいという意図もあるそうだ。以降はおふたりが語った内容を整理していく。


◆ターゲットは誰かを考えること

 これについては1日目でストリーマーのRainbrain氏も触れている。最初に挙げるべき大事なポイントということになるのだろう。

 とくにRevol氏はこのポイントを重要視しているそうで、視聴者層に合わせて(初心者が多いのか、競技者向けなのかなど)単語を選ぶのはもちろん、そのことを実況者と解説者の間で事前にすり合わせておかなくてはならないと言う。たとえば、実況は初心者向け、解説は競技者向けの言葉選びをしていくと、一見役割分担ができているようだが、内容がちぐはぐになってしまう。

 さらに、対象にする視聴者層を“絞る”か“広げる”かを意識することが大事とのこと。単発の大会なのか、継続していく大会なのか。それなら今回の大会だけでなく、次回以降も視聴者が来てくれるように、新規の初心者視聴者さんも引き込んでいくのか。

 難しく思えるが、「1、2割でいいから、今後ここを目指す、と意識するといい」という、現役ならではの具体的なアドバイスももらえた。LJLの試合中にeyes氏が急に初心者向けの解説を始めるのも、新規視聴者の皆さんを引き込むためらしい。

 また、話し言葉の統一のさらに先のテクニックとして、ライバルチーム同士の対戦には早慶戦のような緊張感を含ませる、です・ます口調にすることで公式感を出すなど、おもしろい技についても言及された。


◆放送は、みんなの力で作るもの

 参加者の中には、さまざまな機材やスタッフに囲まれた環境での配信を経験済みの学生もいた。「スタッフに対して“感謝の心”がない実況・解説者は呼ばれなくなる」と、eyes氏は語る。

 多くの関係者が事前の準備を進め、最後のピースをはめて放送を完成させるのがキャスター陣。それはつまり、最後の最後で周りのミス(機材トラブルなど)をフォローできる唯一の存在、ということでもある。

 「30分つないでください!」などとお願いされることもしょっちゅうあるが、「顔に不満や不安を出すのはNG」と、Revol氏も言う。場の雰囲気はキャスターの顔から視聴者に伝わってしまうのだ。

 キャスター陣には放送の顔としての責任がある。トラブルが起きても、場合によっては「ラグとかも起こりますよね!」とぶっちゃけるなどして、やわらかくフォローできるだけでも雰囲気は違ってくるものだという。


◆ふたりの約束事を決める

 参加者の学生たちも、「話す内容が被ったら手振りでバトンタッチする」など、決まりごとを設けてスムーズな実況・解説を心がけているとのことだったが、講師陣の決め事はさらに実戦的だった。

 eyes氏は「好きにしゃべってくれていいけど、集団戦が起きたら必ず割って入ってその結果を伝える。その後はとくに話を振らないけど入ってきてほしい」と、Revol氏にお願いしているとのこと。一方、Revol氏が挙げた決まりごとは「はい、うん、などの相槌は入れない」。しっかりとした絵になる『LoL』放送画面では相槌は不要。半年ほど続けた頃に気づいたそうだ。

 実況・解説のテンポについても、興味深い話が聞けた。ドラフト決定後、その試合において、ターニングポイントになりそうな部分をふたつほど予測し、すり合わせておく。その2点をゴールとして話をつなげ、ときには雑談も挟む。こうすることで、テンポの緩急が自然と保たれる。

 試合中、ずっと真面目な話を続けると視聴者側はダレてしまうもの。テンポの調整には雑談がちょうどいいそうだ。話の途中で実況者が解説者の知識を引き出していき、序盤・中盤・終盤となる場面を決めておくことで、テンポの上げ下げによる緩急がつけやすくなる。

 もっとも、テンポについては基準などはないため、最後は経験がものを言うのだとか。難しく考えすぎるよりも慣れた方が早いらしい。


◆取捨選択した事前準備の徹底

 『LoL』は情報量が非常に多いタイトルだ。仮に試合当日まで2週間あるとしたら何を準備するべきなのか。情報収集のポイントはふたりで分担すること。ムダを削減するために、ここでもすり合わせが重要となる。

【eyes氏の担当】
選手の情報や小ネタ、大会現地の情報、その国のeスポーツ事情など

【Revol氏の担当】
選手の得意分野などのゲーム面の情報

 下調べをする時点で視聴者層を意識するのも重要。初心者に向けるのなら、チャンピオンの知識や流行などについても調べておきたいところだ。LJLのファンだとしても、海外の選手やチームについてはあまり知らない人も多い。事前に情報を蓄えておけば、とっさに話題を出すこともでき、視聴者の興味も引けるからだ。


◆楽しめ!

 「ここで!?」と思うところもあるが、講師のおふたりはこれが最重要だと語る。先に触れた“顔に出る”という点にも共通するが、前述した4つの項目とは異なり、これだけはコントロールしきれない要素だというのだ。

 放送中、言葉に詰まったりするのは人間なのだから当然。eyes氏いわく「ほかの人の実況を観ておもしれーなーと感じたなら、その3倍くらいの感覚でやらないと楽しさは伝わらない」。心の中では「こんなもんかな」と思った瞬間でも、大きく声を出して「これはミッドレーンに来るでしょう!」などと盛り上げにつなげていくのだ。

 「カメラに映っていない間も飛び回っているくらい各試合を楽しんでいる」とはRevol氏の弁。精神状態は言葉に表れるため、前向きな気分でいないと解説がミスへの言及などに偏ってしまう。それは視聴者からしたら嫌なヤツでしかない。

 また、楽しむための独自ポイントを見つけるのも有効だという(eyes氏の場合は相方イジりなど)。Revol氏は状況に応じて単語を使い分けたりなど、自分の技量の成長そのものに楽しさを見出しているそうだ。

 このほかにもさまざまな話題に派生し、講義は大いに盛り上がった。

【話題に上がった内容】
・大会主催側ともNGワードなどについてすり合わせておくとスムーズ
・プロレスラーの方とエンターテイメント意識について話したときに「プライベートもまた仕事」と学んだ
・ふだんからSNSなどできれいな言葉を使っていると仕事のオファーが来る
・タレントのDAIGO氏は電車の乗りかたが美しい

●学生諸氏のすさまじい熱意に驚愕
 緊張のほぐしかたや選手に肩入れしてしまうことへの対策などの質疑応答を経て、いよいよ午前中に収録した実況解説の録画を見直す時間に。講師のeyes氏とRevol氏からアドバイスをもらう鑑賞会が始まった。

 講師ふたりのアドバイスはさすがのひと言。チャンピオンピックの読み合いを解説していた部分で「大会のときにパッチで環境が変わっていることには触れていなかった」など、厳しい指摘が。

 全体的に、チャンピオンの性能や相性に関する解説は多いものの、構成やBAN選択の狙いに触れていないことが多かった様子。また、実況者と解説者の間で取り上げる内容の分担がされていなかったとの指摘も。こういうところに事前のすり合わせと情報収集分担の大事さが出てくるわけだ。

 各チームの実演で講師ふたりがもっとも多く触れたのは、盛り上がりとなるシーンでの“瞬間描写”と“その後へつながる話題”について。

 たとえば、「いやー」、「そうですね」などのつなぎの言葉が増える=場面を区切りたいという心理が言葉に出ていると指摘。とはいえ、全面的に悪いわけではなく、「これでバロンが取れますよ!」など、つぎの盛り上がりポイントに誘導できれば理想的だという。

 テンポやテンションを上げることで視聴者に「すごいことが起こっている」と伝えるという技法についてもおもしろい指摘が。実況者は聞き手、解説者は語り部なので、実況者が解説者に「なんでテンション上がってるのか」を聞くのもアリだというのだ。

 解説者の知識のタンスを開けることにもつながるし、上がり切ったテンポをいったん落ち着け、緩急をつける効果もある。参加者も深くうなずいていた。

 実演講習では、学生たち自ら「いまの自分の解説は、ミスが目立ったことを指摘しすぎていたのでは」など、積極的に講師の意見を求める場面が多かった。ほかにも「実況者のテンポとテンションが上がったら解説者も合わせるべきでしょうか」など、講師側も指摘していなかった部分についても、どんどん踏み込んでいく。

 これは質疑応答の時間でも同じだった。略語の使用について、具体的な練習内容、ワンサイドキルゲームをいかに実況するかなど、非常に細かな点にまで、学生諸氏の目が光っていた。

 学生とはいえ大会での実況・解説の実績もあり、実力は十分。技量のさらなる向上に意欲を燃やす参加者の皆さん。こうした意欲的なところからも、その情熱が垣間見える。

 その情熱に筆者がもっとも驚かされたのは休憩時間中のこと。参加者の皆さんは実演課題の試合のターニングポイントについて改めて語り合うなど、休むどころか講義内容を反芻し、メモを増やしていたのだ。

 その様子を見守り続けてみたところ、ブートキャンプも後半に差し掛かる頃には、仲間が就職でゲームから離れてしまう話のような“不安”や“悩み”が話題に上がることが増えたように思える。

 考えてみれば、こういった実況・解説者の交流の場というのは、社会人になってもなかなかない機会。実況・解説の先輩のみならず同じ立場のみんなに相談したい悩みは尽きないだろう。

 不安や悩みが氷解し、成長の糧に変えられたという点だけを取っても、今回のこのブートキャンプは彼らにとって大きな贈りものになったのではないだろうか。講義で得た知識や心構えを自信に変えていってほしいものだ。

●未来のLJLの“顔”が生まれるか? 意気込みは十分!
 学生実況・解説者の成長や熱意に期待が高まる結果となった、今回のブートキャンプ。正直な話、文中で触れた講義のポイントや学生諸氏の質問の分量は、実際の現場で出たものの5分の1にも満たない。それほどまでに濃密なイベントだった。

 これらを吸収した8名の学生の皆さんだが、これでブートキャンプは終わったわけではない。彼らは中国で開催される学生世界大会“League of Legends International Collegiate Championship”のオンライン配信で実況・解説に挑戦することになる。

 本大会がスタートする2017年7月13日まで、あと2週間ほど。今回のブートキャンプで学んだことを活かし、効率的な情報収集やターニングポイントの予測はできるのだろうか。いや、あれだけの熱意を見た後では、できるに違いないと断言できる。

 ブートキャンプ終了後、講師のご両名には学生8名に対して抱いた感想を、学生8名には今後の意気込みをいただいた。今後の彼らの活動と活躍に、大いに期待していただきたい!


◆講師お二人の感想

・eyes氏
 率直に言うと、ビックリしました。僕が学生の頃なんて、もっとチャラチャラしていたと思うんですけど(笑)。こんなに熱心に、真面目に話を聞いて、すごくメモを取ってくれることに驚きました。
 講義の中で、実況者や解説者にもっと出て来てほしいと少し触れました。LJLにも世代交代は必要だと思いますし。つぎの世代がこうして育っているというのは、ほんと楽しみですね。

・Revol氏
 僕もeyesさんと同じ印象でして、とにかく熱意がすごいなぁと。資料にメモ欄がけっこうあるけど埋まらないだろう、と思ってたんですけど、すごい勢いで埋まってて。
 それに、質問についても事前にしっかり準備してきてくれていたようで、その意欲に驚かされました。LJLの顔がずっと変わっていないというのも、不健全というか新陳代謝がほしいというか……。僕はいつ追い越されてもいいと思いつつやっていますので(笑)。


◆ブートキャンプ参加者8名のコメント
(収録の順番は座席順)

・Vashyronさん(情報科学専門学校)
 今回いろいろな経験を通して、自分の中にあった意識が変わってきました。今後は与えてもらう側から、与える側へうまくシフトしていければと思っています。

・bronze samさん(山梨大学)
 自分の大学にはこうした活動をするサークルがないんですが、自分と同じ境遇の人たちも、一度こうしたイベントに応募して参加してみると、視界がすごく広げられると思います。機会があれば、ぜひ参加してみてください!

・和葉さん(東京アニメ・声優専門学校)
 今回のブートキャンプを通して、伝える側の心構えや、必要な知識を数多く得ることができました。今後に活かしていきたいと思います。
 それと、僕が通っている大学のサークルが中国の世界大会で戦うことになりますので、残りの期間、しっかりと練習にも臨みたいと思っています。応援よろしくお願いします!

・usyaさん(近畿大学)
 勇者という名前に恥じ入りたくなるほど、周りとのレベル差を感じてしまた……。これからは闘争心(あと脂肪も)を燃やしまくって、周りのみんなに負けない、いやむしろ勝ちすぎちゃうというくらいの実況者になりたいです!

・nikori(リクルート)さん(埼玉大学)
 ほかの皆さんからいろいろなコメントなどあると思いますので、私からはこちらをひとつ。eyes&Revolに負けないような実況・解説を目指して、頑張っていきたいと思います!

・Kyonさん(城西大学)
 今回のブートキャンプで、自分のいいところ、悪いところが見つかったので、それを修正しつつ、だれが観ても楽しんで、笑ってもらえるような実況を目指していきたいと思います。

・一色いろは(しゃる)さん(大阪電気通信大学)
 今回のブートキャンプの中では一番ダメダメだったと思うのですが、これからはリクルートさんや和葉さん、bronze samさんにも負けないような解説を目指していきたいと思っています!

・いぇーがーさん(茨城大学)
 この2日間で学んだことを、自分なりに解釈して、自分だけのキャストを作り出していきたいです。そうして今後のキャスターとしての活動の幅を広げて、No.1キャスターを目指します!

最終更新:6/27(火) 22:02
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