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藤井四段、14歳史上最年少で前人未到の29連勝…「神の子」が神様に近づいた

6/27(火) 5:52配信

スポーツ報知

 将棋の史上最年少棋士・中学3年生の藤井聡太四段(14)が26日、東京都渋谷区の将棋会館で行われた第30期竜王戦決勝トーナメント1回戦で増田康宏四段(19)に先手番の91手で勝ち、公式戦29連勝の歴代新記録を樹立した。10代対決を制し、並んでいた1986―87年度の神谷広志五段(現八段=56)の28連勝を30年ぶりに更新した。

【写真】29連勝を達成し、「29」というボードを手に笑顔を見せる藤井聡太四段

 終局後、一瞬の空白。報道陣が殺到する前に、藤井は3秒だけ目を閉じて気息を整えた。「自分でも信じられないです。苦しい将棋もあったので非常に幸運でした」。スチール、ムービー、記者がスクラム状態と化して互いに怒号を飛ばしても、少年は顔色ひとつ変えなかった。

 もしかしたら藤井は永遠に負けないかもしれない―。そんな夢想を抱かせる勝局だった。一進一退の攻防が続き、優劣不明の難解な局面が続く中で突入した終盤戦。藤井は大胆に飛車を切っていく。盤上最強の駒を献上しつつ、角と桂馬という小回りの利かない駒で寄せる神業を披露した。カウンターを食らってもギリギリの安全を読み切り、確信の手順で一気に寄せた。

 今も敗北を知らない。昨年12月のデビューから白星を積み上げ続け、新記録の公式戦29連勝に達した。弱冠14歳の少年が70年以上続く全棋戦の歴史で誰も成したことのない金字塔を打ち立てた。「単独1位になれたのは自分でも特別な感慨。今までと違った喜びがあります」。感慨。中学生らしからぬ言葉を、やはり発した。

 国民が新記録樹立を待望した一日。将棋会館は“藤井劇場”と化した。対局前、タクシーを降りる14歳を迎えたのは拍手喝采の「入り待ち」ファンと、誰かが通報して呼んだパトカーだった。人気アーティストの会場入りを思わせる光景だった。50社150人を超えた報道陣は建物の外へ、さらに敷地の外へとあふれた。1996年、羽生善治7冠誕生の時以来の熱狂が対局室の周囲を覆い尽くした。

 大人たちの喧騒(けんそう)をよそに14歳は遠い未来を見つめている。通学する名大教育学部付属中の授業の一環で、大学教授から人工知能(AI)について学んだ藤井は「将棋で人間がコンピューターに負けたりすると、AI脅威論が出てきたりします。でも、人間と同じ知能を持つかといったら別の話です。コンピューターの方が強くなった時、棋士の存在意義が問われます」。

 史上最年少棋士はコンピューターと自らを比較し、人間として、棋士としていかに生きるかを考えている。「盤上において人間が勝る領域はどこにあるのか、あるいは全くなくなるのかは分からないですけど、コンピューターに関係なく、面白い将棋を指すことは棋士の使命だと思います」

 信じ難い光景だった。会見終了後、将棋会館の駐車場に約300人もの人々が列を成して史上最多連勝者を待った。藤井が姿を現し、横付けされたタクシーに乗り込もうとした時、拍手と歓声が湧き起こった。

 静的だった世界を14歳は動的に変えた。藤井聡太はもう「神の子」ではない。将棋の神様の目の前にいる。(北野 新太)

最終更新:6/27(火) 15:51
スポーツ報知