ここから本文です

井口引退で思い出した前代未聞の「ぜひ書いてください」スクープ

6/28(水) 16:05配信

スポーツ報知

 ロッテ・井口が今季限りでの引退を公表した。翌日の紙面には、ゆかりのある人たちのコメントで彩られたが、総じて尊敬の念がにじみ出ていた。記者もホークスがまだダイエーだった時代に、番記者として接した。クールで格好良くて、華のある選手だった。個人的に忘れられないエピソードもある。

 会社のデータベースを検索し、2002年8月16日付けの懐かしい記事を引っ張り出した。「ダイエー・井口内野手が今オフ、ポスティング・システムでメジャーへ移籍へ」という見出しがついていた。まだ日本人の内野手で、メジャーに挑戦した選手は誰もいなかった。紆余曲折あって、実際にメジャーに移籍したのは04年のオフ。だが、紙面に出た当日に当時の高塚オーナー代行が「約束は守ります」と公に認めて、記者人生で数少ないスクープとなった。

 実はラッキーパンチのニュースだった。井口のメジャー志向が強いことは、番記者なら誰でも知っていた。ホテル暮らしだった高塚氏の元に朝駆けして、朝食をともにした際、単刀直入に聞いた。すると、ポスティングシステムの利用を許可する方針を簡単に認めた上に「ぜひ報知で書いてください」と言う。「書かないで」と頼まれ、ニュースを泣く泣く握りつぶすことはあっても、その逆はその時が初めてだった。当時はドラフトの自由獲得枠制度があり、「狙っている選手に、約束を守る球団であることをアピールしたい」というのが狙いだった。

 その事実を井口の自宅で直撃すると、「高塚さんがそう言うのなら、そう書けばいいんじゃないですか」とあっさり。度量の大きさに驚かされた。井口にとっては何一つプラス材料はなかったはずだが、その後も、嫌みのひとつも言われたことがない。それどころか、沖縄自主トレを取材した際など、「(滞在ホテル敷地内で)ゴルフでもして帰ればどうですか。クラブを貸しますよ」と、ありたがい申し出に甘えさせてもらったこともある。

 「ぜひ書いてください」と、奇跡的なビッグニュースが再び転がり込んでこないものか。12球団最多の番記者がうごめく阪神担当に身を置く今、都合のいいことを強く願う日々だ。(記者コラム・島尾 浩一郎)

最終更新:6/29(木) 3:02
スポーツ報知