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復刻連載「北のサラムたち1」第17回 40年目のSOS 在日帰国者一家の物語(1) 帰国船に乗った日

6/27(火) 10:37配信 有料

アジアプレス・ネットワーク

「朝鮮に帰国したことは、悔やんでも悔やみ切れません」

「新潟を出発した日のことですか?よう覚えてますよ。春の暖かい、よく晴れた日でね。埠頭は見送りの人で溢れてました。あっちでもこっちでも別れを惜しんで泣いたり抱き合ったり。ワシはそんな見送りの人波を見下ろしながら、船のタラップを一人で上って行って甲板に出ました。

甲板も人でいっぱいでね、紙テープを見送りの人に向かって投げ下ろしている様子は、まるで滝のようやった。埠頭で見送る人たちは皆、船を見上げていて、ワンワン泣いている人もようけおりましたわ。船の上でも涙を拭い、手を振って、『ねえちゃーん』とか、『○―』と呼び合って……。

それから、ゆっくり船が岸壁を離れていくでしょ。ブオーという汽笛の音。あれは悲しい音やねえ。銅鑼(どら)の音?それはなかったと思うなあ。

ワシを見送りに来た人は誰もおらんかったけれど、涙が止まりませんでした。新潟の港が少しずつ遠ざかっていって、ああ、これで日本ともしばらくおさらばかと思うと、やっぱり悲しかったね。他の人もほとんど甲板 から離れないで、ずっと、ずっと、だんだんに小さくなる『日本』の姿を見つめていました」

李昌成(リ・チャンソン)さんは、1960年代初めに北朝鮮に帰国した元在日朝鮮人である。帰国したのは22歳の時。岡山県の出身で、関西のある町の養豚場で働いていた。北朝鮮に親戚・知人の1人もいるわけでなく、日本の公立学校に通っていたため朝鮮語を話すこともできなかった。「日本に残れ」という両親兄弟の説得を振り切っての、単身の永住帰国だった。
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