ここから本文です

村上氏VS黒田電気(下)ファンド側勝利の公算は大

6/27(火) 17:03配信

ニュースソクラ

控え目要求で機関投資家票も見込む

 村上ファンド対黒田電気の経営陣。戦いの舞台は29日の株主総会だ。
 
 そもそも、村上氏側とみられる大株主が黒田電気の株主名簿に登場したのは14年の9月で、同12月には5%を超える大量保有の報告が初めてあったという。15年4月には村上氏自身も5%を超える大株主となった。その後も、買い増しを進めていた。

 あれから2年。村上氏側も軌道修正。絢氏を前面に出す戦略を改め、レノ代表取締役の福島啓修氏が表立って出てきている。福島氏はオリックス出身で、C&Iの副社長でもあり、15年当時は絢氏を支えていた人物だ。

 16年3月末の共同保有比率は19.82%となり、17年3月末には35%を超えた。足元では37%超と倍増している。大株主としての存在感は15年当時より圧倒的に強まっている。

 今年の株主提案は定時株主総会にかけられ、1人の社外取締役の選任を求めるもの。具体的には、経済産業省OBで一橋大客員教授の安延申氏を社外取締役にするよう求めている。

 一方で、会社側は取締役6人の選任と補欠社外取締役1人の選任の議案を上程している。いわば現経営陣の再任と、村上ファンドの求める社外取締役の選任をめぐる対決といえそうだ。

 両社の言い分はこうだ。

 レノは5月26日、安延氏の社外取締役就任後速やかに取締役会で(1)他社との経営統合の検討・議論の推進(2)コーポレートガバナンスの欠如の解消(3)今期中の自己株式取得を実施する――との声明を発表した。

 黒田電気の経営権の取得を意味するものではないとして、株主提案に賛成するよう呼び掛けている。

 これに対して黒田電気は5月29日、株主提案に反対する旨を発表。レノの指名する候補者を社外取締役の候補者として追加選任することは株主のメリットにはならないと判断し、株主提案に反対している。株主提案に反対するよう呼びかけている。

 現経営陣も直近の経営指標、例えば自己資本利益率(ROE)だけで見れば、企業価値を向上させたかは疑わしい。14年3月期にROEは10%を超えていたが、直近の16年3月期で5.2%、17年3月期で6.5%(監査なし決算短信ベース)に悪化している。

 一方、配当性向だけで見れば、以前は20%程度だった黒田電気が直近では70%近く引き上げているなど経営方針を改めつつある。

 ただ、外部からはどちらの言い分が適切なのか判断がつかない。いわばどっちもどっちなのだ。株主の利益になるのは現経営陣か、ファンド側か。一通りの理由を示しているものの、十分説明責任を尽くしているとはいえないからだ。

 機関投資家へ議決権行使を助言するサービス会社の意見も真っ向対立している。15年の構図と基本的には同じで、会社提案を支持している意見なのがグラス・ルイス社で、株主提案に賛成なのがISS社。それぞれのポジショントークをしているにすぎない。

 例えば、ISS社は株主提案について「社外取締役1名のみの選任のみであり、取締役会の支配までは意図していないと解釈し、賛成を推奨している。しかし、会社側からすれば、共同株主の保有比率が37%を超えている実質的な支配という観点からは一方的な意見といえる。

 議決権行使サービス会社の意見は運用会社など株式を大量保有する株主の意見を左右し得るため、影響は甚大だ。運用会社の中には費用対効果の観点から、契約するサービス会社の意見に沿って機械的に議決権行使をするところもあるためだ。

 ただ、このような形式的な議決権行使は今年の総会以降は認められなくなる可能性がある。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など巨額の運用資金を持つ機関投資家が中長期的な企業価値向上に向け、投資家利益にかなう議決権を行使するよう運用会社側に求めているためだ。

 資金を受託する運用会社側も一部生保などを除いて、いち早く開示する方針を示している。金融庁が14年策定した責任ある機関投資家の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)に基づく対応で、今年の総会から機関投資家はどのような議決権行使をしたか、個別開示が求められているためだ。

 コードは法令ではないため、運用会社などに対して法的な強制力はないが、GPIFなどの顧客が適切な議決権行使を求めていることもあり、大半の運用会社が従う公算だ。

 どちらの提案への賛否が黒田電気の企業価値向上につながるのか。難しい株主の審判結果は26日午前、大阪市内で開かれる株主総会で明らかになる。

■谷川 年次(経済ジャーナリスト)
大手新聞記者などを経てフリーに。記者歴は約20年のベテラン。
企業不正や調査に関心。国会、金融庁、厚労省、年金、金融、資産運用などに詳しい。

最終更新:6/27(火) 17:03
ニュースソクラ