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石橋社長、「クラシエには3事業が連携できる強みがある」

6/27(火) 18:00配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 石橋康哉クラシエホールディングス社長に聞く(4)

――クラシエホールディングスの薬品、トイレタリー、食品の3事業は、それぞれ競争相手が強力ですね。

 例えば、トイレタリーには花王、ライオン、P&G、ユニリーバなどがあって激戦です。薬品には武田薬品工業を初めとして、外資にもファイザーなどすごいメーカーがあります。

 10年前から「これからは海外だ」と、どの業界でもよく言われていました。しかし私は基本的に「海外はやらない」と言ってきました。小さな規模であちこちに手を広げたら駄目だ。国内に隙間がまだ一杯あるよとね。

 社名を「クラシエ」に一新した10年前は、3事業はそれぞれ200億円から250億円くらいの売上規模でした。明日消えても誰も気付かない程度の規模です。だけど隙間市場なら、経営資源を集中すれば闘えると考えたのです。

 海外から「扱わせてほしい」と言われるようになるまで、国内で頑張ろうというわけです。結果的に、よかったと思います。

――どのような戦略ですか。

 「クラシエ」という冠の下で同じ企業文化の人間が、食品、薬品、トイレタリーの各業界を知っているのが私たちの強みです。互いに連携すれば、よそにできないものを出せます。

 例えば業際の商品をつくるのが一番わかりやすいですが、簡単ではないので、それはじっくりやればいいと思います。

 ただ情報というソフトは、容易に横断的に活用できます。小売店さんと商談するとき、薬品、食品、トイレタリーの業界ごとに提案書の書き方が違います。私たちは「ちょっと見せて」と言えば、お互いに簡単に見られます。

 それぞれがいいとこ取りして提案書を作れば、面白いものができますよね。おカネをかけずに、クラシエらしい独特の提案書を持って行けます。

――小売店側が仕入れ先に求めるのは、売れる商品を提案してくることで、規模は直接関係ないですね。

 お得意先が店に並べたい商品を持っていけばいいんです。相手が何を求めているかを、私たちは3つの業界から同時に聞けます。例えばドラッグストアは、薬品も食品もトイレタリーも置いています。

 うちはドラッグストアさんに、3事業から営業に行きます。その3人が情報を交換すれば、あのドラッグさんは、全体として、こういう方向を目指して、こんな商品を求めているとより正確につかめます。こう提案すればいいのではないかと相談もできます。

 それで3つに分散していた全国の支店を、それぞれ同じ場所に統合しました。これにより、一緒に商談にも行けます。情報が3つの間で回りだしましたので、軌道に乗れば、商品開発にもつながるでしょう。例えば、食品と薬品の業際にある新しい機能性食品とか新しい分野の商品も提供して行けると思います。

――いろいろ考えていますね。石橋さんは、旧経営陣が総退陣して、いきなり経営者になったのですが。

 いきなりですよ(笑)。振り返ってみれば、その時々は、左遷されたとか、バカ野郎とか思うことばかりでしたけれど、僕ほど恵まれたヤツはいないと思います。

 化粧品の営業で入社して、東西両方の営業をやって、支店の人事を都会だけでなく地方でも経験しました。さらに小田原工場と研究所の人事を5年間やりましたから、工場や研究所の人たちは何が動機付けになるのかも、概ねわかりました。その後、カネボウ全体の人事に異動し、繊維事業も知ることができたのです。

 転々として、塞翁が馬ではないですが、結果的に恵まれたなと思います。僕みたいな人間は、あちこち行かせていたら生まれた、突然変異でしょう(笑)。でも本当は、企業は人材を計画的に育てなければいけませんよ。

――若いころから自ら学ぶ姿勢で、やってきたのですね。

 いろんな知らないところを回りましたが、私は人にものを聞くことに全く抵抗が無いんです。工場では「歩留まりって、何?」と。経営者になっても、経理に「決算書のこれは何なの?」とかね。

 知らないのだから、聞くのは当たり前で、恥ずかしいと思いません。今の若い人たちは、聞こうとしない人が多いような気がします。

 若い人たちに「何で尋ねないの。オレなんか聞きまくっていたよ」と言うのですがね。「ネットで調べれば、わかりますから」といっても、人の話を聞いて初めてわかることも多いんですよね。

 聞くことで人物評価もできます。研究所では、研究員に「何をやっているの?」と、専門的なこともよく聞きました。当時、課長クラスやグループ長クラスで、何を聞いても、わかりやすく説明できる人は優秀だなと思いました。その後を見ると、みんな役員になっています。

――話を聞くのは、社員のモチベーションを高めるのにもいいですね。

 アイスクリーム工場で、ラインに流れているアイスクリームを「これ食べていい? うまいのか?」と聞いたら、後で「うまいのかは無いでしょう。自社商品なのに」と言われました。「ごめん、今度は『どのくらい、うまいのか』と聞くからね」と謝りました(笑)。

 現場に行って、みんなと話をするのは楽しいですよ。1月から3月にかけて全国を回って、今年の全社目標を自分の言葉でみんなに伝えます。懇談すると、若い人たちは思わぬことを言うので面白いんです。

 現場で話を聞くと、こちらが伝えたいことがどこで止まっているのか、伝わっていても実行する能力がないのか、組織の問題もわかってきます。

 思いを伝えるには、やはり顔を見ながら話すのが一番いいですね。本社に座っているより、現場に行って、みんなと酒でも飲んで騒いでいる方が、人生楽しいと思いますしね。絶対に。
(石橋氏のインタビューは今回で終わりです)

■聞き手 森 一夫:「わが経営」を語る(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:6/27(火) 18:00
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