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“目の付け所がシャープ”の種を探せ、スタートアップ企業育成に賭けるシャープ

6/27(火) 15:00配信

日刊工業新聞電子版

■鴻海傘下で盛り上がる社内の空気

 シャープは奈良県天理市の研究開発事業本部で、外部のスタートアップ企業を育成する事業に取り組んでいる。台湾・鴻海精密工業の傘下に入ってからは、研究部門といえども収益を生み出すことが求められるからだ。しかし、この事業にはシャープの復活に向けた別の期待も込められている。それはスタートアップ企業の「起業家精神」を社内に取り込む役割だ。

 育成事業の対象は、IoTに関する製品の開発・量産・事業化を目指す企業だ。参加する企業の社長らが、社員寮に10日間泊まり込み「モノづくりブートキャンプ」という研修を受講する。「モノづくりの『てにをは』を学び、製品の量産に必要な『要求仕様書』を作ってもらう」(村上善照研究開発事業本部オープンイノベーションセンター所長)のが目標だ。

 1回の研修で受け入れるのは4―5社。宿泊費と食費を含む研修費は1社2人で計約85万円。秘密保持契約を交わした上でシャープの一線の技術者が指導し、各社がビジネスプランや製品仕様を練り上げる。品質と信頼性を確保する方法などスタートアップ企業には得難いノウハウも教えるという。

 研修後、製品量産の支援を望むスタートアップ企業には「量産支援サービス」も用意する。各社の計画によっては商品企画から工場選定、見積もり評価、量産、品質検査、アフターサービス、廃棄まで広く支援し、契約期間が1年以上に及ぶこともある。

 この育成事業は投資ファンド「ABBALab」(東京都千代田区)の協力を得て、2016年7月から試行的に始め、同10月に本格化した。これまで計17社が参加し、量産に向けて2社を支援中だ。

 「スマートロック(電子錠)」の量産とサービス展開を目指すtsumug(ツムグ、東京都千代田区)もその1社。牧田恵里社長は「蓄積したノウハウを基に、モノづくりの流れと全体像を教えるサービスは他にない」と心強さを感じている。シャープは今後もこの研修を年4回程度開き、収益事業に発展させる考えだ。

 一方、この事業には収益以外の期待も込められている。シャープの研究開発は過去、液晶テレビなど主力製品向けの技術に重きを置いていた。このため新分野の技術に対し、事業化のためのリソースが投じられにくかった。

 ただ、経営危機を経て鴻海傘下に入った今は“目の付け所がシャープ”と言われる独自の製品や事業への挑戦を後押しする空気が生まれている。研究開発事業本部も新事業開発の取り組みを始めている。

 育成事業にも「社内の技術者がスタートアップ企業の情熱に触れ、それを社内に取り込む」(村上所長)という期待がある。起業家精神を再び社内に醸成し「小規模でも利益の高い事業を始める風土を作る」(同)のが狙いだ。