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大槻ケンヂ、「30代の迷走力」爆発!特撮&電車の過去6作品再発に際し男の30代を語る/インタビュー1

6/28(水) 12:15配信

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■大槻ケンヂ/特撮『オムライザー』『夏盤』『綿いっぱいの愛を!』・電車『'0年代の電車3TITLES』インタビュー(1/3)

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大槻ケンヂの特撮と電車(筋肉少女帯再始動頃にどちらも休止したが、その後また動き始めて現在に至る)、その6作品が再発された。特撮は4,5,6枚目、2004年~2005年リリースの『オムライザー』『夏盤』『綿いっぱいの愛を!』の3枚にそれぞれボーナストラック1曲を追加し、リマスタリングしたHQCDで6月28日リリース。電車の方は、2001年の1st『電車トーマソ』と2002年の2nd『勉強』、そして2005年のライブアルバム『電車英雄』の3枚を1パッケージにして、すでにリリースされている。どちらも筋肉少女帯が活動凍結していた00年代前半から中盤にかけて、大槻ケンヂは30代の頃の作品。この時期のこの2バンドはどのような意志で動いていたのか、どのような音楽を生んでいたのか、それらを今再び世に問うのはなぜなのか、などなどを大槻ケンヂに訊いた。というか、訊く前に自らしゃべってくださいました、ふり返れば「もう30年ぐらいずっとそう」と言っていいくらいの、昔も今も鉄板の語り口で。作品を未聴の方、インタビューだけ楽しむんじゃなくて、ぜひこれらの音源に触れていただければ幸いです。触れる価値、十二分にあるので。
(取材・文/兵庫慎司)

この6枚に、僕の30代ってものが、ぎっしり詰まっている感じがしますね。
それはどういう時代だったかというと、迷走の時代。

──このたびの特撮と電車の再発がどんなふうに決まったのか、教えていただけますか。

大槻ケンヂ:特撮も電車も、リリースした会社が──当時の僕の所属事務所だったんですが──もう存在しなくて。作品の権利が宙に浮いてる状態だったんですね。それをなんとかしましょうというので、徳間さん(徳間ジャパンコミュニケーションズ。現在筋肉少女帯が所属しているレーベル)が、間に入ってくださって。もう手に入らないので、ネットとかで値段が高騰していて、それもよくないなあというので。

──電車、今聴き直すとすごくおもしろいんですけども──。

大槻:おもしろいですよねえ。

──始めた頃のことは憶えておられます?

大槻:電車は、僕が筋肉少女帯をお休みしていて、ソロでツアーに出たりしていた時に、そのメンバーが、ベラ(石塚”BERA”伯広/ギター)、ポンプさん(小畑ポンプ/ドラム)、サトケンさん(佐藤研二/ベース)の時があったんです。その感じがとてもよかったので……日比谷の野音でSIONさんなどが出るイベントに誘われたので、じゃあそのメンツでやりましょうと。

その頃、昔で言うGS的な、東映プログラム・ピクチャー的なものというか、ロマンティックでアングラな、昭和歌謡ムードのあるものをやりたいなと思っていたんでしょうね。それで女装してやったんですよ、俺ひとり。灰野敬二さんみたいなカツラをかぶって、黒いロングドレスを着て、靴は事務所の女の子がガムテで黒いハイヒール風にしてくれて。

それで始めたインディーズ・バンドなんですけど……電車と特撮、だいたい同時期じゃないですか。この6枚に、僕の30代ってものが、ぎっしり詰まっている感じがしますね。それはどういう時代だったかというと、迷走の時代だったと思います。女装して歌ったあとは、頭を剃って、横山やすしさんみたいなマドロスの格好でライブをやったりもしてたんですよ。特撮でも、大きな天使の羽を背負ってみたり、袈裟を着てみたり、タイのお坊さんの格好をしてみたり。果ては、全身に金粉を塗って、写真を撮ったりとか。

今にして思うとね、あれは迷ってたんだろうなと。僕、非常に病んでいた時代は、20代の後半でして。それをやや、今で言うとうつヌケしたぐらいの頃が、30代の最初だったんですよ。だから、精神的にはヤバい感じではなかった。ただ、男30代というものは、誰も彼も迷走するものだと思うんですよ。まだまだ身体は動くし、でも20代のキラキラした若さはないし。

まわりを見渡せば……当時で言うと、ITとかの出始めかな。ベンチャービジネスで巨万の富を得ている者もあれば、いまだ深夜のコンビニのバイトをやっているヤツもあり。しかも僕個人としては、20代が非常に……22歳でデビューして、24歳でもう武道館に立って、そのあとタレント時代みたいなのもあって、作家もやって。ほんとにジェットコースター人生だったんですよ。で、筋肉少女帯をストップさせて、さあこれからどうしようという時に、働き盛りの30代だった。

特撮を始めて……筋肉少女帯とは全然違うものをやろうとしている、というところで、自分もどうしたらいいのかわからない。電車も始めて、さらにわからなくなっていく。もういろいろ試行錯誤していって。それを言葉にすると、迷走だと思うんです。ただ! 今この6作品を聴いて強く思ったことは、迷走というのは間違っていない!っていうことですね。特に表現をする人、ミュージシャンとかアーティストは、迷走の時代はむしろあった方がいいと思います。迷走していなければ作れなかった作品っていうのは、絶対あるんですよ。まさにこの6作品は、迷走というものすごいパワーが作らせた、すばらしい作品だと。

このタイトルで新書を書こうかなと思うぐらいなんですけど……『老人力』とか『鈍感力』とかあるじゃないですか。『力』を付ければなんでもいいのかっていうね(笑)。あれです。はっきり言いましょう。『迷走力』です! 。この6作品は、僕の30代の『迷走力』が爆発してますね。そこがすばらしいと思います。どんなアーティストにもあるじゃないですか、「この人、急にどうしたんだろうな?」っていう時期が。そういえばフジ・ロックにトッド・ラングレンが来て(2015年)、DJときゃりーぱみゅぱみゅみたいなダンサーふたりを連れて、とんちんかんな歌を歌ってたじゃないですか。あれだけのキャリアがあって、迷走できるって偉大だな、と思いました。

キング・クリムゾンで言うと、なんでもクリムゾンに例えるんだけど(笑)80年代のクリムゾンは……やっぱり70年代のクリムゾンを好きな人からすると、「ロバフリ、迷走してんじゃね?」っていう気持ちがあったんです。でも今になると、80年代のクリムゾンがあったからこそ、00年代のヌーヴォメタル期もあるんだ、80年代のクリムゾン、間違ってないよってなってるわけですね。

それが詰まってると思うなあ、この時期の電車と特撮には。僕は、10代の迷走じゃないですからね。30代で迷走するところがよかったなあと思います。



◎特撮
大槻ケンヂ(Vo)、NARASAKI(Gt)、三柴理(Piano)、ARIMATSU(Dr)
◎電車
石塚"BERA"伯広(G)、大槻ケンヂ(Vo)、小畑ポンプ(Dr)、佐藤研二(Ba)