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85歳巨匠、山田洋次監督の意外な素顔

6/28(水) 13:53配信

スポーツ報知

 山田洋次監督の映画「家族はつらいよ2」(公開中)が、このほど観客動員数75万人を突破し、好調だ。ヒットを連打し続ける85歳の名匠を突き動かすのは、強い挑戦願望と少年のような好奇心。そして、取材を通して分かるのは、意外とおちゃめな素顔の持ち主だということだ。

 ―今作で孤独死や無縁社会を扱った山田監督。幼いときから、よく笑う子供だったそうですね。

 「昔からお葬式、お通夜だの、笑っちゃいけないときに、おもしろいことが起きるというかね。悲しいときに、おかしみが湧くことってあるのね。人の葬式で思わず吹き出したくなったりする。子供のときからずいぶん経験してきたことなのね」

 ―死んでしまう役を演じた小林稔侍さんが、ひつぎの中で焼かれる寸前のシーンまで出てくるので驚いた人は多いと思います。

 「無縁社会の『死』という重い現実を前にして、笑ってはいけないけれど、思わず観客が笑う、それをどうにかして描けないか。ずっと思ってきたのね。大きな挑戦でしたよ。最初はひつぎに故人の好物だったギンナンを入れ、それがパンパンはじけるところまでは決めていたけれど。思い切って焼かれる寸前の顔までうつしちゃった。その方がいいんじゃないか。やってみようと思ってね。どんな反応になるか心配だったけれど、お客さんの笑い声を聞いてホッとしましたよ」

 ―映画は、高齢者の運転免許の返納も、ひとつのテーマ。スタッフによれば、監督も免許を持っておられる、とのこと。返納されたのでしょうか。

 「う、うん。僕は実は返してないんですよ。でも、もうほとんど運転しないからね。昔はずっと乗って運転してましたよ。返納するのが悔しいから、しないだけでね。今でも、運転しようと思えばできるぞ、というのを持っていたいんだろうね」

 ―地方に住む人の車の必要性も語っておられます。

 「地方の人にとっては免許返納は、過酷です。無人運転の車は、老人のためにこそ早く提供すべきでね。例えば80歳を過ぎたら、そういう装置の付いた車に乗らないといけない、とか。そういう法律が早くできれば、と思うのね」

 ―作品を撮るたび、興行成績が気になると思います。プレッシャーにどう向き合っているのですか。

 「松竹の誰に聞いても、『大丈夫だよ、安心しなさい』と言ってくれる人なんていないからね(苦笑い)。興行って水もの、と言うけれど、本当に分からないのね。これだけ映画をつくってきて、分からないというのも変かもしれないけど。でもそれこそが、映画なんだろうねぇ」

 ―最近、ずっとひげを伸ばされています。何か心境の変化や理由があるのですか。

 「ははは。特に理由はないんですよ。たまたま。そらずに、そのままにしていると、こうなっただけですよ。食べるときも、そんなに邪魔にならないし。『みっともない』という人もいるし、『いいよ』という人もいるね」

 ―監督は、常に広範囲にアンテナを張って好奇心おうせいです。最近、「うんこ漢字ドリル」が子供たちに大人気です。

 「(実物を見ながら)ほぉ~。ほぉ~。これを書いてる著者がいるのかな? (ドリルをあちこちめくり著者を探しながら)ほぉ~。ちゃんと作者が出てるね」

 ―もしかしたら「うんこを使って漢字を覚えるとは、けしからん」と言われるかと思いました。 「子供ってうんちの話が好きなんだよね。うんちって人間にとって一番分かりやすい悲劇でしょ? 『おいしい、おいしい』と言って食べたものが、臭くて汚いものになるってことだからね。しかも、その仕掛けが、自分の体の中にあるんだから。本当に不思議だよ。『家族は、うんこね』という言葉をキャッチフレーズに使えないか、と真剣に考えたこともあるほどですよ」

 ―いろいろ興味深いお話、ありがとうございました。(構成・内野 小百美)

最終更新:6/28(水) 19:21
スポーツ報知