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復活を遂げたメル・ギブソン、信念を貫いた『ハクソー・リッジ』を語る

6/28(水) 12:00配信

ぴあ映画生活

差別発言やDVでスキャンダラスな話題をまいたメル・ギブソンが『ハクソー・リッジ』で見事に監督の座に復帰した。本作は、今年のアカデミー賞で作品賞&監督賞ほか6部門にノミネートされ、録音賞と編集賞を受賞。沖縄戦線の激戦地“ハクソー・リッジ”こと前田高地で、決して銃を取ることなく、ひたすら人命救助に奔走した実在の衛生兵デズモンド・ドスのその驚くべき信念を描き出している。

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「戦争は、人間を動物のレベルにまであっという間に引き下げてしまう。その中で、デズモンド・ドスだけは人間性を失わないどころか、人間としての最高の美徳を示した。彼は味方に限らず、日本兵だって助けた。それも銃に一切触ることなく、戦火をかいくぐりながらだ。なぜドスはそんなことができたのか? 彼には信仰という強い信念があったからだよ。私はそんな彼に絶対のヒロイズムを見つけ出したんだ」

これまで俳優として『マッドマックス』などでクールなアンチヒーローを演じ、オスカーに輝いた『ブレイブハート』では監督・俳優として実在したスコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスを描き、自らも演じたメル・ギブソン。ヒーローについては一家言あるだろう彼がドスには完全降伏。「地獄のような恐怖を無視できるなど、ヒーロー以外の何者でもない。しかも実在の彼はそういう英雄的行為をひけらかすことも一切しなかった。極めて謙虚な人物だったんだから!」と熱く語ってみせる。

映画は、ドスが奔走する“地獄の戦場”をこれでもかと映し出す。その激しさ、凄まじさは数多の戦争映画を軽く凌駕するほど。果たしてここまで描く必要があるのかと思う声に対してギブソンは、はっきりとこう言ってみせる。「こんなところ、誰だって1秒たりともいたくないと思って欲しかったからだ。そうすることで強烈な反戦のステートメントになる。私にとって、それこそが重要だった」

それこそが、ギブソンの“信念”。ちなみに、ドスに扮しオスカー主演男優賞にノミネートされたアンドリュー・ガーフィールドについては「あの世代にはひと握りの素晴らしい役者がいるが、まさに彼はそのひとり。アンドリューも信念を持っているからこそ、ドスを理解することができたんだと」と拍手を送る。
 
信念を持った実在のヒーロー、信念を理解できる役者、そして信念を貫いた監督。素晴らしい映画が生まれた理由は、この三位一体にある。


取材・文:渡辺麻紀

『ハクソー・リッジ』
TOHOシネマズ スカラ座ほか、公開中

最終更新:6/28(水) 12:00
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