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GLIM SPANKYが野音で示したロック、異彩を放つ世界観で魅了

6/28(水) 12:01配信

MusicVoice

 【レポート】松尾レミ(Vo&G)と亀本寛貴(G)によるロックユニット、GLIM SPANKY(グリムスパンキー)が6月4日に東京・日比谷野外大音楽堂で、6月17日に大阪城音楽堂で『野音ライブ2017』を開催した。ロックを、楽曲だけでなく、映画や文学、ファッションを含めて総合的に表現していくことを主眼に置く彼ら。取材した4日のこの日もお洒落に、且つロックに、彼らなりの世界観をみせ、観客を魅了した。アンコールでは改めて松尾が「いろんなロックの引き出しを日本に作っていきたい」と決意表明した。

■それぞれお気に入りのロックTシャツ

 会場がある日比谷公園では『オクトーバーフェスト』が開催されており、陽気がいいこともあって、周辺はビール片手に楽しむ人たちでごった返し。そんな賑わいの中を抜けるのだから、自ずと高まる活気。そんな高揚した気持ちで野音へ足を踏み入れると、通常のロックバンドのライブとは少しばかり異なる雰囲気に気づく。

 ライブ中に亀本寛貴が「カッコいいTシャツを着てる人が多い」、松尾レミが「それぞれ、自分なりのオシャレをキメてきてくれるから、毎回ここからの景色が楽しみでしようがないです」と口にしていたが、洋楽・邦楽問わず、お気に入りのロックTシャツを身にまとった人が驚くほど多い。もちろん、GLIM SPANKYのTシャツもたくさんのオーディエンスが着ている。だが、言ってしまえばフェスのような大らかさがあるのだ。

 加えて、年齢層もかなり幅広い。勝手なイメージで20代が中心かと思いきや、10代から50代や60代まで、ロックを存分に噛み締めてきた世代までもが詰めかけている。早々に指定席は完売し、後方立ち見席も販売されたのが素直に頷ける状況だった。

■サウンドで直球勝負

 定刻を過ぎると、ゆったりとした佇まいで姿を現し、そのままどっしりと「アイスタンドアローン」を鳴らしてライブはスタート。ソリッドで奥深いロックンロールナンバー「E.V.I」、その一音一音にオーディエンスが聴き入り喝采を送った「時代のヒーロー」と続き、松尾のしなやかでしっかりとした芯のあるボーカルでいいドライブ感を生み出しつつ、落とすところはしっかり落とすという見事な緩急を見せつけてくれた「褒めろよ」という流れで会場の空気をしっかりと掴む。

 ここでひと呼吸を置くかと思いきや、立ち止まることなく、次々と曲を投下。亀本のギターに松尾が合わせ、2人の音が絡み合って熱狂の渦を巻き起こした「ダミーロックとブルース」、松尾の歌い出しが崇高なムードを作り、必要最低限の音で大きなスケール感を描いた「闇に目を凝らせば」ではまさに集まった3000人の想いがステージに注がれる。言葉で補足することなく、サウンドのみで勝負を展開。決してそれのみが正しいというわけではないが、そのスタンスや心意気も実に力強い。表現者としての気概を感じる部分だ。

■野音のシチュエーションにもマッチしたセレクト

 中盤に入り、松尾がアコースティックギターを持ち披露した「NIGHT LAN DOT」。切なさが心を打ち、その世界観に想いを馳せる。サポートも含めた5人の音が共鳴してから入り、客席から大きなハンズクラップが起こった「MIDNIGHT CIRCUS」、ステージからリズム隊が捌け、「お月様の歌」をシンプルに優しげで甘美な声を響かせたところでようやく小休止。

 改めて松尾が集まったオーディエンスに感謝の意を述べ、「結構前から天気予報を調べてたんだけど、朝起きてカーテンを開けたら、よかったー、って」と胸をなでおろしたエピソードを紹介する。そこから、「みんなで口ずさんで堪能できる曲をやろうと思います」と松尾が投げかけ「風に唄えば」を披露。オーディエンスが大きく手を左右に振り、なんだか顔がほころぶ温かさに包まれた同曲は絶妙な軽やかさを携えて広がっていく。この木々に囲まれた野音のシチュエーションにもマッチした秀逸なセレクトだったに違いない。

 その後も意欲的な追撃が続き、亀本が強烈なギターソロを炸裂させ、サビでは大合唱も発生した「NEXT ONE」は端然としたエネルギーが凄まじく、思わず後ずさりしそうになるぐらいの熱が放出されていくのだ。

■シガーボックス

 また、この日、最も客席を揺らしたのは「怒りをくれよ」だった。序盤からオーディエンスは大歓声をあげ、盛大なコールをステージへ向ける。強烈にアジテートするリリック、ドライブ感満載のサウンド。メロディとリズムの噛み合い方も非凡。オーディエンスが狂喜乱舞するのはわかりきったことではあったが、それを間近で体感するとやはり格別であった。

 そして、亀本が「次の曲は暗くなるのをイメージしてたから、5分だけ待とうか」との言葉を口にする。そのなかで松尾が、本日初お披露目であり、次の「夜風の街」でどうしても使いたかったという、シガーボックスで作られたギターについて話し出す。本物のシガーボックスを輸入し、手練の職人によって制作されたこのギター。愛情たっぷりにその想いを語り、スッと溶け込むような純真な歌声を響き渡らせる。

 松尾は「次が最後の曲です。早いですよね。今日のセットリストは今までいちばん長く作ってあるんですよ。持つかな、と思ってたけど、あっという間でしたね」とライブの感触を語ってから、薄暗くなってきた野音に響かせたのは「美しい棘」。オーディエンスはその音を噛み締めながら気持ちよさそうに体を揺らしていた。

■決意表明

 アンコールでは、ワンマンに集まってくれたオーディエンスに再び謝辞を述べてから、松尾が凛とした立ち姿からひとつひとつの言葉に気持ちをこめて「ロックっていうと、激しいとか反発とか、固定概念があって。でも、その下には平和があり愛があり希望がある。いろんなロックの引き出しを日本に作っていきたいと思ってGLIM SPANKYはやってます」と意思表明。その想いに大きく頷き、万雷の拍手と声援を送るオーディエンス。美しい関係性が見て取られた。

 そこから、まさしく決意の歌である「大人になったら」、激しく照らされるライトを背に、イントロから攻めまくり、スリリングな空気をまとった「ワイルド・サイドを行け」を放つ。ギターをかき鳴らしながら客席の隅々まで視線をやる松尾と亀本。その2人の様子は充実感に満たされていたと断言できるほど躍動していた。

 ライブがすべて終了した後、客席をバックに写真を撮ろうとする際の「私の写ルンですとも撮っていいですか? ちょっと取ってきます」という松尾の無邪気な振る舞いもあり、さらに皆が笑顔でいっぱいになった思い出の瞬間を1枚の写真におさめ、麗しい宴は幕を閉じた。

(取材=ヤコウリュウジ)

最終更新:6/28(水) 12:01
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