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学生の3分の2が新興国の中堅官僚、日本産業界との接点

6/28(水) 19:00配信

ニュースイッチ

政策研究大学院大学・田中学長に聞く

 政策研究大学院大学は学生の3分の2を新興国からの中堅官僚が占める。日本で行政運営や産業戦略を学び、母国に戻って政策に生かす。国際通貨基金(IMF)やアジア開発銀行(ADB)などの奨学金を得て学びに来る逸材ばかりだ。企業人にとっては新興国官僚と人脈を築くチャンスでもある。新学長には国際協力機構(JICA)前理事長の田中明彦氏が就任した。大学運営と海外戦略を聞く。

 ―JICAの前理事長として政策研究大をどう評価しますか。
 「日本の政府開発援助(ODA)は相手国の自助努力を重視してきた。ただ技術や設備を与えるのではなく、相手国が『自らのプロジェクトだ』と考えないと身にならない。ODAのパートナーとなる現地官僚を育てるのが政策研究大だ」

 「学生の3分の2が新興国からの中堅官僚で、残りが日本の中央省庁や地方自治体の官僚だ。日本と海外の幹部候補生が肩を並べて学んでいる。教育への評価は高く、タイやベトナム政府が政策研究大に幹部研修を依頼している」

 ―研修費用は相手国の負担ですか。日本の産業界との接点は。
 「相手政府の予算で行政府の幹部候補や幹部が学びに来る。ベトナムは副大臣級の幹部が2013年から毎年研修している。政策研究大の卒業生の発案で実現した。研修では政策運営の現場や産業界との連携例を教える」

 「企業は視察の受け入れだけでなく、中堅社員を政策研究大で学ばせる方が有益だろう。官僚の考え方や政策プロセスを学びつつ、実際に現地幹部との人脈を築ける。新興国市場を開拓する際に現地と政策のすり合わせをしやすくなる。ODAのパートナーにはインフラやITなどの技術畑出身者が多い。企業の技術者が海外の社会課題や公共政策を学ぶとキャリアが広がるだろう」

 ―今後、取り組みたいことは。
 「留学生と日本人学生へのカリキュラムを融合させる。日本人は1年間で修士課程を修了するため、通年で勉強する。夏休みなどがない」

 「ただ英語で教えると消化不良を起こしかねず留学生向けの講義と分けている。イベントなどから始め、時間をかけて融合させたい。研修はアフリカなどに広げたい。費用負担など相手国の事情に合わせて進めたい」

【略歴】
田中明彦(たなか・あきひこ)77年(昭52)東大教養卒、81年米マサチューセッツ工科大学大学院博士号取得。82年上智大学非常勤講師、83年東大助手、84年助教授、98年教授、09年副学長、12年JICA理事長、15年東大教授、17年から現職。埼玉県出身、62歳。

<記者の目>
 政策研究大の留学生の質を高めているのは国際機関からの奨学金だ。留学生は、世界銀行(WB)などの厳しい審査を経た奨学金を得て、日本に学びに来る。企業人にとっても世界の逸材と切磋琢磨(せっさたくま)できる環境は魅力だろう。製造業は進出国の現地幹部候補を政研究大で育てれば、国策と経営戦略のすり合わせの現地化につなげることができる。
(日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

最終更新:6/28(水) 19:02
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