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ジュニパーが「Cloud-Grade Networking」発表、その意味とは

6/29(木) 11:00配信

アスキー

ジュニパーネットワークスが包括的なネットワークビジョン「Cloud-Grade Networking」と、それに基づく新製品/サービス群を発表した。同社のAPAC CTOにその意図や狙いを聞いた。
 ジュニパーネットワークスは6月29日、通信事業者やサービスプロバイダー、企業と幅広いターゲットを持つ包括的なネットワークビジョン「Cloud-Grade Networking」と、そのビジョンに基づく新製品/サービス群および機能強化を国内発表した。
 
 米ジュニパーのジュン・シー氏は「変革をリードするために数年前から戦略的投資を行い、取り組んで来たものが形になった」と語る。Cloud-Grade Networkingとは何なのか、それに基づいてどんな製品が発表されたのか、同氏に詳しく聞いた。
 

Cloud-Grade Networkingを構成する4つの「原則と哲学」
 ジュニパーによれば、Cloud-Grade Networkingは「キャリアグレードの信頼性とカバー範囲、エンタープライズグレードのコントロール性と利便性に基づき構築され、クラウドレベルのアジリティ(俊敏性)とスケールを提供する」ネットワークである。具体的には、次に示す4つの「原則と哲学」(シー氏)をベースに構成される。
 
 1つめの「Everywhere Networking」は、あらゆるソフトウェア/ハードウェア/クラウドの上で動作するネットワークであることを意味する。従来のネットワーク機器ではソフトウェアとハードウェアは不可分のものだったが、テクノロジースタックの分離(disaggregation)を推進することで、どんなハードウェアでも、どんなクラウドでも同様のネットワーキングを可能にする。
 
 「Self-Driving Network」は、その名のとおり“自動運転”で稼働するネットワークである。トラフィックの変化を自ら察知し、それに即応するとともに、アナリティクスと将来予測に基づく事前対応能力も持つ。
 
 「Software-Defined Secure Network(SDSN)」は、ネットワークに接続されたすべてのコンポーネントを活用し、単一のポリシーに基づく、ひとつの“セキュリティアンブレラ”として全体をカバーするネットワークだ。
 
 最後の「Platform First」は、すべてのネットワーク構成要素を、拡張性を持ち長期活用が可能なプラットフォームとして構築するというものだ。ベンダーロックインを防ぎ、イノベーションを加速するための、プラットフォームのオープン性という要素もここには含まれる。
 
 これら4つの原則は、たとえばSDSNや運用自動化のように、すでに提唱、発表、あるいは製品やソリューションとして提供されてきたものも含まれる。したがってCloud-Grade Networkingは、ジュニパーがこの数年間で個別に推進してきた取り組みをひとつに統合し、あらためて今後のジュニパーが進む方向性を包括的に指し示す“ネットワークの理想像”だと考えてよいだろう。
 
ネットワークの自動運用化などを目指した新製品/サービス/機能強化
 今回は、上記4つの原則それぞれに対応する新製品/サービス、機能強化も発表されている(このうち国内発表済みのSDSN機能拡張については割愛する)。
 
 まずはコアルーターの「PTX10000シリーズ(PTX10008/10016)」だ。PTX10008の場合、13Uサイズで最大24Tbps(100GbE×240本)と、従来製品比(PTX5000)でおよそ3倍の収容能力を持つ。
 
 ただしシー氏は、PTX10000では大容量、省スペースを実現しているだけでなく、「ユニバーサルシャーシ」を採用している点が大きな特徴だと語った。コアネットワーク向けのPTX、データセンターネットワーク向けのQFX、エッジネットワーク向けのMX(将来提供予定)を共通のシャーシで提供するもので、ラインカードの交換だけでまったく異なるユースケースに対応する。
 
 これは、Everywhere Networking原則に基づくテクノロジースタックの分離(ここではシャーシとラインカードの完全な分離)によって実現したものだと、シー氏は説明した。また、コア/データセンター環境間でオペレーションを共通化できるメリットもあるという。
 
 「PTX10000は、単なる新製品ではなく『新しいアプローチ』の発表だ。コアネットワーク環境において、従来は不可能だったコンパクトな製品を実現した」(シー氏)
 
 また、「Network Infrastructure Test Automation (NITA) 」と「Event-Driven Infrastructure (EDI)」という2つのプロフェッショナルサービスを提供開始することで、顧客のSelf-Driving Network実現を後押しする。
 
 シー氏はまず、完全なSelf-Driving Networkの実現までには大きく4つのステップがあると説明した。第1ステップ(Day 0)は、プロビジョニングなどの自動化ツールを導入し、人間がそれを実行する「ヒューマンドリブン」な段階。第2ステップ(Day 1)は、ネットワークから取得したテレメトリデータに基づいて、あらかじめ人間が設定したルールベースのアクションを実行する「イベントドリブン」な段階である。
 
 続く第3ステップ(Day N)になると、データアナリティクスや機械学習の技術を用いて、人間がより高度な判断をできるよう支援する。そして最終的なステップ(Day N+1)では、ネットワーク側が人間のやりたいこと(意思)を理解し、それに合わせて自己判断とアクション実行を行う「インテントドリブン」なネットワークとなる。
 
 2つのプロサービスのうち、NITAは上述の「Day 0」実現に向けたもので、ネットワークの設計、導入、テスト、監査という一連のライフサイクルの自動化を支援し、オペレーションを簡素化する。このNITAは、日本の大手通信事業者が採用したとシー氏は紹介した。
 
 もう一つのEDIでは、「Day 1」のテレメトリデータに基づくルールベースの自動運用化への取り組みを後押ししていく。これについては「ITワークフロー自動化の考え方を、ネットワークのオペレーションにも適用するものだ」と説明した。
 
 また、既存製品であるWAN向けSDNコントローラー「NorthStar Controller」の機能強化によって、WAN環境からリアルタイムにテレメトリデータを取得、分析、モニタリングできる環境も整った。これも上述のSelf-Driving Network実現に向けたものであり、「こうした機能を持つWAN SDNコントローラーはほかにない」(シー氏)という。
 
 Platform Firstアプローチに基づく発表としては、Junos OSの機能拡張による「Junos Node Slicing」がある。これは、単一の物理ルーティングインフラをマルチテナント化し、複数の独立したインスタンスを運用できるというもの。これにより、複数のサービス管理者が個々にネットワークをコントロールし、より効率的かつ柔軟な運用ができるようになる。
 
通信事業者でもクラウドプロバイダーでも進む方向性は同じ
 シー氏は、Cloud-Grade Networkingがターゲットとする顧客層は、通信事業者、クラウドプロバイダー、エンタープライズの「すべて」だと語った。進捗度合いの差こそあれ、クラウド時代における変革の方向性、そこでネットワークに求めるものに大きな違いはなくなっていることを指摘する。
 
 「背景にあるのは、すべてがデジタル化し、クラウド化していくという潮流だ。かつてのように、顧客が通信事業者か、それともクラウドプロバイダーかと、個別の領域として考える必要はすでに薄れている。いずれも同じ『原則と哲学』にのっとって変革を進めており、同じようなツールでトランスフォーメーションしていくのだと考えている」(シー氏)
 
 ジュニパーでは数年前から、今回のCloud-Grade Networkingを前提としたソリューションへの転換を図るべく投資戦略を変更しており、それがすでに「現在の大きな成長につながっている」とシー氏は語った。
 
 なお、今回発表された新製品/サービスおよび機能強化は、あくまでも第一弾のものであり、今後も同じ「原則と哲学」に基づく製品/ソリューションオファーが続いていく。シー氏は、こうした取り組みを通じて顧客のクラウド移行とイノベーション、変革の後押しをしていくジュニパーの姿勢を強調した。
 
 
文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

最終更新:6/29(木) 11:00
アスキー