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水谷豊が40年越し監督 映画「TAP」を批評家はどう見たか

6/29(木) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 俳優の水谷豊(64)が持ち込んだオリジナル企画を自ら主演・初監督した映画「TAP THE LAST SHOW」が公開中だ。閉館が決まった劇場を舞台に、最後のタップダンスショーに夢をかける男たちの生きざまを描いた人間ドラマ。

 竹中直人や伊勢谷友介ら人気俳優が監督業に進出することはままあるが、知名度は高くとも演出家としての力量は未知数。興行的には公開後、一度もベスト10にランクインすることなく、「かなり厳しい数字」(映画関係者)というが、監督・水谷豊の腕前について映画批評家の前田有一氏がこう言う。

「観客そっちのけで独り善がりな芸術映画を作りたがる人も多い中、水谷監督は生粋のエンターテイナー型監督だと感じました。自分が多大な影響を受けたタップダンスの魅力を大衆に伝えたい。その確固たる信念が太い柱となって作品を貫いている。64歳ながら、新人監督らしい情熱にあふれた好感度の高い映画です」

 水谷が演じるのは、公演中の脚のケガで引退を余儀なくされて以来、自堕落な暮らしを続ける元天才ダンサー渡真二郎。彼は社会の片隅で這いつくばるように生きる若者たちの中に輝く才能を見いだしたことをきっかけに演出家として復帰。壮絶なしごきで彼らを一流のプロへと鍛え上げていく。

■圧巻ダンスに込めた40年分の意地

 原案となるストーリーは水谷豊が20代の頃に考案。だが映画会社には「タップの映画では客が入らない」と門前払いされた。その後、タップダンスの要素を縮小した映画化が進んだこともあるが、自らその企画は降りてしまったという。

「ダンサー役はタップの実力重視で選んだ演技経験のない若手が中心。これは監督の強い意向です。水谷監督は約40年間、3度も映画化が頓挫する挫折を味わいながら、タップダンスそのものを見せ場にする一点だけは譲らなかった。その代償として、確かに若手の演技は拙いです。しかしそれを水谷自身や岸部一徳、六平直政らベテラン勢がいぶし銀の演技力で見事にカバー。感動的な世代交代のストーリーともシンクロしていて、中高年の観客を泣かせます」(前出の前田氏)

 クライマックスは24分間ノンストップのダンスシーン。ネット上にはこれに圧倒されたとの絶賛の声が並ぶ。今夜は監督40年越しの夢をかなえた絶品のタップダンスに酔いしれてみてはどうだろうか。