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下水の熱を冷暖房に活用 長野県が民間利用スタート

6/29(木) 20:40配信

THE PAGE

 下水の持つ熱を冷暖房などに有効利用しようと、長野県は6月から「下水熱」を民間事業者が利用できることとし、利用申請の募集を始めました。冬は温かく、夏は冷たい下水と外気温の温度差をエネルギーとして取り出すエコ事業です。下水管の中に集熱設備を設ける画期的な手法を用い、早くも利用申請へ手を上げる事業所も現れました。

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外気温との温度差を利用

 長野県の下水熱利用は、県が管理する諏訪湖流域下水道、千曲川流域下水道、犀川安曇野流域下水道の3流域下水道の下水道管(管路)を所定の手続きを経て開放し、民間事業者らが管内に集熱施設を設けて利用する仕組み。6月22日付で「流域下水道下水熱利用手続要領」を制定し、利用申請の受け付けを始めました。3流域下水道の下水道管は約190キロメートルに達します。

 県によると現在、諏訪市の諏訪赤十字病院が利用計画に向けて検討に入っており、下水道管約50メートルの区間でエネルギーの活用を図る方針とされています。

 国交省などのデータによると、下水の温度は夏で20度後半、冬の厳寒期で16~17度前後あり、冬だと外気温と10度近い差が、夏でも時季により外気温より2度前後低い「差分」が出ます。この温度差を暖房や冷房などに利用します。

 実際には下水道管の中に熱を集めるパイプなどを敷き、流れる下水から集熱する方法が取られます。関連の専門企業などがそれぞれ得意のシステムを開発しています。

環境への負荷が少ない利点

 下水道の熱の利用は、ほぼ常時安定した水量があることや、大きな動力を使わないためCO2の発生が少ない、環境への影響が少ないなどの利点があるとされています。

 長野県の場合、下水道管を利用するための設備の構造、設置場所、工法などを詳細に説明する申請を受けて県が審査。「目的外使用をしない」などの条件を付けて許可書を出し、さらに下水道管理者(県)と事業者の間で維持管理や点検などを含む協定を締結。下水道に支障がない条件のもとで着工します。

 使用許可は1年更新とし、下水道管の使用料を徴収します。使用料は工事の規模などにより異なるため、それぞれの計画に基づいて決めていくことになりそうです。長野県環境部の流域下水道係は「ぜひ多くの事業者などに活用してもらいたい」としています。

 下水道熱の利用については国交省などがかねて検討。民間業者らが利用することでまちづくりにも生かせるとして2012年に下水熱利用促進協議会を設置。大学の専門家や環境関連の企業などが事業化に向け論議し、法律的な問題を解決して下水道管の利用ができるよう環境整備を進めてきました。

 国交省によると今年3月現在、全国の下水熱利用は20か所ほど。利用者は公共施設、企業、園芸施設などさまざまですが、十分な活用はまだこれからで、今後自治体などの取り組みが広がりそうです。

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■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説

最終更新:7/4(火) 6:07
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