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大汗の後のビールも危ない 「夏の血栓症」はここに注意

6/29(木) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

「心筋梗塞」「脳梗塞」に代表される「血栓症」は血管が収縮しがちな冬のイメージが強いが、汗をたくさんかき、体から水分が抜ける夏も用心が必要だ。何に気をつけたらいいのか? 赤坂パークビル脳神経外科(東京・港区)の福永篤志医師に聞いた。

「血栓症とは血液中にできた血栓が血管を詰まらせることにより引き起こされる病気を言います。心臓にできると心筋梗塞、脳なら脳梗塞、肺にできると肺塞栓、下肢にできると下肢静脈血栓症(エコノミークラス症候群)などと呼ばれます」

 夏に「倦怠感」「めまい」「頭痛」「ふらつき」「しびれ」を感じると熱中症を疑う人も多いが、実は「血栓症」だったという人も少なくない。

 実際、国立循環器病研究センター(大阪府)によると、2008~13年の6年間の脳梗塞患者の件数は3~5月(961件)、9~11月(917件)、12~2月(966件)に対して6~8月(1004件)の方が多かった。

「65歳以上の脳梗塞の患者2万1000人以上を調べた台湾の研究によると、平均気温が32度を超えると27~29度のときに比べ脳梗塞による死亡率が1・66倍に増えることが報告されています」

■ダイエットやピルも大敵

 そもそも血栓はどうやって作られるのか? 

「正常な血管では、血管内では血液が固まりません。ケガをして血管から血液が出て初めて固まります。ところが血栓ができやすい血管は主に3つの問題点があるといわれています。血管壁の状態が悪い、血液の流れが悪い(うっ滞)、血液の成分が変わることです」

 健康で若々しい血管はゴムのようにしなやかでその内側もすべすべしている。ところが、血管が老化すると、硬くもろくなり、内側がベタベタしてくる。

「老化した血管では血液中の悪玉コレステロール等が血管壁にとりつきその中に侵入しようとするため、それを排除しようと白血球の仲間が集まってきます。白血球の仲間は悪玉コレステロール等を食べた後に死んでしまいます。その死骸と残ったコレステロールがプラークとなり、それが何らかの刺激で破れると、その傷を修復するため血小板が集まってきてかさぶたを作る。これが血栓です」

 ちなみに健康な血管は、出血が収まると傷口周辺の内皮細胞が増殖して血管壁は修復される。その後は血液中のプラスミンという物質などの働きで血栓は溶かされ跡形もなくなるという。

「ところが動脈硬化や老化が進んだ血管はこのシステムがうまくいきません。血液がよどむことで、血栓ができることもあります。その代表が心房細動です。この病気は脳梗塞(脳塞栓)を引き起こしやすいことが知られていますが、それは心臓が震えるだけで血液を外に出せないからです。血液同士がぶつかり血栓ができるのです」

 若い人でもコレステロールや中性脂肪の高い人は血液の流れが悪くなる。

 ちなみに血流のよどみによって起きる血栓症は動脈より静脈に多い。飛行機内などで同じ姿勢で座っていると発症する下肢静脈血栓症は血液が心臓から吐き出される動脈よりも、心臓に戻る静脈の方が血流がゆっくりしているからだ。

 血液成分のほとんどは水分。夏に大量の汗をかいた後に、利尿作用のあるビールや度数の高いお酒ばかり飲んでいると血液が固まりやすい成分に変わってしまう。水分が抜けた分だけ血小板をはじめとした血液凝固成分の濃度も濃くなるからだ。

「夏場にダイエットする人も注意が必要です。人間は1日に1~2リットル程度の飲み水が理想といわれますが、それ以外に食べ物から取っています。ダイエットで食べない人はその分、水分を取らなければなりません」

 人間の血液凝固能力には日内変動がある。いつが固まりやすいのか?

「寝ていて長時間、体を動かさない早朝が一番血液が固まりやすいといえます。また、砂糖や肉を過食したり、ストレスを感じたり、興奮したり、激しい運動をしたあとも血栓ができやすいことがわかっています。薬もピルやステロイドを使っている人は注意が必要です」

 むろん、血管に圧力がかかり続ける高血圧、食事前後で血糖値が大きく変動する糖尿病、血液中に抗リン脂質抗体が増える膠原病などのほか、歯周病や風邪にかかっている人も血栓ができやすい。

 心配な人は内科、循環器科の医師等に相談してはどうだろう。