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日産が解消したい「クルマのネガティブ要因」、電動化と知能化は何をもたらしたか

6/29(木) 7:45配信

MONOist

 モノづくり専門展「日本ものづくりワールド2017」(2017年6月21~23日、東京ビッグサイト)の特別講演に日産自動車 製品開発担当 常務執行役員の安徳光郎氏が登壇。「日産自動車における新たなクルマづくりへのチャレンジ」をテーマに自動運転技術や電動車両に対する開発の姿勢や普及に向けた課題、未来につながる新しいクルマづくりについてのビジョンを語った。

【これまでの「日産インテリジェント・モビリティー」の画像】

 日産自動車のクルマづくりの象徴となっているのが自動運転技術と電動化だ。安徳氏は「持続的なモビリティーの実現に向けて、技術によってクルマにネガティブに作用するような現象を解決する」と説明。自動車を取り巻く“ネガティブな現象”とは次のようなものだ。

・エネルギーの枯渇
・地球温暖化(大気汚染)
・渋滞に伴う都市機能の低下
・交通事故

 これらの解決に向けて究極の目標として掲げているのが「ゼロエミッション」と「死亡事故ゼロ」である。

 ゼロエミッションに向けた取り組みの成果として、日産自動車のグローバル企業平均燃費は2015年に2005年比で36%削減。これはパワートレインの進化、車両の軽量化やさまざまな効率化の結果といえる。安全についても、日産車が関与した死亡・重症者数は2015年に1995年比で64%減少。予防安全や衝突安全の取り組みが結びついたものだ。

 究極の目標を達成する手段として開発を進めているのが「電動化」と「知能化」である。安徳氏は「この2つを組み合わせて4つのネガティブ要因を消していくことにチャレンジしている。その上に、これまでにないような運転する楽しさ、クルマの中で過ごす楽しさを作り上げていきたい」と語る。

 こうしたクルマづくりに対するビジョンが「日産インテリジェント・モビリティー」で、3つの価値で構成されている。1つ目がクルマがより信頼できるパートナーになることを目指す「日産インテリジェント・ドライビング」、2つ目がクルマの効率化と電動化による走りの楽しさを提供する「日産インテリジェント・パワー」だ。3つ目が、クルマと社会がつながることで生まれる新しい価値「日産インテリジェント・インテグレーション」である。

 日産インテリジェント・パワーの代表例は電気自動車(EV)だ。EVの「リーフ」「e-NV200」以外にも、EVの技術を応用したシリーズハイブリッドシステム「e-POWER(eパワー)」があり、コンパクトカー「ノート」に採用されている。2020年にはバイオエタノールから取り出した水素で発電して走行する燃料電池車のシステム「e-Bio Fuel-Cell」を量産する。

 リーフに対するユーザーの評価についても安徳氏は言及した。静粛性やランニングコスト、加速性能は評価が高く、75%のユーザーから「次もEVを購入したい」という回答を得ている。一方で、走行距離や充電時間、充電インフラの設置状況に対する不満も挙がっているという。

 EVのさらなる普及は走行距離と充電時間の改善が必要になる。2012年のリーフはバッテリー容量24kWh、走行距離228kmという性能だったが、2015年にはバッテリー容量30kWhのグレードを追加し、走行距離は280kmまで延長した。充電時間は2012年から2015年にかけて40%短縮し、所要時間は14分前後となった。2017年に発売予定のリーフの新モデルでは、走行距離をさらに延ばし、充電時間の短縮が期待される。

●車名別販売台数で首位をとったノート

 シリーズハイブリッドシステムのeパワーを搭載したノートは販売が好調だ。ノートの一部改良を実施してeパワーを追加した2016年11月以降、2017年5月末までに国内販売台数は累計10万台を突破。eパワー搭載モデルの販売比率が7割を占めるという。また、毎月発表される車名別販売台数のランキングでは、2016年11月、2017年1月と3月にノートが首位を獲得している。

 eパワーの魅力は「力強く滑らかな加速と高い静粛性」(安徳氏)だという。エンジンを発電だけに使用し、最も効率が良い回転数を維持して運転することから、トップレベルの燃費を実現。アクセル操作だけでエンジンブレーキの3倍の減速が可能で、特に市街地での運転ではブレーキペダルへの踏みかえ回数が大きく減少するためドライバーの負担軽減にもつながっている。

 日産インテリジェント・ドライビングの代表例である、高速道路の単一車線での自動運転技術「プロパイロット」も、量産モデルへの展開を進めている。プロパイロットは、2016年8月にフルモデルチェンジを実施したミニバン「セレナ」に搭載。続いて、2017年6月に一部改良したSUV「エクストレイル」にも設定している。間もなく発売する新型リーフにも採用する計画だ。

 プロパイロットは、前方車両や白線を認識するフロントカメラと、カメラの情報を基に車両を制御するADASコントロールユニット、スロットルや電動パーキングブレーキ、ステアリングの制御技術で構成されている。

 2018年には高速道路での車線変更も含めた自動運転システムを製品化、2020年に向けて交差点を含む市街地での自動運転技術も開発を進めている。

 自動運転システムの実現を支えるのはセンシング、認識、判断、操作の4つの技術であり、これらでドライバーのミスを減らしていくのが知能化の大きな柱の1つだ。日産自動車は市街地での自動運転の実現に向けた課題として「高いレベルの認知・判断能力」「交通社会との調和」「安心・安全の確保」の3つを挙げている。

 ドライバーが行っているセンシングや認識・判断、操作について、安徳氏は「目は1秒間に30回程度認識し、脳は1秒間に100兆回ぐらい計算をしているという。筋肉の反応時間は約0.1秒だ」とし、最新の技術では人間を大きく超える水準に到達していることを紹介した。

 自動運転システムでは、死角なく車両の周辺環境を認識し、複数のセンサーの情報を基に精度を高めるセンサーフュージョンが欠かせない。ミリ波レーダーは遠くにある物体、レーザースキャナーは車両の周囲にある物体を認識、カメラは物体の種類や大きさ、動きを識別するなど、性質がそれぞれ異なるセンサーを組み合わせることで認識能力を向上させる。

 クルマがより正確な判断を下し、周囲の物体の動きを認識するだけでなく予測もするには人工知能(AI)技術の活用も重要性が高まっている。

 交通社会と自動運転車の調和には、ドライバーの特性や道路環境、交通流環境など地域ごとに異なる条件・環境への対応も必要だ。慣習や状況に沿った行動決定アルゴリズムと、次の行動を周囲に知らせる技術が課題になるという。安徳氏は日産自動車ではドライバーの運転特徴を学習し、環境に応じて嗜好にあった運転パターンを自動設定する機械学習アルゴリズムの開発を進めていことを紹介した。

 この他にもインフラも重要であり、高精度3次元地図や関係各社と協調してダイナミックマップを整備していくことも必要だという。さらに、クルマ単独で判断が難しいシーンでは管制センターか判断をサポートする遠隔操作システムの開発にも取り組む。

 社会的コンセンサスも自動走行にとっては大きな課題であり、安徳氏は保険の優遇措置、ドライバーと車両の責任の分担、自動運転技術の基準づくりや標準化などを挙げた。日産自動車では車両からの意思表示する機能も1つのアイデアとして提案している。

最終更新:6/29(木) 7:45
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