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目指すのは「家の中でも外でも、全部UQ」 好調「UQ mobile」の向かう先

6/29(木) 22:02配信

ITmedia Mobile

 2016年10月に、スマートフォンのラインアップを一気に拡大した「UQ mobile」。深田恭子さん、多部未華子さん、永野芽郁さんらを三姉妹として起用したテレビCMも功を奏し、加入者数は急増している。春商戦では契約者数も大幅に増やし、ひとまずの目標とする90万契約も「射程に入ってきた」(UQコミュニケーションズ 野坂章雄社長)。

【夏の新機種】

 そのUQ mobileが、夏商戦でテーマに掲げたのが「家族」だ。6月8日には、2台目以降を契約すると、2回線目から500円割引になる「UQ家族割」を受付開始。端末のラインアップも広げ、シャープの「AQUOS L2」と京セラの「DIGNO V」に加え、Huaweiの「P10 lite」を発売した。

 親会社にあたるKDDIも、UQ mobileをサブブランドの一角と位置付け、本腰を入れ始めた。経営指標として、新たに傘下のMVNOを含めた「モバイルID数」を導入。auに加え、UQ mobileやJ:COM MOBILEを成長のための基盤と見なすようになった。一方で、急成長する大手キャリアのサブブランドに対し、他のMVNOは警戒感をのぞかせている。

 こうした状況に置かれたUQ mobileをかじ取りするのが野坂社長だ。同氏に、春商戦を振り返ってもらいながら、夏商戦以降の取り組みや、UQ mobileが目指す方向性を聞いた。

●夏商戦で「家族」を訴求した理由

―― 最初に、秋の発表から春商戦にかけてを振り返っていただけないでしょうか。手応えはいかがでしたか。

野坂氏 2015年の秋にKVE(KDDIバリューイネイブラー)を合併しましたが、現実としては、2016年の10月が事実上のスタートでした。いろいろなことを置いておき、本音を言うとそうなります。無名の戦士みたいところから、一気に有名にしないと勢いがつかない。垂直立ち上げをしたいと言ってはいましたが、不安は満載でした。

 (夏商戦の)発表会で芸能パートを重視したのは、CMがやはり重要だったからです。みんなに受け入れていただくには、ずっと見ていただき、「あの会社だ」と思われないと出ていけません。CMでは「UQ、UQ」と連呼しているだけですが、それと、1980円の2つを訴求できればいいと思っています。これは発表会でも言ったことですが、若い女性がターゲットというわけではなく、その裏側では男性も支持する。40代、50代が見ても好感度のあるCMになり、ラッキーだった面もありますが、まあまあ当たっています。

 10月に4Pと言って、もともと京セラとLGしかなかったところに、ラインアップを一気にそろえ、料金も1980円から。プレース(売場)としてのUQスポットもやり切り、それらを全部まとめたのがコマーシャルということになります。

 結果、(秋の発表会の際に)12月以降の薄い線で書いていたところ(予想契約者数)が現実になりました。たまたまですが、3月は目標をさらに超えています。季節変動はありますが、狙いのさらに上に行けた。4月、5月になっても、同じような勢いを維持しています。

 いろいろな議論はありますが、業界としては、例のタスクフォースで言われていたことが、それなりに出来上がってきています。その中で、UQは、ユニバーサルクオリティーのUQだと一貫して言い続けてきました。私自身、通信は長年経験していますが、かつてもいろいろなプレーヤーが出てきて、それが消えていくことを繰り返しています。その中で、一定の規模感を持たないといけない(消えてしまう)というのは信念としてあります。

―― 夏商戦で、「家族」を訴求した理由を教えてください。

野坂氏 「5人に1人を連れてくる」という、(Y!mobileの)寺尾さんの発言がありましたが、結果として出だしも好調で、そうなのかなと思っています。ここは、Y!mobileさんをキャッチアップしていきたい。まねじゃないかとも言われてしまいますが、伸びているとき、攻めているときは、まずイコールにするところが中間的な完成系になります。もちろん、競争なので先に行くことは必要ですが、大きな業界の流れを見ると、Y!mobileもわれわれも、同じ立場なところはあります。

 本当のところを言うと、ホームルーターの「L01」などがあって、「家の中でも外でも、全部UQです」とやっていきたい。家の中にいて電車に乗り、学校や会社に行って、また帰ってくる。こういうときに、家にL01があったり、モバイルルーターとスマホを持っていったりしてくれれば、家族全員がUQになります。

●WiMAXとのセット割は……

―― 今回はUQ mobileが複数回線だと割引になりますが、UQ WiMAXとのセット割が提供されていません。

野坂氏 (キャンペーンでもらえる)例の三姉妹の時計、実物をご覧になったことはありますか? あれはかなり意味があると思っています。足せば下げるというのではなく、2回線持っても6360円(WiMAX 2+の「UQ Flat ツープラスギガ放題」と、UQ mobileの「プランS」を合算した金額)で十分安い。オマケは付けるので、ぜひ頑張ってくださいという感覚です。(価格には)ある一定の線があり、今はこれで戦えないとおかしい。値段を下げればいいというのは分からないでもないですが……。

 これはいつも営業に言っていることで、スマホが得意なスタッフ、ルーターが得意なスタッフはもちろんいますが、どちらも法人の営業のように、「家族は何人いるのか」「家では何を使っているのか」としっかりコンサルしないと、なんとなくスマホ(が得意なスタッフ)はスマホ、ルーター(が得意なスタッフ)はルーターになってしまいます。そこに家族割が入ったのは大きいですね。

―― 出だしは好調とのことですが、規模感はいかがですか。

野坂氏 数字までは言えませんが、確かに効果はある。自分でやってみて、「へー」と思うところはありました。でも、それはそうですよね。自分が入って、家族を連れてくれば1480円になるので。

―― 家族をまとめて他社から獲得しているのか、すでにUQ mobileのユーザーが新たに家族を連れてきているのか、どちらなのかは分かりますか。

野坂氏 そこは、まだ分析できていません。一緒にドンっと入っているのか、家族を連れてきているのかは、もう少しボリュームがそろった段階で分析しようと思っています。ただ、感触では両方ありそうな気はしています。頑張っているとはいえ、まだ(家族を連れてくるほどの)ボリュームはないので。通信は、やはり個々人がバラバラと買っていくものではなく、家族で入るものなのかもしれません。

●ショップの数は追求しない

―― 家族で入ろうとすると、UQスポットのようなリアルな接点があると強そうですね。

野坂氏 今日時点(※取材は6月22日)で、ようやく73店舗目ができました。(ショップがあれば)確実に掛け算で計算できるようになりますからね。やはり(ショップには)根強いニーズがあり、ローカリティが必要なのは確かです。ただ、発表会でも申し上げたように、うちが(Y!mobileと同規模の)1000店舗にするかというと、それはありません。確かにY!mobileさんは1000店舗あるかもしれませんが、うちは相撲で例えると前頭です。横綱クラス、大関クラスがいて、前頭で1枚、2枚上がっているようなところですから。

―― では、その半分の500店舗程度というところでしょうか。

野坂氏 なかなか、経費もかかるし、難しいですね。数が読めてくれば、もう少し増やしたいという動きは出てくると思います。

―― auのサブブランドという視点で見ると、UQ mobileとJ:COM MOBILE、BIGLOBEはそれぞれ販路がうまく分かれている印象もあります。

野坂氏 それは、皆さんがあまりに言い過ぎるので、最近は本当に(KDDIと)コミュニケーションしづらくなってます(苦笑)。

―― KDDIから、もっとユーザーを増やせと言われるようなことはないのでしょうか。

野坂氏 そういうことは一切ないですね。

―― 夏商戦では、家族向けのオプションサービスもそろえてきました。ここで、auのサービスを販売するというようなことは考えなかったのでしょうか。

野坂氏 これも、自分たちで一生懸命考えたものです。安心安全はとても大切なので、「filii」を組み合わせたりもしました。付加価値が上がり、われわれにとってはARPUもプラスになるのがうれしいですね。なんとか経済圏でポイントを入れるというようなことは、今のところ考えていません。ちょっと前の携帯電話会社と同じように、今はID数を取ることが大事です。皆さんのおっしゃっているようなこと(auとのサービス連携)は、もう一歩先のような気がしますね。

●iPhoneも人気だが、Y!mobileほどではない?

―― 春商戦の終わりごろというか、夏商戦の前というかに、iPhone SEを導入されました。この効果はいかがでしたでしょうか。

野坂氏 もちろん根強い人気があります。(Y!mobileの)寺尾さんは4割とおっしゃっていたようですが、うちは5で割ったようなところです。P10 lite、P9 lite、AQUOS、DIGNOとiPhoneの5つですね。家族を考えたとき、iPhoneがあり、中国メーカーがあり、こういう国産がありというのがいいのだと思います。

―― 秋の発表に比べ、ラインアップがより明確になって数が絞られた印象もあります。これは家族を意識したものなのでしょうか。

野坂氏 家族だからということではなく、やっているうちにこの辺になってきたという感じが強いですね。相手もあることなので狙い通りにいかないことはありますが、この辺の端末があれば営業としても戦えます。

 個人的な経験で言うと、あまりにも数が多いと、わけが分からなくなってしまいます。京セラ、LG端末しかなかったつらい時期を思えば、今でも十分だと思います。

―― 国内メーカーの端末は、年齢層が高いなど、属性の違いはあるのでしょうか。

野坂氏 デモグラフィー(属性)については、きれいに分かれています。若いからiPhoneというわけではないとは思いますが、もともと持ちたかった若い人が、ようやく1980円、2980円になって持つことができたということはあるので、iPhoneは多少若者向きかもしれません。きれいに分散していて、極端にiPhoneだけが高かったり、京セラだけが高かったりということもありません。性別や年齢は、きれいに分かれています。

―― 端末について、秋の発表会では一気に数が増えましたが、今回はP10 liteを入れても3機種です。今後は、どうされていくのでしょうか。

野坂氏 あのときは、一気にキャッチアップするという意味もあり、(数を多く)出しました。ここでそろえなければ、しょうがないというのがありましたからね。あそこが出発点で、やめたものや追加したものがあり、合計で10機種ぐらいが並んでいるという状況です。今後も入れ替えをして、10機種ぐらいを残す形にしていきます。

―― MVNOの他社とは少々違ったラインアップになっているように見えます。

野坂氏 そういう意味だと、ASUSさんの端末もありますが、(他社と比べて)思ったほど数はないかもしれません。

●「ぴったりプラン」と「おしゃべりプラン」の利用者は半々

―― 現状、料金プランが「ぴったりプラン」と「おしゃべりプラン」の2つに分かれています。やはり、比率は音声定額のおしゃべりプランが多いのでしょうか。

野坂氏 定額のおしゃべりプランは多いのですが、割と半々に近いイメージです。もちろん、ストックで見るとぴったりプランの方が多いのですが、毎月を見ていくと、若干おしゃべりプランが多いぐらいで、大きく言うと半々です。

―― 定額が多いと思っていましたが、それは意外でした。

野坂氏 やはり5分で定額が1回切られるというのがいやだという感覚があるのではないでしょうか。通話はほとんど使わないので、無料時間の方がいいという方もいると思います。

―― 音声定額の時間を10分に伸ばすようなことはしないのでしょうか。

野坂氏 それは考えていません。どうしても10分通話したいという人は、ぴったりプランを選ばれるのではないでしょうか。

―― データ容量はどれを選ばれることが多いですか。

野坂氏 今はプランM、プランLが多いですね。なるべく大きな方に寄せるように(営業には)指示をしています。商売でやっていることもありますし、容量が大きい方がやはり便利なので。

―― 現状、キャンペーン扱いでデータ容量が2倍になっていますが、これを正式なプランにすることはないのでしょうか。

野坂氏 うちの方が(Y!mobileと比べて)スタートが遅いというのはありますが、これは競争状況など、いろんな要素を見ながらですね。

●WiMAX 2+ルーターが好調の理由

―― 春商戦ではWiMAX 2+のルーターも伸びたと伺いました。これはなぜでしょうか。

野坂氏 3月にすごく増えましたね。いまだにそうで、今月も調子がいいです。(制限緩和の)3日で10GBが当たった気がしますし、(auのLTEを使える)7GBも無料になりました。これはあとで、ちゃんと分析したいと思っています。

―― 固定回線代わりに、家で使う用途が多いのでしょうか。

野坂氏 ホームルーターもいいですね。L01は、しっかりしてそうというか、強そうというか(笑)。本質的な機能は、モバイル用のルーターとそんなに変わりませんが、この安定感のようなものがいいのではないでしょうか。イーサネットのポートが2つ付いているのも、大きいと思います。

―― 光などの固定回線を引かずに、ルーターで済ませているユーザーが多いということでしょうか。

野坂氏 いろいろな仮説はありますが、光コラボが登場してちょうど2年だったり、ソフトバンクさんはSoftBank Airを頑張られていたりする。そういう意味で、固定と移動体の垣根が、昔より低くなっている気はしています。3日10GBに制限を緩めたことで、かつて、固定電話をやめて携帯電話だけにしたというようなことと、同じようなことが起こりつつあるのではないでしょうか。スマホ側で20GB、30GBプランが出たので1台持ちでいいというのがあるかと思いましたが、それだけでは足りないということかもしれません。

―― UQ mobileとUQ WiMAXを1台で使えるというようなプランは考えていないのでしょうか。

野坂氏 DSDS(デュアルSIM/デュアルスタンバイ)でできるような気もしますが、今はスマホとルーターをオールUQにしてください。それだけですね。

●UQ mobileの速度が混雑時も速いのは?

―― UQ mobileは、混雑時の速度も速いと評判です。これについては、何か秘訣(ひけつ)があるのでしょうか。

野坂氏 秘訣のようなものはなく、方針として(帯域増強を)やっています。通信とはそういうもので、これは信念です。もちろん、一時は昼が遅いと言われたこともあり、どこまでやれるかは程度問題ですが。

―― 逆に、速すぎるというMVNOからの声も聞こえてきます。

野坂氏 auより速くなることはないですから(笑)。遅くなったと(ユーザーに)文句を言われるのもいやなので、頑張ります。UQ mobileはユーザー数が伸びていますが、みなさんが推測されている数字だとしたら、そこまで驚くような数でもありません。これが100万、200万にいくと(帯域増強も)結構なことになりますが、そんな事実もあります。

―― MVNO側からのサブブランド批判は、どうお考えですか。

野坂氏 そういう声も強いので、余計なことは言いません(笑)。総務省からも、不当に安くしていることがあった場合は業務改善命令が出ます。今の(電気通信市場検証会議での)文章を見る限り、そんなに変なことにはなっていません。総務省がルールメイキングされたことは、守らないといけないですからね。

―― 最後に、今後、UQコミュニケーションズとして、サービスにどのような特色を出していきたいのかを教えてください。

野坂氏 発表会でも、最初に「UQとはユニバーサルクオリティー」というところから入り、最後は「みんなのモノにする」というところで落としています。皆さんは「ふーん」と聞いていたかもしれませんが、(目指すのは)まさにこれ1点です。その出来上がりがこれで、「みんなのモノ」にめがけて広げていきたいと考えています。もちろん、タッチポイントには限界もあるので、ファンを増やして家族が家族を連れてくるようなこともやっていきます。

 総務省のタスクフォースから始まり、SIMロックの解除があり、日本全体がこの方向になれば、安倍首相が目指していたこと(携帯電話料金の値下げ)も実現するのではないでしょうか。その間でいろいろな行司の仕方はあると思いますが、大きな方向としては、そちらに向かっていければと考えています。

●取材を終えて:UQならではの施策にも期待

 春商戦で勢いを加速させたUQ mobileだが、野坂氏の言葉を借りれれば、まだ「前頭1枚目か2枚目」。Y!mobileという強力なライバルに、端末や料金でようやくキャッチアップできたところだ。一方で、UQ mobileならではの料金プランや、割引などが見えてこないため、どこかフォロワーの印象も残る。競合であるY!mobileだけでなく、ユーザーもあっと驚くような発表に期待したいところだ。

最終更新:6/29(木) 22:02
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