ここから本文です

迫る 特殊詐欺の闇 大事な資産、消えた

6/29(木) 6:01配信

上毛新聞

 群馬県内の今年5月末までの特殊詐欺被害が123件、約2億5000万円に達した。かけがえのない財産を詐取された人の思いは。巧妙化する手口や、関係機関の対策は。実態に迫る。

被害女性 心に大きな穴

 今月中旬、前橋市の女性(81)は小さな背中を丸めるようにして椅子に腰掛けた。当時走り書きしたメモを手に、特殊詐欺の被害に遭って300万円をだまし取られた状況を話し始めた。

■カード名義貸し

 自宅の電話が鳴ったのは昨年12月13日、夕食時だった。「老人ホームに入れない人がいる。助けてあげてほしい」。タカハシと名乗る電話口の男は、クレジットカードの名義を貸すよう頼んできた。ふびんに思い、その場で引き受けた。

 一晩考えて14日朝、「やっぱり見ず知らずの人には貸せない」と断ると、直後に老人ホームの職員だというイチカワから電話があった。「手続きの解除には400万円が必要。タカハシが100万円を用意した。残りの準備を」。同時にタカハシも「病弱で小さい子どもがいる」「100万円は大金だ」と言ってきた。泣きそうな声だった。

 たたみ掛けるような2人の電話。「どうしよう、どうしよう。そんなふうに慌てちゃった」

 数カ月前に夫を亡くし、気弱になっていた。イチカワに「名義貸しは罪だ」と言われたことで後ろめたさもあった。焦って、同居の娘にも相談しなかった。

 指示に従って赴いたJR前橋駅ではオカザキと名乗る男が待っていた。紙袋を渡すとすぐに消えた。中には、三つの金融機関の口座から引き出した300万円が入っていた。男たちは「手続きが済めば返金される」と言っていたのに、15日午前中になっても入金されなかった。

 「詐欺だ」。確信した。

金融機関に相談

 同日午後、イチカワはさらに600万円を要求。決心してなじみの金融機関に相談すると、担当者が飛んできた。県警にも通報し、被害に遭ったふりをして捜査に協力する「だまされたふり作戦」をすることになった。

 16日正午ごろ。偽の札束を持って前橋駅で再びオカザキと向き合った。

1/2ページ

最終更新:6/29(木) 7:20
上毛新聞