ここから本文です

発展がなければ維持もできない、上間綾乃が考える沖縄民謡のいま/インタビュー

6/29(木) 11:10配信

MusicVoice

 沖縄出身歌手の上間綾乃が21日に、通算5枚目となるアルバム『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』をリリースした。メジャーデビューから5年。これまで沖縄出身の唄者として、新旧様々な楽曲を歌ってきた彼女だが、今回のアルバムは先人が歌い継いできた民謡で構成されたものになっている。長い伝統を持つ沖縄音楽の担い手として彼女は今、何を考え、何を想っているのだろうか。今作は深呼吸ができない人に聴いてほしいという。日本から世界、伝統と発展の中でチャレンジし続ける彼女にその真意を聞いた。

民謡は生活の中にある

――新譜『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』制作の意図を教えてください。

 ずっと、民謡を集めた作品を作りたいと思っていました。でも「今じゃない」と、オリジナルの曲を作ったり、色々なミュージシャンの方と一緒に新しいものにチャレンジしてきました。歌の旅をしてきたからこそ5周年のCDを出すとしたら、民謡の作品が良いと考えていました。選曲もこだわった選曲になっています。

――特にこだわった楽曲は?

今作はリード曲として、1曲目に「島唄 南の四季」(THE BOOM「島唄」の旋律に沖縄の歌詞をつけた恋の歌)を収録させていただいます。
そして、特に「PW 無情」と「ひめゆりの唄」の2曲は今回絶対入れたかったんです。そこがこのアルバムのスタートでした。
聴いてもらった皆さんには「この2曲が刺さりました」と感想もいただきまして、ちゃんと届いているなと感じています。

――「PW 無情」は民謡なのに、タイトルにアルファベットが使われているのが印象的です。

 そういう民謡もあるんですよ。英語のものもありますし、カタカナも、ウチナーグチ(沖縄方言)ではなくて、標準語を使った歌もあります。『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』というアルバムのタイトルにも意味があります。沖縄民謡というのは今も新曲がどんどん生まれていてだからポピュラーソングで、流行歌でもあるんです。
 ジャンルはカテゴライズするとしたら「民謡」になるかもしれませんが、ワールドミュージック的な感じで私は捉えています。ロックも演歌もJポップも演歌も全部生きている人が、新しい曲に今の想いを乗せて歌いますよね。そう考えて私もライブ活動をしているので「民謡歌っています」というよりも「流行り歌を歌っています」という感覚です。
――そういったスタンスなのですね。

 音楽のジャンルに限らずですが、言葉によって固定概念とか先入観を生んでしまう事ってありますよね。そのせいで「民謡」が化石の様な扱いをされてしまうのは、とても心苦しいです。ピアノが入っても良いし、バイオリンが入っても良い、サックスが入ったって良いと思います。「何でもありなんだよ」というのをやりたくて。これが沖縄音楽への入口になってくれれば良いなと思ってもいます。

――言葉の先入観は確かにありますね。続いて「ひめゆりの唄」に対する想いをお聞かせください。

 「これは歌わなければいけないな」と思いました。決して楽しい歌ではないので、他の方のライブでも聴く機会が少なく、私も曲を知りませんでした。大学生の時に先輩の音源を聴いて、衝撃を受けたました。「こういう曲があるのか、しかも標準語で10番まで」と。その時「歌わなきゃ」と感じて。音源を聴きながら耳でコピーするんですけど、あまりにも辛すぎて最後まで歌えなくて...。

色々な想いが降って来て泣いてしまって、習得するまでに時間がかかりました。私はこの曲を生で聴いたことがなかったんですよ。
やっぱり生きてる人が歌わないと廃れてしまいますから。
そういう危機感というものがあり、そこからライブで唄うようになりました。

――途中で歌えなくなってしまうほどなんですね。

 若い人は戦争を経験していないので、ピンと来ないところもあるかもしれません。
でも、それで終わらせてはいけないと思います。
同じような経験をしたくないし、後の世代にもそのような経験をさせたくないという事を、
先輩の歌や話を聞いて育ち、私自身も強くそう感じ、唄っています。
沖縄という土地に生まれ育ち、何も感じない人はいないと思う。

ー「PW無情」に関してはどうですか?

 「PW 無情」は音源にもなってますし、先輩たちが歌う姿も見て聴いていました。 “PW無情”の「PW」は、「Prisoner of War(戦争捕虜)」の略なんですけど、こういう過去があったということを、決して忘れてはいけないと思うんですよね。「歌い継ぐ」というと敷居の高いイメージがありますが、こういう歌こそ歌わないといけないし、伝えないといけないと思ったんです。

1/3ページ

最終更新:6/29(木) 11:10
MusicVoice