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「10歳の壁」ってどんなもの? どんな根拠に基づいているの?【前編】

6/29(木) 16:00配信

ベネッセ 教育情報サイト

「10歳までに勉強させないと手遅れになる!」といった話を聞いて焦りを感じたことがあるかたもいるのでは。しかし、しばしば耳にする「10歳(9歳)の壁」は、どのような根拠に基づいて語られているのでしょうか。発達心理学が専門で、『子どもの「10歳の壁」とは何か?』の著書がある法政大学文学部心理学科の渡辺弥生教授にお話を伺いました。

「10歳」までの教育が子どもの将来を決める?

小学生のお子さまのいる保護者でしたら、「10歳の壁」という言葉を耳にしたことがあるかたも多いでしょう。10歳ではなく、9歳の場合もありますが、いずれも教育関連の書籍や雑誌などで「この時期までに勉強や運動をしておかないと手遅れになる」などと、いわゆる早期教育を促す文脈で使われることが多いフレーズです。

保護者からすると、9歳や10歳といった具体的な年齢が提示されていることもあり、よくわからないけれど、「手遅れにならないように勉強をさせなければ」といった焦りを感じられるかもしれません。10歳を過ぎたお子さまの保護者の中には、「もっと早く対策をしておくべきだった」といった後悔の念を抱かれるかたもいらっしゃるでしょう。

「10歳の壁」に科学的な根拠はないのか!?

しかし、「10歳の壁」には、本当に科学的な根拠があるのでしょうか。生まれてからお墓に入るまでの人の心の発達を研究する発達心理学者として関心をもち、「10歳の壁」が取り上げられているさまざまな出版物を調べてみました。学力に関しては、例えば、「東大に入るためには10歳までに勉強好きにする必要がある」と主張するものなどがありましたが、「なぜ10歳か」という肝心の根拠について脳科学などの観点から明確に提示するものは一切見られませんでした。さらに脳科学や医学に関する最新の研究成果を調べても、現時点で「10歳の壁」の根拠といえるものは存在しないことがわかりました。

また運動に関して、運動神経は10歳までに一番伸びることを指摘したうえで、神経回路の95%は10歳までに完成するという研究成果を引用する雑誌記事もありました。一見、説得力がありますが、ここには大きな落とし穴があります。10歳までに神経回路の大半ができあがることが事実としても、どういうメニューの運動をどれくらいすれば、神経の発達に効果的であるかは必ずしも解明されていないのです。適度な運動が健康的であることは経験的にわかりますが、神経を十分に発達させるためにはそれだけでよいのか、あるいはもっとハードな運動が必要なのかといったことはわかっていません。

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