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消費税10%に延期論、骨太方針から表現削除した政府の狙い

6/29(木) 15:20配信

日刊工業新聞電子版

■消えた「19年10月の消費増税」表現

 政府・与党内に財政健全化目標の先送り論が浮上している。国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス、PB)を2020年度に黒字化する目標を先送り、経済最優先の財政運営を鮮明にするという発想だ。安倍晋三首相は20年に憲法改正を目指す考えを表明しており、国民投票が絡むだけに痛みを伴う19年10月の消費増税が予定通り実施されるかも予断を許さない。

 経済成長による税収増に依存した財政健全化計画は危うく、将来世代に禍根を残しかねない。安倍政権は消費税率10%への引き上げを安易に修正することがあってはならない。

 安倍政権は財政健全化よりも経済成長を優先する姿勢を鮮明にしている。6月9日に閣議決定した経済財政運営の基本方針(骨太方針)では、それまで記載されていた「19年10月の消費増税」の表現が削除された。加えて、20年度にPB黒字化を目指す財政健全化計画も一部見直され、新たに「公的債務残高に占める名目国内総生産(GDP)比率」も健全化を計る指標として採用された。

 税収などで歳出をどこまで賄えるかを示すPB目標は大胆な歳出改革が求められるのに対し、新指標は分母のGDPが増えれば改善する。実現が困難視されているPB目標の達成時期を先送り、GDP重視の財政運営に舵を切る可能性を否定できない。有識者の中には、19年10月の消費増税を延期するための布石との見方さえ出ている。

 また20年に憲法改正するには、衆参両院で3分の2以上の賛同を得て、19年までに国民投票を行う必要がある。有権者の経済的な痛みを伴う19年10月の消費増税に延期論がくすぶるのは、この憲法改正問題も背景にある。

 一方、財務省や経済界は財政規律の堅持を訴える。財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、PB黒字化目標は「将来世代に対する最低限の責務」だとし、同審議会長で経団連会長でもある榊原定征氏は19年10月の消費増税は「国際公約だと思っている。必ず実現しなければならない」と訴えた。

 また財政審は、社会保障の持続可能性をめぐる将来不安から「消費を手控えようとしていると考えられる」とし、財政規律の順守はむしろ個人消費の喚起に結びつくと強調。安易な財政出動を伴う景気刺激策にクギを刺している。

 内閣府が6月15日に開いた景気動向指数研究会(有識者会議)では、12年12月に始まった景気拡張が14年4月の消費増税(消費税率を5%から8%に引き上げ)後も継続している可能性が高いとの考えで一致した。増税後に一時的な景気の減速はあっても、日本経済は全体として拡張を続けているとの判断だ。

 19年10月の消費増税は税率8%から10%へと2ポイント引き上げるもので、前回の3%引き上げより経済への影響は小さいはずだ。社会保障など将来不安を払しょくすることは、懸案の少子化対策にもつながるのではないか。

 自民党総裁任期を勘案すると、仮に19年10月の消費増税も延期となれば、事実上の無期延期となりかねない。安倍政権には冷静・慎重な判断を求めたい。