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イタリア観光地が悲鳴、客殺到に「もう十分」

6/29(木) 9:42配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 イタリア南部のカプリ島で、いとこ同士の町長2人が演じる小競り合いは、同国各地が抱えるジレンマを浮き彫りにする。観光は重要な収入源だとわかっているが、その半面、観光客に対して(少なくともその一部には)もう来ないでほしいと多くの住民が思っているのだ。

 昨年、カプリ町長のジョバンニ・デ・マルティーノ氏はうんざりしていた。本土からのフェリーが立て続けに到着し、5分間隔で島に押し寄せる観光客が――多くは低予算のツアーで訪れる日帰り客だ――町の中心部に向かうケーブルカーに乗り込むために1時間も行列に並ぶのだ。

 静かで神秘的な島の魅力が、群衆によって損なわれることを危惧したデ・マルティーノ町長は、フェリーの到着を20分間隔に伸ばすよう求めることにした。

 しかし、ほどなく強敵が立ちふさがった。島内のもう一つの町、アナカプリの町長で、いとこでもあるフランチェスコ・チェロッタ氏だ。

 チェロッタ町長は「カプリの誰かさんは、いまだにジャクリーンとオナシスが(目抜き通りの)ヴィアカメレーレを散策することを夢見ているらしい」と現地メディアに語った。「カプリが魅惑的な場所であることは必要だ。しかしホテルやレストラン、ショップを客で満たすことも必要だ」

困り果てる人気観光地

 最近、観光客が「トレビの泉」を全裸で泳いだり、ベネチアのリアルト橋から飛び込んだりする事件が続いたのを受け、旅行者殺到を食い止めたいという当局の決意は強まるばかりだ。イタリアを訪れる観光客の数は2016年に5200万人を突破し、2000年に比べ30%近く増えた。

 ただ、観光客が来ないようにするのは至難の業だ。訪問を制限するには、法的にもビジネスの面でも実際の運用上でもさまざまな課題にぶつかる。

 中部の都市フィレンツェでは2016年に観光バスの乗り入れ料金を引き上げる市の条例を定めたが、地方裁判所が一部を無効にする決定を下した。同市は決定を不服として上訴し、一時差し止めの仮処分を勝ち取った。

 地中海に面する海岸に沿って小さな漁村が集まるチンクエテッレには、昨年250万人が訪れた。住民の数の実に500倍に相当する。これに対し、地元当局は今春、5カ所をつなぐ風光明媚な散歩ルートに入場制限を設ける考えを明らかにした。反対論はあったものの、6月にこの制度は施行された。

 水の都ベネチアは、米ニューヨークのセントラルパークの5倍ほどの広さにもかかわらず、年間1500万人の日帰り観光客が押し寄せる。市民や一部の政治家からは観光客の制限を求める声が強まっているが、法的な問題などもあってらちがあかない状況だ。

 「都市を閉鎖することは望まない」と、同市観光局トップのパオラ・マール氏は話す。「法律でもそれは許されない」

 今月、何らかの方策を求める住民投票が実施された。大勢の観光客を乗せた巨大クルーズ船が乗り入れ、サンマルコ広場に危険なほど近づいて航行するのをこれ以上放っておけないからだ。政府は2012年に航路の変更を求める法令が定めたが、それが形骸化していることに住民の怒りは募るばかりだ。

By Pietro Lombardi