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[記者手帳]ソン・ヨンム、「理解しがたい世界」

6/29(木) 17:41配信

ハンギョレ新聞

「そういう世界があるんです。一般の人にはちょっと理解しがたいでしょう。一般庶民には…」

 法務法人「律村(ユルチョン)」から、雇用契約書も書かず毎月3千万ウォン(約297万円)ずつ、2年9カ月の間9億9千万ウォン(約9800万円)の諮問料を受け取っていたことをめぐり、ソン・ヨンム国防部長官候補者がメディアのインタビューで述べた釈明だ。28日、国会人事聴聞会に出席し,
「国民の目線では理解できないようで大変申し訳ない」と述べた。

 ソン候補者の言葉通り、彼をめぐる疑惑と釈明は一般庶民らには理解しがたい。長女が父親の勤務した国防科学研究所に就職した。実力があったのかもしれない。しかし、花盛りの時期を就職活動やコンビニのアルバイトに明け暮れる子どもを見て、貧しい親のせいだと思ったことのある庶民の目には、特別待遇に映る。ソン候補者が“ちょっと理解しがたい世界”だ。

 飲酒運転をした。血中アルコール濃度0.11%、免許取消しの水準の泥酔状態だ。ところが何の処罰もなく、問題なく昇進もした。聴聞会で彼は「26年前の若気の過ちだった」とし、「深く反省している」という言葉を繰り返した。しかし、なぜ大統領府の人事検証の時、チェックリストの飲酒運転の項目にこの事実を書かなかったのだろうか。長官への欲のために、大統領府の人事検証基本アンケートさえ嘘の回答をしたにもかかわらず、彼は「すっかり忘れていた」と主張した。一般庶民には“理解しがたい世界”だ。

 いくらもらえるかも知らず、雇用契約書も書かなかったが、法務法人「律村」がすすんで毎月3千万ウォンを払った。それも毎月300万ウォンに車両まで提供した国防科学研究所と兼職した。その後30カ月間、防衛産業メーカーLIGネックスワンから毎月750万~770万ウォン(約74万~76万円)ずつ、諮問料を2億4千万ウォン(約2380万円)受け取った。しかし、聴聞会に出た国防科学研究所の関係者は兼職許可が正当だったかどうかはっきり答えられない。律村と防衛産業関係者も「内部規定によって待遇した」という答弁ばかり繰り返した。毎日12時間ずつ働きながら最低賃金が保障した時給ももらえない労働者やアルバイトの学生たちには“本当に理解しがたい世界”だ。

 6月11日、ソン・ヨンム国防長官候補者を指名し、大統領府がまとめた資料にはこのようなくだりがある。
 「※北朝鮮の核とミサイルの脅威に対する対応力を強化し、強い国防、陸・海・空3軍のバランス発展、国民に信頼される軍組織の確立など中長期の国防改革を推進する適任者」

 “理解しがたい世界”だ。法務法人と防衛産業業者から数億ウォンの諮問料を受け取り、軍納不正捜査のもみ消しの疑惑を受け、泥酔の飲酒運転の事実を大統領府の検証の段階で隠した人物がはたして「国民に信頼される軍組織の確立など中長期国防改革を推進する適任者」なのだろうか?国防部内外ではすでに「彼がキム・ビョングァンのケースになるのではないか」と囁かれている。2013年、朴槿恵(パク・クネ)政府初代国防長官候補者に指名されたキム・ビョングァンは、国会人事聴聞会を終えたが、武器仲介業者の顧問として2年間に2億ウォンの諮問料を受け取ったことなどが問題となり、指名から37日で辞任した。

 高級公職を務めようとする者は、欠陥が明らかになる時、身のふり方をきちんとしなければならない。組織に負担となり、国益を損なう恐れがあるためだ。申し訳ない気持ちでさっと身を引く人を見てみたいものだ。自分が国防長官になることを不都合に思う人がいると答えたソン候補者は、そのような考えはないようだ。彼の嘘を問題にしたり検証の弱点を省察せず、「民間人を査察しなければ残らない資料」と言う大統領府関係者にも失望した。彼らにとっては、泥酔運転の事実が明らかになったことは改革反対勢力による逆襲と思われるかもしれない。しかし、この辺で言いたい。「そんな世界があるんです。地位の高い方々にはちょっと理解しがたいでしょう。一般庶民にとっては簡単なことですが…」

シン・スングン政治エディター(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:6/29(木) 17:41
ハンギョレ新聞