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賃貸管理のプロに聞く[3] 意外と多い「漏水」被害。被害者、加害者になったらどうする?

6/29(木) 7:31配信

SUUMOジャーナル

ひとごとだと思っていると、いざ遭遇したときに困るのが、漏水。漏水なんてそんなに頻繁に起こるの?と思われるかもしれませんが、私たち管理会社勤務の者からしたら毎月遭遇してしまう困った事象です。
ひとくちに漏水といっても、実はさまざまな原因がありその対処方法も違います。
大切な暮らしの場において、ぬれてほしくないものや場所がぬれてしまうというのは本当に困るもの。
ましてや、自分のミスで他人に被害が及んだとしたら、慌ててしまいますよね。
万一被害に遭ったときに冷静に対処できるよう、また、実際に自分が加害者になることがないように、実際に起こった事例を元に知識を得ておきましょう。

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■水まわりの劣化で起こる「チョロチョロ漏水」は、経験する人も多い

一番頻繁に起こるのが、キッチンや洗面所、浴室の水栓部分や、トイレのタンクや便器の内部でチョロチョロと水が漏れ出て止められないケース。これはパッキン交換や部品交換で直ることが大半ですので、管理会社や大家さんに連絡してください。

水の量が多い場合は、修理の業者さんが到着するまで給水の元栓を閉める応急処置も有効です。マンションなど世帯数が多い集合住宅であれば玄関ドア脇のパイプスペースに、アパートであれば共用部の地面のメーターボックス(青いふたが多い)内にあるのが一般的です。元栓には大抵はハンドルが付いており、右回しでお部屋全体の給水を止水できます。

■帰宅したら部屋がぬれていた!という事件が今日もどこかで起こっている

自分の部屋の内部の見えている部分で起こる漏水と違い、漏れている箇所が見えないのが上階からの漏水です。われわれ管理会社には「帰宅したら床がぬれていた」、「天井から水が垂れている」などのご連絡が入ることがあります。原因が分からないだけでなく、家財がぬれるなどの被害もあるため緊急対応が必要です。

上階からの漏水の原因でわれわれがまず最初に疑うのが給水管。給水管が老朽化して小さな穴(ピンホールと言います)が空いてしまい、そこからシューッと継続的に水が漏れているケースや、給水管のジョイント(つなぎ目)が緩んで漏水しているケースなどが考えられます。
この場合管理会社は、下の階の漏水箇所にバケツを置いたり養生するなどの応急処置を施すと同時に、上階のお部屋に訪問し、事情をお話しして水道の元栓のバルブを閉めさせていただきます。天井裏に水がたまっているのでしばらく水は止まりませんが、徐々に収まってきます。

排水管が原因の場合は上階が水を使ったときだけに漏水が生じるため、下の階への漏れ方も多少変わってきます。漏れる量が少なくても、排水が漏れてくるというのは被害者側としては気分が良くないですし、トイレの排水から汚水が漏れるケースでは衛生上の問題も出てくることから、早急な対処が必要なことには変わりありません。

漏水の原因が特定できて修理が済んだら、ぬれた箇所の乾燥を待ってから必要に応じて壁ボードや壁紙を張り替えて対応は完了です。

ぬれた家財は被害に応じて家財保険を適用しますが、写真を撮影せずにぬれたものを処分してしまって保険金申請のときにお困りになる方が時々いらっしゃいます。汚水被害の場合などはぬれたものをすぐに捨てたい気持ちになりますが、そこはひとつ冷静に。保険会社ごとに手続きが異なりますので、加入している保険会社に確認してから処分するようにしてください。

■気が付かないうちに発生した漏水が、カビや結露の原因になることも

自分の住んでいるお部屋が1階だったり、漏水が壁の裏側を伝って階下の部屋には出ないケースなど、漏水していることがどこからも見えない場合もあります。そういうときには「使用水量」が急に増えますので、水道局から「漏水していませんか」と連絡が来たり、お住まいの方から「水道代金が急に高くなった」とご相談を受けて発覚します。
そうなると気になるのは水道代金です。過去には数万円の請求が来てしまった入居者さんもいらっしゃいます。自治体によっても違いますが、減免措置が講じられている水道局も多く、漏水修繕連絡票や漏水減額申請書などの書類を修理した業者さんに渡して記載してもらい、提出すれば、水道代が減免されることも多いのです。諦めて支払う前に、管理会社や水道局に相談してください。

私が過去に経験したケースでは、マンションの3階に入居していた方が退去する際、電気屋さんに依頼せずにご自分で温水洗浄便座を取り外したために後から水漏れしてしまい、漏れた水が壁の裏側を伝って3階~1階までのお部屋の床下に水がたまり、数カ月間発見されなかったことがありました。梅雨時期だったために各部屋に相次いでカビや結露が発生して発覚。通報を受けて現地を訪問したら、床下点検口から見える景色がプールのようになっていてとても驚きました。見えない漏水はこのようにカビや結露から発見されることも多いので、異常を感じた場合は管理会社や大家さんにご相談くださいね。

ちなみにこのときは、退去された方が加入していた保険に付帯していた「借家人賠償責任保険(特約の場合もあり)」が過失による漏水を補償していたため、それを使用して約700万円もの損害額がカバーされました。もしこの方が保険に加入していなかったら、この高額な賠償金は支払えなかったと思います。

■自分が加害者になってしまうのはどういうとき?

自分の過失が原因で階下のお部屋が漏水して、お住まいの方に迷惑をかけてしまう場合もあります。

一番多いのが、洗濯機のホース外れ。きちんと設置していたつもりがだんだん緩んで蛇口から排水ホースが外れ、全自動洗濯1回分の大量の水が流れ出してしまうのです。うちには防水パン(洗濯機の床部分に設置されている四角い水受け)があるから大丈夫!と思いきや、排水口に糸くずやホコリが詰まって水が防水パンからあふれてしまう場合もあります。お住まいの集合住宅で排水管清掃が実施されている場合はぜひ積極的に受けていただきたいですし、行われていない場合はご自分でたまに清掃するか、掃除が大変な場合はせめて糸くずやホコリが詰まらないように、洗濯機のフィルターをこまめに清掃してください。洗濯機を設置するときにかさ上げ台を設置しておくと、後の掃除が楽になりますよ。かさ上げ台はホームセンターでも売っていますし、通信販売でも手に入ります。

また、給水ホース外れのときに自動で水が止まる洗濯機用水栓も増えており、私たち管理会社もリフォームのときに旧タイプの水栓から交換提案することが多くなっています。水漏れ防止ストッパーが付いているので万一のときにも安心です。洗濯機の水栓の蛇口の形が歪んでいるお部屋を時々見かけますが、これは前の入居者さんがホースを設置したときに旧タイプの4つネジニップル(洗濯機を買うと付いてくる)で止めた跡がへこんでしまって起こる現象です。その歪み部分が漏水の原因となりますので、築年数が古めの物件に住んでいる方はお住まいのお部屋の水栓をチェックしておくと安心です。
万一階下に被害が出てしまった場合でも、家財保険に付帯している「個人賠償責任保険(特約の場合もあり)」でかなりの部分がカバーできます。

■私が過去に見た一番気の毒な加害者は……

私が過去に遭遇した漏水事件で一番悲惨だったのは、とある単身向けマンションにお住まいの若い女性が起こしたものでした。

彼女は仕事が大変忙しく、遅くまで働き、クタクタの状態で帰宅する毎日を送っていました。ある日、同じように疲れて帰宅した彼女はお風呂に入ろうとバスタブにお湯をはり始めたのですが、疲れからうっかり眠り込んでしまったのです。玄関ドアを激しくノックする音で目覚めた彼女の目に映ったのは、浴室からあふれ出したお湯が部屋の床を流れ玄関まで水浸しという嘘のような光景でした。玄関ドアを叩いていたのは階下に住む大家さんで、ご自宅の和室がびしょぬれだと言うのです。古いマンションで自動湯はり機能がなくお湯が出続けてしまったこと、忙しく働いていた彼女が掃除を怠ってしまい、浴室の排水口に髪の毛が詰まり流れにくくなっていたことが原因でした。

夜中の2時過ぎのことでしたが、知らせを受けて慌てた大家さんの息子さんからも私の携帯電話に着信がありましたし、夜間のメンテナンス部署も緊急出動して対応に当たりました。現場出動した社員に後から聞きましたが、デッキブラシで掻き出すほどの水量だったそうです。
かわいそうに彼女はすっかりうろたえてしまい、冬なのに裸足のまま廊下で泣いていたとのことでした。私自身も、深夜に電話口で聞いた大家さんの息子さんの「水がー!水がー!!」という声が今でも忘れられません。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。このかわいそうな彼女を救ったのも家財保険だったのです。

住宅設備はどうしても劣化していきますので、水漏れは誰のお部屋でも起こる可能性があり、いつ何どき被害者になってしまうか分かりません。ましてや、共同住宅に住んでいれば、自分の過失で大家さんのものである建物や、階下の入居者さんの大切な家財に被害を与えてしまうことも十分に考えられます。

漏水が起きる原因を知り、自分が加害者にならないようにすることも大切ですが、万一のときのために保険に加入しておくことを強くお勧めします。

賃貸住宅に入居する人のための保険は、賃貸住宅のお住まいの方に起こるであろうさまざまなトラブルに合わせてつくられており、2年間で2万円前後のものが中心です。賃貸借契約時に「建物のオーナーが保険に入っているから自分は入らなくて大丈夫なのでは?」と聞かれることも多いですし、「ずっと無事故で保険料を払っても意味がないから」と保険契約を更新しない方も時々いらっしゃいますが、それは大きな間違いです。

今回お話した例のように、わずか2万円の保険が万一の大きな被害をカバーしてくれることを考えれば、お安い物です。これを読んでヒヤッとした方は、ご自分の加入している保険が切れていないか、また、保険の保障内容がどうなっているかを確認してくださいね。

谷 尚子 賃貸住宅での暮らし応援団
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

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最終更新:6/29(木) 7:31
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