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無料SIMとアプリで日本観光をサポート!訪日外国人向けサービス「WAmazing」

6/30(金) 7:00配信

アスキー

旅をするうえで欠かせない通信インフラの課題を解決し、かつ旅のコンシェルジュの役割を担うWAmazingの可能性を、同社の加藤史子社長にうかがった。
 2020年東京オリンピックに向けてますますの市場規模拡大が期待されるインバウンドビジネス。その中の1つWAmazing(ワメイジング)株式会社は、訪日外国人旅行者をターゲットとして無料SIMを配布し、観光サービスを提供するスタートアップ企業だ。
 
 旅をするうえで欠かせない通信インフラの課題を解決し、かつ旅のコンシェルジュの役割を担うWAmazingの可能性を、同社の加藤史子社長にうかがった。
 

ローンチから3ヵ月で月ごと2000~3000人が利用
 WAmazingは、モバイル通信SIMと、観光案内・予約ができるアプリがセットになった訪日外国人向け観光サービスだ。
 
 旅行者は自国であらかじめアプリをダウンロードし、個人情報やクレジットカード情報を登録し、QRコードを取得する。そして旅行当日、成田空港に到着したら、到着ロビーに設置されたSIMカード受取機にQRコードをかざして専用SIMが受け取れる。SIMは500MBまでの範囲で通信が無料。WAmazingのアプリ経由で追加データが購入できるほか、タクシーの配車や観光情報の提供も受けられる。
 
 2017年2月1日からサービスを開始したWAmazingは、4月末時点でアプリのインストール数が約2万5000件に達した。もちろん、アプリをインストールしても実際に訪日し、成田空港でSIMを受け取らなければならないため、受取者数は7500件ほどにとどまるが、これを1ヵ月に換算すると約2000~3000人もの訪日外国人に利用されている形となる。
 
 一方で、ホテルと空港間の送迎タクシーの予約や、専属カメラマンが同行するロケーションフォト、食事やチケットなど、観光商材の提供についても同社は力を入れている。加藤氏いわく、観光商品は社内用語で“屋台”と呼びながら提供している。「現在は無料SIMという花火大会を開催している状態。花火大会会場に集まってきた方に、チョコバナナや焼き鳥を売るように簡易な店舗を出して観光商品を提供している」(加藤氏)
 
SIMカード提供が空港の価値を高める
 インバウンド市場規模の拡大に寄せて、訪日観光客向け通信インフラの充実は大きな課題である。インターネットがなければ地図が見られず、調べ物もできない、SNSを使うことさえできない。旅行中の通信環境については誰もが悩むところだ。
 
 日本政府はWi-Fi環境を拡充する意向を示しているが、Wi-Fiはアクセスポイントから有効範囲がある一定に固定されている。旅行はあちこち歩き回るもの。旅先で立ち止まることなくデータ通信をするなら、現在のところ便利なのはSIMとなる。WAmazingが通信インフラの提供とOTA(Online Travel Agent)の機能を組み合わせたのも、こうした便利な通信方法が、空港から離れてしまうと入手できないという危機感がインバウンドの旅行者にはあるからだ。
 
 また、空港のあり方が変化しつつあることもWAmazingには追い風となっている。空港各社が、単なる空の玄関口からサービス業への業態転換を図り、飛行機の離発着以外の事業(飲食、物販、サービスなど)に力をいれていくという動きは、WAmazingのビジョンとも重なる。これまでただの経由地であった空港自体を楽しむ、空港でものを買うといった空港のビジョンに、WAmazingとして手伝えることがあるのではないか、と考え、WAmazingのアプリには空港情報を充実させる方針だ。空港側もそうした可能性に期待しているという。
 
 もちろんこのような流れは、空港だけではない。WAmazingリリースの背景には、日本の産業における「大きなトレンドの分岐点」があるという。
 
「WAmazing」リリースの背景
 年々訪日外国人の数は増え続け、日本国内におけるインバウンド市場の成長率は15~20%である。一方で2016年、日本の人口は初めて減少に傾いた。加藤氏はこの2つに言及し、「大きな社会的潮流の分岐点だ」と評する。
 
 じつはWAmazingを創業した背景もここにある。今後日本での人口減少の流れは避けられず、内需だけで経済を支えていくことは困難となり経済的活力の維持には外需(インバウンドによる観光消費も含まれる)を取り込んでいくことが必要になる。
 
 「私は前職で、じゃらんnetという宿泊予約サイトの立ち上げを2000年に経験した。かつてインターネットというツールの登場によって、社会がフラット化する、企業と個人が平等になるなど、個人の発言権が増していった。そんなとき、そうした動きに逆らわずユーザーの口コミを大切にすることでサービスが成長したという過去の成功体験があった。大きな世の流れ(2000年当時は、個人の発言の重要度が増すという流れ)にリンクしたサービスは成長する。今は、まさに日本に定住している人と同じくらい、訪日外国人観光客も大事なお客さんとして扱う時代に突入している」(加藤氏)
 
ユーザー数値目標500万人を達成するために
 WAmazingでは利用者のターゲットを、台湾・香港・中国・タイ・韓国を中心とした東アジア、東南アジアからの個人自由旅行者としている。2020年には訪日外国人旅行者が4000万人になる見込みだが、その数に到達するためには昨対比で15%ずつでの増加が必要となる。2016年の2400万人を前年の1974万人と比較すると21%の伸長となっており、成長は順調だ。
 
 2016年の2400万人のうち、個人旅行者は1294万人。今後はその割合がより増えるため、2020年に訪日外国人数が4000万人に達した場合、個人旅行者は2588万人になるとWAmazingでは試算をしている。特に内訳として大きくなるのは、中国大陸からの個人旅行者だ。
 
 現在日本政府では、中国人観光客に対しては、所得の高低により団体旅行用と個人旅行用、2種類のビザを発給している。今後、高所得者層の増加が見込まれる中国からは個人旅行者がより増えるというのが加藤氏の予測だ。
 
 現在、香港、台湾だけでも600万人の訪日外国人客がいるため、WAmazingが今期の目標とする10万人のユーザー獲得については十分なパイであるといえる。しかし、長期的な目標としては中国からの個人旅行者獲得に取り掛かる必要が生じる。「中国戦略に関してはニッチでもいいから日本のコンテンツとしてこのジャンルNo.1、というコンテンツ開拓に重きを入れる」(加藤氏)
 
 長期的な視野として、WAmazingは2020年の段階で、その年の利用ユーザー数500万人を目標として掲げている。達成のため、今後さまざまな施策を仕掛ける予定だ。
 
 たとえば現在はiOSにしか対応していないアプリは、今後Android版をリリースする。WAmazingがターゲットとしている台湾、香港ではAndroid端末の方がシェアが高い。台湾は80%、香港では65%が実にAndroidユーザーでスマホ普及率も日本より高い。Android版をリリースすることで対象ユーザーが3倍となる。
 
 また現在のWAmazingが実施したユーザー対象アンケートによると、「WAmazingを誰かに教えましたか?」という問いに対し、「直接知人に伝えた」という回答が実に77%。ほかにも、「SNSで投稿した」が8%、「ブログに書いた」が3%と、口コミでの拡散が強いサービスであることを裏づけるデータが得られた。訪日回数も2回以上を数えるリピーターが約9割を占め、より旅慣れている個人旅行者が利用している印象だ。
 
SIMを使ったビジネスの新たな可能性
 WAmazing代表の加藤氏は、もともとはリクルートのデータアナリストだった経歴をもつ。実際にコンサルティングや調査で触れていたデータから、いま立ち上げるべき市場が見えていたが、そこを押さえるサービスがまだ黎明期で数少ないと感じ、自ら会社を立ち上げた。その背景には定量・定性両面でのデータが軸にある。
 
 インタビュー中も同社のすべてのアクションにはデータ裏付けがあり、加藤氏の見ている視点自体が非常に興味深い。実際の訪日旅行者の動きの変化も忘れておらず、定期的に旅行者へ実際の面談も行なって定性的なインサイトも取得している。
 
 通信環境という日本ならではの課題へのインセンティブの一方で、実際の旅行の2~3ヵ月前からユーザーへの情報発信を行ない、事前でのサービス落とし込みができるのがWAmazing最大の強みだ。
 
 これを実現しているのは、ソラコムとの連携によって提供されているSIMだ。使用可能期間や容量、利用者ごとのコントロールなど、ソラコムのSIMとの出会いが現在のビジネスモデルの背景にある。WAmazingに限らないが、スタートアップでも使えるプラットフォームとして、このようなSIMを使ったビジネスはもっと増えてもいいはずだ。スマホをそのままIoTデバイスにできるメリットに眠る可能性は大きい。
 
 WAmazingの料金プランは現在、500MBまでは無料、追加データを購入する場合は500MBで999円、1GBで1500円、1.5GBで2000円となっている。今後も一定のデータ通信量まで無料というスタンスは変わらないと加藤氏は話す。
 
 また、アプリ内コンテンツの充実を図るため、ユーザーインタビューを通して旅行者同士で相互に相談できるコミュニティーの形成、訪日経験のある旅行者の日記や経験談を閲覧できるスペースを設けるなど、内容のブラッシュアップも検討している。
 
 WAmazingユーザーがアプリで会員登録する際には、国籍、性別、使用する空港、旅行期間、基本的な旅行に関する情報と、旅行者本人に関する情報に加え、タクシーの配車機能にGPS許諾を取得しているため、ユーザーの国内での大まかな位置情報を把握することができる。しかし、そうしたデータを扱うには相応のリソースが必要だ。
 
 そこはベンチャーの領域ではないと判断する加藤氏は、「今はよりユーザーを拡大して商材を拡大し、出会いを最大化していくというプラットフォーム方面に一旦フォーカスするとき。将来的にはそうしたビッグデータ分析なども視野にしたいが、今は実ビジネスをしっかりやっていきたい」と話す。インフラ問題の解決と観光商品の提供という2つの柱で、WAmazingがインバウンドビジネスの中で抜きん出た存在になる日もそう遠くない。
 
●WAmazing(ワメイジング)株式会社
2016年7月設立。SIMカード提供も含めた訪日外国人旅行者対象のスマートフォン向けアプリサービス『WAmazing』(ワメイジング)を運営。
資金調達に関しては、銀行からの借入れが主。
スタッフは2017年6月現在で25名(業務委託、インターンを含む)。事業開発やアライアンスを担当するビジネスデベロップメント人材、エンジニアなどを募集中。
 
 
文● 鹿野恵子 聞き手・編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

最終更新:7/10(月) 17:17
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