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足立梨花も応援するソーラーカー、オートクルーズと無段変速機構も搭載

6/30(金) 6:55配信

MONOist

 工学院大学は2017年6月29日、東京都内で会見を開き、新開発のソーラーカー「WING(ウイング)」を披露した。オーストラリア大陸の約3021kmのコースを縦断する「2017 Bridgestone World Solar Challenge(以下、WSC2017)」に参戦するための車両で、「右に倣うことのない、保守的とは真逆の攻めたデザイン」(同大学 工学部機械システム工学科 准教授の濱根洋人氏)を採用している。

【「ウイング」と足立梨花さんなどその他の画像】

 工学院大学チームの応援大使に就任した女優の足立梨花さんも「見た目が丸っこくてかわいらしい。でも何だか速そう」という感想を持ったウイングは、“自然との共存”をコンセプトにデザインされた。丸みを帯びたコックピットに、車両名称の元になった羽(ウイング)のような3D曲面の太陽電池パネルが搭載されている。「他のチームは、ソーラーカーで一般的なカタマラン(双胴)型のデザインを採用することになるだろう。それとは一線を画すデザインだ」(濱根氏)。

 WSC2015では、「実用的で安全なソーラーカー製作」というビジョンに合致する、2人乗り以上が対象となる「クルーザークラス」に参戦した工学院大学チーム。新開発のウイングで臨むWSC2017では、WSCの冠クラスである「チャレンジャークラス」に復帰する。

 学生キャプテンの中川拓朗さんは「前回のクルーザークラスで最速タイムを記録した(ペナルティによる減点のため準優勝に終わった)こともあり、速い車両を作りたいと思った。速さを求めるなら、速さだけを競う冠クラスのチャレンジャークラスで勝ちたい。チーム全員の意思が一致した上で復帰を決めた」と説明する。また、WSC2017の規則変更によって、クルーザークラスでは走行タイムがほぼ考慮されなくなった影響も大きい。

●エネルギー効率を犠牲に他車両を追い抜く「可変界磁機構」

 WSC2017では、チャレンジャークラスも規則変更があった。従来の規則では、車体サイズは4.5×1.8m、太陽電池パネルの面積は6.0m2だった。WSC2017では、車体サイズが5.0×2.2mと大型化する一方で、太陽電池パネルの面積は4.0m2と小さくなった。ただし「速さを競う」という点に変更はない。

 WSC2015に引き続き、工学院大学チームを多数の企業がサポートしている。車体を構成する炭素繊維強化樹脂の素材や製造プロセスは帝人グループが提供。GHクラフトにおける車体製造は、学生たちが2カ月間泊まり込んで行ったという。

 ソーラーカーレース専用の低燃費タイヤと太陽電池パネル用フィルムはWSCの冠スポンサーを務めるブリヂストンが、太陽電池パネルはサンパワー(SUNPOWER)が、丸みを帯びたウインドスクリーンは植木プラスチックが、設計に用いた3D CADツールはSOLIDWORKSが、サポートカー車内の騒音を抑えるノイズキャンセリングシステムとなる補聴器はシバントスが提供している。

 これらの中でも興味をひいたのが日立金属のアモルファス合金コアを用いるスペシャルモーターだ。モーターシステムの開発はミツバが担当した。このスペシャルモーターは、ソーラーカーでは珍しい、速度を一定に保つことができるオートクルーズ機能を搭載している。速度制限ぎりぎりでアクセルとブレーキを制御し続ける必要のあるドライバーにとって、オートクルーズ機能は負荷や疲労を減らすことができて有益だ。

 さらに、他の車両を追い越しやすくするため、ステーターを軸方向にスライドさせて有効磁束を小さくし、モーターの回転速度を高められる可変界磁機構を搭載した。「一般的なエンジン車における無段変速機(CVT)をイメージすると分かりやすい」(ミツバの説明員)。

 ステーターの突出量が0mmのトルクモードの場合、モーターの回転速度は751rpm、最大効率は94.0%。ステーターの突出量が20mmのスピードモードでは、モーターの回転速度は1079rpmに上がり、最大効率は89.5%に下がる。エネルギー効率は犠牲になるものの、他の車両を追い抜くための仕掛けを用意したということだ。

 ただし、機能を追加するということは、高温や振動など厳しい環境に置かれるソーラーカーレースにおいて故障の原因にも成り得る。実際のレースでどのような効果を発揮するのか注目だ。

最終更新:6/30(金) 16:52
MONOist