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韓国新大統領が問題視する組織が、若者に人気の就職先に

6/30(金) 13:00配信

ニュースソクラ

高支持率の文大統領が抱える厄介な内政問題、若者の就職難 韓国

 文在寅新大統領が、誕生して一カ月半を超えた。朴槿恵前大統領と違って、情報公開に努めており、支持率も8割を越える人気を維持している。

 外務大臣の人事で手間取ったこともあって本格的な外交はまだできていないが、内政での課題は多い。中でも若者の就職難解消がもっとも高い関心が集まっている。

 韓国統計庁が5月11日に発表した「4月の雇用動向」によると、15歳~29歳の若年失業者数は約50万5000人で、失業率は11・2%と過去最悪ペースだった。全体の失業率は4%程度なので、若者の失業率がいかに高いか分かる。

 若者の大企業志向が強く、サービス業を避ける傾向があるためなどと分析されている。文大統領は、公務員拡大など公共部門で81万人の雇用創出を掲げているが、効果を挙げるのは、まだまだ先になりそうだ。

 そんな中、熱い注目を浴びているのが、意外にも「国家情報院」だ。大統領直属の情報機関である。

 韓国紙・東亜日報は今年1月、「『国家情報院に就職したい』若者にフィーバー」という記事を掲載した。国情院の採用試験に備えて名門大生を中心に「勉強会」が青次いで作られているという内容だった。安定していて「大企業並みの給与」(国情院の説明)が人気の秘密だという。競争率は50倍にもなるが、人気は高まる一方だ。

 国情院の予算は秘密で、給与についても詳細な発表は行われていないが、韓国紙・朝鮮日報(2010年9月17日)によれば、職員の離婚訴訟の場で、その一端が明るみに出た。この訴訟は、国情院の職員を夫を持つ女性が、財産分与を求める中で、給与の実態を暴露したものだ。

 同じクラスの公務員の給与にプラスして、「情報費」が支給されている。これは公務員の基本給に相当する額だという。一種の危険手当のような性格もあるお金だ。さらに情報への報奨金として「情報加算」という上乗せや家族手当も充実しているといい、「手取りは他の公務員の2倍」という。

 さらにドラマも、人気に拍車をかけている。2010年に日本でも公開された「7級公務員」は、国家情報院のスパイであるカップルが巻き起こす騒動を描くアクション・ラブ・コメディで、韓国で大ヒットした。7級というのは、7級は日本の国家2種職を意味する。

 一方で国情院には暗いイメージもまとわりついている。軍事独裁時代には、反体制派の弾圧を行ったほか、大統領選挙などに介入して、特定候補のネガティブな情報をネットに流すなどの工作をしていたとされる。

 最近では韓国国会によって弾劾訴追された朴槿恵・前大統領の罷免の可否を審理した憲法裁判所に対し、国情院が、秘密里に情報を袖手していたと報道された。電話やSNS(ソーシャルネットワークサービス)を対象に、盗聴も行っているとされる。

 国情院の任務は北朝鮮やテロに関する情報収集に限定されているが、今も広範囲に活動しているのは間違いない。

 国民からの批判を意識し、選挙戦中から改革を約束していた文大統領は6月1日、国情院の新院長に任命した徐薫(ソ・フン)氏に対し、「まず国内政治への介入を徹底的に禁じるべきだ。国民と何度も約束したので必ず進めてもらいたい」と指示した。

 文氏は、学生時代、軍事独裁政権と闘い、拘束や投獄の経験も持つ。その当時暗躍していた情報機関が就職先として人気が出るとは、想像できなかったに違いない。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にした。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:6/30(金) 13:00
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