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自動運転車、死亡事故ゼロの日は来るか?

6/30(金) 14:17配信

ウォール・ストリート・ジャーナル

 自動運転車に関する話題は尽きることがないが、その中で最も目を引くものは人々の命に関わるものだ。自動運転車は米国で年間数万件も起こっている交通死亡事故を劇的に減らす――あるいは完全になくすことさえ――可能かもしれないと指摘する声は多い。

 米運輸省道路交通安全局(NHTSA)によると、すべての交通事故の94%は人為的なミスによるものだ。自動運転車が変革をもたらす可能性が高いとメーカーや規制当局者が考えているのはそのためだ。ドライバー不在の自動車がひとたび大量に道路を走るようになれば、車両同士が通信しあって交差点を走るようになるため、信号が不要になるという。「止まれ」の標識で停止するのを忘れたり、誤って赤信号で進入したりするような人為的ミスが問題ではなくなる可能性がある。

 もちろん、安全面で恩恵がもたらされ始めるのはいつなのか、あるいは期待通りにそれが成功するのかどうかは今後を待たねばならない。研究者らによれば、それを左右するのは自動運転技術の進歩のスピードや、自動運転車が普及するまでに要する年月、そして過渡期――自動運転車と人間が運転する車両が道路に混在する状態――に何が起きるかだ。

 「まだ分からないこと膨大な数にのぼる」。ミシガン大学交通研究所の研究者ブランドン・ショートル氏はそう話す。自動運転車が販売されるまでにあと10年かかる可能性があり、ドライバーの大半が乗るようになるには、さらに20年から30年かかる可能性があるという。

 過渡期には「プラス面とマイナス面があるだろう」が、「本当に大きなメリットが得られるのは、自動運転車が標準となる遠い未来だ」とショートル氏は話した。

ボルボ車は死亡事故ゼロに?

 米連邦政府は昨年、自動運転車の開発に関するガイドラインを発表した。運輸省は現在、数多くの利害関係者から収集したフィードバックを盛り込んだ修正案の策定に取り組んでいる最中だ。同省はバラク・オバマ前政権時代に、交通死亡事故を30年以内になくすという目標を設定した。

 スウェーデンのボルボ・カーはさらに一歩踏み込んでいる。同社が製造する新車は2020年までに、自動運転技術によって死亡事故を起こさない車両になっていると表明したのだ。同社の北米部門を統括するレックス・ケルセメイカース氏は、交通死亡事故をなくすための「あらゆる技術を持っている」と話した。

 自動ブレーキや死角検知機能といった衝突回避技術の導入が進めば、理論的には交通事故による死亡・負傷件数が減るはずだ。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)による2015年の研究によると、新車を購入する際に高度な運転支援システムを搭載した車両を選ぶことで、米国で発生している全ての交通事故が28%減り、死亡者数は9900人減少するという。

 問題は、車両自体はかつてないほど安全性が高まったとはいえ、運転する人間が携帯電話でのメールのやりとりや運転中の飲食などで、かつてないほど注意力散漫になっていることだ。米調査会社オートパシフィックのアナリスト、デーブ・サリバン氏は「人間が関わっている限り、事故は常に起きる」と話した。 

完璧なものはない

 電気自動車(EV)メーカーの米テスラはすでに一時的に自動運転が可能な車両を製造しているが、まだ完全な自動運転車両ではない。同社の半自動運転システムは一定の条件下で進行・減速・徐行・車線変更ができる。しかし昨年、フロリダ州の幹線道路でこの機能を利用して走行していたテスラ車がトレーラーと衝突し、テスラ車の運転手が死亡する事故が発生。このため自動運転機能に厳しい目が向けられることになった。  

 「死亡者がゼロになることはない」。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は昨年9月、電話会議でこう述べた。「世界は非常に広く、膨大な数の人がいるうえ、(事故の)状況も膨大な数にのぼる。死亡の可能性を最小限にとどめるというのが目標であり、完全な安全という幻想をもつべきではない」

 技術への信頼に関わる要因に加え、コストの問題もある。とりわけ今は、米国民が同じ車両に乗り続ける期間がかつてないほど長くなっている。調査会社IHSマークイットによると、2016年の自家用車と小型トラックの平均経年数は11.6年だ。車両の品質が向上していることを踏まえると、この数字は延びる一方とみられる。つまり、自動運転技術が完全に開発された後でも、一般消費者が広く自動運転車を受け入れるようになるのは、ずっと先のことになりそうだ。 

By Adrienne Roberts