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従業員が「ボーナス」を請求できるケース 賞与は会社に都合が良いのか?

7/1(土) 10:40配信

ZUU online

7月に入り今年の夏のボーナスを受けり始める方も多いことだろう。その一方、「勤務先の業績不振で、ボーナスの額が減った」という人もいるはずだ。実はボーナスは、企業にとって非常に都合のいい仕組みなのである。今回は、その仕組みについて解説したい。

■ボーナス(賞与)とは何か 語源と意味、そして歴史

ボーナスの語源は、ラテン語の「bonus(ボヌス)」で、これは「ラッキー」「良い」という意味で、ローマ神話の成功と収穫の神の名前から由来すると言われている。欧米では特別配当や報奨金の類として扱われているが、日本では次のような意味合いがあると考えられている。

1.賃金の後払い
2.将来の利益貢献に対するインセンティブ
3.利益配分

賃金の後払いというのは、後に詳述するが、端的に言うと「縛りのきつい固定給与に比べて柔軟性の高い給与」という意味である。

将来の利益貢献に対するインセンティブというのは、企業の決算利益と従業員への報酬を連動させることでやる気を出してもらおうというものだ。従業員へのストックオプションと類似すると考えてよい。そして利益配分というのは、企業の利益を従業員に広く分配することで、雇用促進につながるという考え方のことだ。

それぞれの意味合いの強弱は、時代とともに変遷していく。成果主義人事傾向が高まった1990年代は、2.の要素が濃厚だったが、それもある程度収まった現在は、1.と3.の要素も軽視できない様相になってきている。

なお、日本でのボーナスの起源は、1876年(明治9年)、熾烈なビジネス戦争で奮闘し勝利をもたらした従業員に報いるべく、三菱会社が支払った賞与にあるとされている。が、実際には、江戸時代からボーナスに類似した報酬は存在していた。商家での丁稚や手代に対し、正月には餅代が、お盆の頃にはお小遣いなどが支払われており、その支払額算定には、勤続年数や勤務実態などが考慮されていたのである。

■ボーナスは企業に都合がいい 縛りがないから利益調整ができる

本記事の冒頭で「ボーナスは企業にとって非常に都合のいい仕組み」と述べた。具体的にはどのようなことなのだろうか。これについては、法律面から考えていく。

まず、賞与は、厚生労働省において、次のように定義がなされている。

「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであり、その支給額があらかじめ確定されていないもの」(昭和22年9月13日発基17号)

ただし、定義がなされているだけであって、賞与の支給の有無や支給基準に関しては労働法上、特段の規定はない。つまり、通常の固定給と違い、賞与は雇用主において支払い義務はないのである。言い換えると、ボーナスの支給条件は、会社の裁量によって決めることができるのである。

好況などの影響により、企業の決算が黒字になった場合、賞与を払うことで、従業員の士気を高め、節税などを行うことができる。逆に、不況などにより赤字決算になった場合、賞与額を下げたり、あるいは支払わなかったりすることで、企業の経営活動の維持を図ることができる。こういったその場その場の都合による支払いの有無や支払額の上げ下げは、固定給ではできない。なぜなら、労働法上の規定が厳格だからだ。そのため、固定給を低めにし、賞与を多めに見せることで、求人でも年収額を多く見せることもできる。

こういった柔軟性から、賞与というシステムは企業に都合が良いのである。

■ただし、賞与が企業の不便になることも 労働契約に要注意

とはいえ、企業経営が安定し、規模が大きくなってきた場合、賞与を社長の胸先三寸で決めていたら、かえってマイナスになるだろう。従業員は根付かなくなるし、結果、プロジェクトを長期的に、かつ大規模に行うことは難しくなるからだ。そのため、一般的には、企業経営が安定し、規模がある程度大きくなってきた場合には、就業規則などで賞与の規定を設けることが多い。よしんば規則がないにしても、年に2回、賞与を支給することが慣行となるケースも珍しくない。

では、こういった企業が、ある年突然「不況になったからボーナスの支払いは取りやめます」と宣言したら、それは通用するのだろうか。この場合、実は企業にとっての「賞与の都合の良さ」が消える。つまり、支払い義務が発生するのである。理由は、「労働契約が発生している」とみなされるからだ。

労働契約とは、労働協約や就業規則など、労働者側と使用者側が雇用・被雇用の関係になるにあたっての双方の合意である。ここに賞与の支払いの旨や支給基準が定められている場合、この点について、労使双方で合意があったものとみなされる。そのため、もし、労働契約に賞与規定があるにも関わらず、支払いがなされなかった場合には、それは契約違反となり、労働者側には賞与請求権が発生することになる。

ここで「契約さえなければいいんでしょ」という声があがりそうだが、それだけでは収まらない。10年以上にわたって年2回賞与が支払われるといった確立した実態がある場合、この事実に基づき、賞与に関する労使慣行が成立しているものとみなされる。

ここは労働法の考え方だけでなく、民法の第92条を適用して考える。つまり、決まった取扱いが長期に渡って行われ、かつ、当事者がそこについて暗黙の了解が存在していたと考えられるのだ。この状態から、労働契約が存在していたのと同等とみなされる。したがって、労働者側に賞与請求権が発生すると言えるのである。

なお、ボーナスの支給方法や支給額の定め方については、平等かつ合理的でなければならない。つまり、営業成績といった誰をも一律かつ平等に評価できる基準ではなく、「あの人は有給休暇を取ったから」とか「この人は労働組合を結成したから」といった主観的かつ差別的な理由でボーナスの内容に差をつけてはいけないのである。

ボーナスの額にホクホクするのもよいが、これを機会に、ご自身が働いている企業の仕組みや給与や賞与のベースとなっている労働法に関心をよせてみてはいかがだろうか。

鈴木 まゆ子 
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「税理士がつぶやくおカネのカラクリ」

最終更新:7/1(土) 10:40
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