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絶望と恐怖…映画「ハクソー・リッジ」が描いた戦争のリアル

7/1(土) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 沖縄戦の激戦地、前田高地の戦いにおける感動の実話を描いた戦争映画「ハクソー・リッジ」が話題になっている。「ハクソー・リッジ」とは“のこぎりで切ったような断崖”を意味する前田高地の米軍側の呼称。150メートルの絶壁の頂上を日米両軍が奪い合う壮絶な戦闘シーンは、肉片と血しぶきが飛び交う地獄絵図のごとき残酷描写で、内外の批評家が「プライベート・ライアン」(98年)のノルマンディー上陸シーン以来の壮絶さと太鼓判を押している。激しい演出の意図について映画批評家の前田有一氏がこう解説する。

「監督のメル・ギブソンは、スコットランド独立の戦いを凄惨な戦闘描写で見せた『ブレイブハート』や、ショック死する観客まで出たキリストの拷問シーンで物議をかもした『パッション』など、R指定を怖がらない挑発的な演出が評価されています。日本ではPG―12指定となった本作でも、極力CGを使わず本物の爆発の中で役者たちを演技させ、戦場のリアリティーを表現しようとしています」

■主人公は「究極の反戦主義者」

 そのメル・ギブソン監督が「そろそろ真の英雄を称賛してもいい」と敬意を表するのが本作の主人公デズモンド・ドスだ。彼は愛国心から米陸軍に志願したものの「人殺しの道具である銃は絶対に手にしない」宗教的信条を表明し、同僚や上官から激しくイジメられる。それでもへこたれず衛生兵として最前線に赴いたドスは、敵の激しい残党狩りが行われている前田高地の戦場にたった一人で突入し、驚異的な活躍を見せるのだ。

「周囲三百六十度から弾丸と手りゅう弾が飛んでくる、絶望と恐怖しかない戦場のど真ん中。そこで非武装の、いわば究極の反戦主義者というべき男が歴史に残る奇跡を起こすのです。目をそむけたくなるほどの苛烈な戦場描写が、ドスの勇気と気高さを際立たせており、見事な演出効果と感動を生み出しています」(前出の前田氏)

 戦後、米軍と米政府はドスの行動に対して名誉勲章と最大限のリスペクトを捧げた。