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「デジタル革命で、金融機関の雇用減少は不可避」オランダINGの改革

7/1(土) 12:10配信

ZUU online

オランダの総合金融機関、INGグループは、デジタル・バンキングの先駆けとなった「ING Direct」や、915億円という巨額の資金を投じたデジタル組織改革、SNS決済アプリの開発、他国際大手とのネットワークを駆使したアクセラレーター・プログラムなど、老舗FinTechならではの底堅い動きで、「FinTechのアーリー・アダプター(初期採用者)」として知られている。

一方で、経営陣が大手メディアに対しデジタル革命を進めることで自社の雇用減少が不可避であることを語るなど、ドラスティックな動きでも知られる。直近ではテクノロジーへの投資とともに、7,000人という大規模な人員削減を計画していることが報じられた。INGをデジタル化に駆り立てる要因を探ってみよう。

■Googleなどにインスパイアされ、IT部門をアジャイル化

オランダを発祥地とするINGグループは、世界40ヵ国・地域で4,700万人の法人・個人顧客を相手に、リテールおよび大口業務、モバイル決済からイノベーションまで、幅広い商品とサービスを提供している。

設立当時(1991年)はまだ珍しかった「デジタル技術をバンキングに取り入れる」という発想にいち早く着手し、自他共に認めるFinTechの先駆け的存在となった。1997年にカナダでリテール顧客向けオンラインバンク「ING Direct」を開始し、米国、英国、ドイツなどの欧米諸国で次々と拡大に成功した。

2014年からは、8億ユーロ(約915億円)を投じた大規模なデジタル改革プロジェクト、「Accelerating Think Forward」に着手している。

最も革命的な動きでは、GoogleやNetflixといった国際テクノロジー企業にインスパイアされたという、IT部門のアジャイル化があげられる。アジャイル・インフラの構築は、ITへの取り組みの一環として金融・保険機関でも常識となりつつある。

長年にわたり金融機関が頭を悩ませてきた、既存のシステムでは最早対応しきれない複雑な問題を解決するうえで、高度なデジタル・ソリューションは必要不可欠だ。例えばデータ管理をアジャイル化することで、銀行システムに蓄積された膨大なデータを効率的に処理することが可能になる。

■シュラットマンCIO「改革とは継続的なもの」

INGのデジタル改革は組織内部という枠組みを超え、顧客へのサービスにも及んでいる。ドイツではすでにバンキングを完全デジタル化させている他、決済スタートアップ、iDealと提携し、WhatsAppやFacebookといったSNSから決済可能なアプリ開発に挑戦している。

このアプリでは2016年8月から2ヵ月間、ミレニアム世代を対象にテスト運転を実施し、SNSやメールからワンクリックでiDealの支払い画面に誘導、即決済という、利便性とスピードを追求した。実用化まであと一歩といったところだろう。

INGのバート・シュラットマンCIOは、過去10年にわたりINGが改革に取り組んでいること、改革とは継続的なものであるべきことを強調している。

2015年、アジャイル化に着手した際、取り急ぎ、他に向上すべき事項は見当たらなかったという。しかしINGのデジタル化に対する顧客からの期待が高かったことが、継続的な改革の後押しになった。

■16週間の集中アクセレーター・プログラム「FinTech Village」

新たな商品・サービス開発手段として、今やすっかりお馴染みとなったアクセラレーターでは、「FinTech Village」を開催している。16週間の集中型プログラムを通して、スタートアップに人生の転機となる大きなチャンスを与えると共に、各企業の理想とするビジネスモデルを構築し、実現に向けたソリューションを提供する。

Deloitte、IBM、SWIFTなどとの提携のもと、一流の国際ネットワークを駆使し、常に先進的なアプローチを志すことで、既存のアクセレーターと一線を画している。

第2回目となる2017年の応募は、F6S(https://www.f6s.com/)というアクセレーター・プラットフォームから受け付けている。

■デジタル化に伴う大量リストラ時代に突入?

INGのデジタルを極める熱意は高く評価すべきだが、野望達成の裏側では、ベルギー、オランダを中心とした従業員7,000人の大量リストラという代償が、社会に波紋を投げかけている。

一連のデジタル化は顧客経験の向上と同時に大幅なコスト削減を狙った決断だ。この一大改革により、2021年までに9億ユーロ(約 1,000億円)の人件費・経費削減を図る意向を表明している。

FinTechの跳躍と共に、金融機関がリストラ時代に突入した感は否めない。INGだけではなく、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、ドイツ銀行などの大手が、続々と何千人規模の人員整理を繰り広げている。「デジタル改革=リストラ」という図式が、近年のインフラモデルとして確立されてしまった。

それに加え、AI(人工知能)やロボットの出現が、労働市場に多大な影響を与えようとしている。

デジタル化は最早、事業存続を賭けた欠かせない要素となっている。今後、人材とテクノロジーのバランス配分は、金融機関だけではなく多くの企業にとって、デジタル改革に伴う課題の一つとなるだろう。(提供:MUFG Innovation Hub)

最終更新:7/1(土) 12:10
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