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「ゆうパック」で骨を送る? 弔いの軽視か新時代の埋葬の形か

7/1(土) 18:40配信

ZUU online

亡くなった親族らの遺骨を日本郵便の「ゆうパック」で寺や霊園に送る送骨が広がってきた。インターネットで簡単な手続きをするだけで納骨できるのが特徴で、受け入れを始める宗教法人が次々に登場、ちょっとしたブームの様相だ。

家族関係の希薄化や貧困層の拡大、過疎地域での人口減少の加速などから、身寄りのない無縁仏だけでなく、墓じまいのために遺骨を送るケースも見られる。弔いの軽視と批判する声もあるが、葬儀を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。

■ゆうパックで届いた遺骨を合葬墓で永代供養

大阪府河内長野市滝畑の河内長野中央霊園は2014年から送られてきた遺骨を供養している。受け付け開始からこれまでに受け取った遺骨は約250人分。霊園内に設けられた合葬墓で永代供養している。

申し込みは、お布施として3万円を支払ったうえ、専用の梱包キットに遺骨の入った骨壺と、納骨許可証、火葬証明書など必要書類を同封するだけ。納骨が終われば埋葬証明書が送られてくる仕組みだ。

送り主は大阪府内など関西が多いが、手軽さが受けたのか、九州、中国、四国など西日本各地からも送骨されている。送り手は都市部だと新たに墓を持つことが経済的に困難な人や、放棄された骨壺の処分に困った自治体、賃貸住宅の管理会社などが目立つ。

地方で多いのは墓じまいで、人口減少と住民の高齢化で先祖代々の墓を維持できなくなったケースが増えている。地元の寺に相談するのが億劫だとして、このサービスを利用する人もいるという。

合葬を好まない人向けには、遺骨をカプセルに入れてクリスタルと御影石の墓石を備える新サービスを始めた。河内長野中央霊園の田村一央代表は「都市部では火葬後の遺骨を自宅に置きっぱなしにしている人が増えている。家族制度と地方が崩壊しようとしている今の社会状況が表れている」と語った。

■寺院の一覧表を載せたWebサイトも登場

首都圏で送骨サービスを2013年からスタートさせたのが、東京都世田谷区のNPO法人「終の棲家なき遺骨を救う会」。ゆうパックで受け取った遺骨は、東京都新宿区弁天町の南春寺が1週間分をまとめて供養したあと、永代供養墓の有縁塔に納める。

送骨を申し込むと3万円と引き換えに「送骨セット」が送られてくる。骨壺のふたを固定して桐の箱に入れ、必要書類を添えてゆうパックで送ると永代供養してくれる。これまでの利用件数は公表されていないが、全体の75%ほどが首都圏から。残りは日本全国から届いている。救う会が遺骨を取りに行く迎骨、持ち込んできた遺骨の受け入れもしている。

サービスを始めたのは、貧富の格差が拡大して新しく墓を建てる金がない人が増えたことがきっかけ。都内で墓を買うとすれば、標準的なタイプで100万円を超し、年間の維持費が1万円ほど必要になる。これに対し、送骨サービスなら3~5万円で済む。

終の棲家なき遺骨を救う会は「一家の墓を建て、代々継承していく制度が崩壊しようとする中、貧困層の拡大がそれに追い打ちをかけている。これを助けるのも宗教法人の役割でないか」と述べた。

こうした送骨サービスの先駆けとなったのは、富山県高岡市の大法寺だ。2006年に永代供養用の合葬墓を建て、子供が都会へ出て墓の継承者がいない檀家の遺骨を引き取った。この際、無縁仏も引き受けたところ、この手法が模倣され、全国に送骨サービスが広がった。

現在では、送骨サービスで検索すると、無数の業者がヒットするようになった。中には無料で受け入れる業者や遺骨を受け付ける寺院の一覧表を載せたWebサイトも登場している。

■宗教界や近隣住民から違和感を持つ声も

送骨自体を禁止する法律はなく、送られた遺骨も許可を受けた墓地などに埋葬されるため、墓地埋葬法上の問題はないとされる。しかし、遺骨を郵送することに違和感を持つ人は少なくない。

全国から集めた遺骨を供養する納骨堂の経営を愛媛県伊予市が許可しなかったのは不当として伊予市の寺院が処分取り消しを求めた裁判で、松山地裁は2013年「(送骨サービスが)国民の宗教感情に反するとしてもおかしくない」として訴えを退けた。

東京都調布市では住宅街での納骨堂建設が事業者と住民のトラブルに発展、市が2015年、墓地条例を改正し、設置許可に5年間の活動実績を必要とした。曹洞宗は内部文書で「供養する心を軽視している」と批判している。

ただ、送骨サービスの利用者がすべて信仰心を持たないわけではない。終の棲家なき遺骨を救う会によると、送骨後にお参りする人もいるという。

日本は人口減少時代に入り、高齢化社会の進行も急激だ。過疎地域では既に墓を維持できない人が増えているほか、団塊の世代の高齢化とともに単身で暮らす高齢者が爆発的に増加すると予測されている。

社会情勢の変化とともに、家族のあり方も大きく変わった。それと同時に、人間1人ひとりに対する思いが軽くなってきたように見える。やがて弔いのない時代が来るのだろうか。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:7/1(土) 18:40
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