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旧経営陣「事故予測できず」 傍聴被災者、厳しい視線

7/1(土) 9:40配信

福島民報

 勝俣恒久元会長(77)ら東京電力の旧経営陣3被告は30日の初公判で無罪を主張し、検察官役の指定弁護士と全面対決する構図となった。福島第一原発事故は予見でき、防げたのか-。初めて原発事故の刑事責任を問う注目の裁判が幕を開けた。未曽有の大事故から6年余り。遺族や被災者らは真相の究明を願っている。
 午前10時-。東京地裁で最も大きい104号法廷の98ある傍聴席は全て埋まって開廷した。
 傍聴席の視線が一斉に被告人席に座った勝俣元会長と武黒一郎元副社長(71)、武藤栄元副社長(67)に注がれた。黒系のスーツに身を包んだ3被告は検察官役の指定弁護士が起訴状を読み上げている間、視線を落として耳を傾けていた。
 「起訴状に対する意見の前に…」。起訴内容の認否に入る前に勝俣元会長は永渕健一裁判長に発言を求めた。「福島県民をはじめ、多くの方々に改めておわびをしたい」としわがれた声で述べて深々と頭を下げた。認否では「当時、大津波の予見はできなかった。刑事責任は適用されない」と明確に無罪を訴えた。武黒元副社長も「予見は不可能。私は無罪です」、武藤元副社長も「事故の発生予測はできず、刑事上の責任はない」と続けた。3被告ともはっきりとした口調だった。
 3被告の認否を注視し、厳しい視線を注いでいた傍聴席の被災者の中には何度も首を横に振って「おかしい」「そんなはずはない」とつぶやく姿もあった。
 対する指定弁護士は5人が法廷に入った。約1時間半にわたり冒頭陳述を繰り広げた。3被告が最大で15・7メートルの大津波が福島第一原発に襲来するとした試算を軽視し、過失責任があると指摘した。「原発事故がなければ尊い命が奪われることはなかった」と語気を強めて詰め寄る一幕も。勝俣元会長は表情を変えることはなかった。
 午後4時半に閉廷した。3被告は傍聴席に顔を向けることなく足早に法廷を後にした。
 傍聴した無職熊本美弥子さん(74)は田村市から東京都に避難している。「私たちのこれまでの苦労や思いは十分に伝わっていない」。3被告の明確な無罪主張に怒りをあらわにした。

福島民報社

最終更新:7/1(土) 9:46
福島民報